香港社会における女性ならではの葛藤を映像へと昇華させる香港人女性フィルムメイカーKitty YeungとCandice Ngへのインタビュー

香港人女性フィルムメイカー、Kitty YeungとCandice Ngは社会における個人的な葛藤を映像へと昇華させる。NOWNESSやSundanceにピックアップされた彼女たちの作品と彼女たち自身についてのインタビュー。

by Kazuki Chito
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31 March 2021, 8:30am

香港は変化の時期を迎えている。歴史史上最大規模の民主化運動が20代前半の若者たちによって牽引され、彼らは政府を動かそうとガスマスクを装着し、民主主義弾圧に屈せずデモを行ったのだ。そんな激変する香港社会の中で女性香港人フィルムメイカーのKitty YeungとCandice Ng は個人的体験に基づく怒り、葛藤、変革の声を映像へと昇華させ、発信している。彼女たちの作品の中でもクリアに社会への変革を訴える作品はNOWNESSやSundanceにピックアップされるなどして多くの人々の注目を集めた。

今回はそんな激動の社会の中、フィルムメイカーとして活躍する二人についてと彼女たちの作品について彼女たちにインタビューを行った。

今日はわざわざ時間をとってくれてありがとう。お二人の作品であるについて触れる前に日本のみんなに自己紹介をしてくれますか?

Candice Ng(以下: C):キャンディスです。フィルムメイカーをやっています。でも、オフィスワークもやっているので現代社会の奴隷でもあります。

Kitty Yeung(以下: K):日本の皆さん、ヤッホー!キティです。私はフィルムメイカーもやりつつ、映像メディアの会社で働いています。だから私も現代社会の奴隷だね。だって、資本主義の中にいる限り、みんな資本主義社会の奴隷でしょ?あと、私を一言で表すならトラブルメイカーかな。

トラブルメイカーってどういう意味?

K:何かに対して常に反抗していたい性格なの。例えば、現代社会は効率性を求めてくるでしょ?私はわざと効率を悪くしたりして生きているの。反抗することが生きがいなの。

パンクだね。二人はいつからフィルムメイキングをやってるの?

K:小さい頃にハローキティーのイラストがデザインされたビデオカメラを両親が買ってくれた日から。いつも持ち歩いて家の中とか散歩の道を録画したりしてた。

C:私的にフィルムメイキングのスタートはカメラを持って録画することだけじゃないと思うの。妄想したり、誰かに作り話をしたりすることもフィルムメイキングの一部というか。それって脚本作りの出発点じゃん?幼い頃にセレブリティー達のスキャンダルの裏話を作って親にずっと話したりしてたからそれがスタートかな。

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左: Kitty Yeung、右: Candice Ng

脚本作りのインスピレーションってどこからくるの?

K:インスタグラムでみるもの、友達との会話、全てだね。ニュースは特に強いインスピレーションかも。最近の香港のニュースからは色々と受け取るな。あとは論文とか?まあ全部。人生で見るもの全て。

C:私もキティと同じかな。付け加えるとしたら、私は人間観察からインスピレーションを得ることが多いかも。最近、携帯を見ないようにしてるから周りを見渡す機会が多くなったの。だから、電車の中でおばあちゃんが巨大な携帯でSNSしてるのを、可愛いらしいなって思いながら見たり、他人のメッセージを覗き見したりするんだよね。ちょっと悪趣味だけど。(笑)

K:私もそれやる!他人のインスタグラムのフィードを勝手に覗き見して、評価することにハマってる。(笑)「しょーもない女。」とか「ださ!」ってマスクの中でぶつぶつ呟くの。電車の窓って鏡みたいに反射するじゃん?窓に向かってまっすぐ見てるフリをしてその人の携帯の中を覗き見したりしてる。

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人間観察が二人とも好きなんだね。コロナが到来して何か変化はあった?

K:あんまりないかな。正直、この状況が私にとってのニューノーマルになってきてるんだよね。

C:あと、香港特有かもしれないんだけど、コロナの話題性が社会運動の話題性に負けちゃってるの。罪を犯していない人々が逮捕されたりしてるから、衛生問題って言うよりも政治問題の方にフォーカスがいってる感じだね。

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そうなんだ。香港の民主運動とか社会運動からは影響を受けていると思う?

C:うん。「怒り」が自分の中で、日に日に大きくなっているのを感じるな。でも、どうやってその怒りを解放したり解消したりすればいいか分からないの。香港では不正義があまりにも横行してるから、怒りのアウトプットをどこから始めたらいいのか分からない。

K:正直、「恐れ」もあるよね。でも怒りとか恐れって映像制作の燃料になると思うの。感情が大きくなればなるほど燃料の量も多くなるというか。

フィルムは政府に対する武器になると思う?

K:多分…?

C:そこまで過激な話でもないと思う。少しの優しさとかリスペクトをフィルムで純粋に伝えることで作品が自由の象徴になる気がするな。最近、キティと香港出身の映画監督、アン・ホイのドキュメンタリーを見て、めちゃめちゃインスパイアされて。この絶望的な時期こそ、自分たちが得意なことをするしかないってことを再認識させてくれたの。

なるほどね。じゃあ次はEphiwaipiについて聞きたいんだけどこれってなんて読むの?

C:エフ・ワイ・ピー、FYPの読み方を文字にしたって感じ。FYPっていうのはFinal Year Peoject(卒業制作課題)っていう意味。

K:最後の最後まで名前が思いつかなかったの。でも卒業課題だったから、それを提出しないと卒業できなくて。もうなんでもいいやって思ってつけたの。完全な内輪ネタだね。

卒業制作レベルの作品には見えないけど!

K:ありがとう!どういうところが好きだった?

とてもパーソナルに感じました。コンセプトについて詳しく教えてください。

K:私たちの「怒り」と「苛立ち」をベースにした『世界を変えるための宣言』というのがコンセプト。3つの宣言を発表するっていう構成になってるんだけど、全部個人的な経験から来たものなの。

C:一つ目の宣言は宗教に関する宣言。動画の初めの方にカトリック教会でのシーンがあるでしょ?私たち自身がカトリック高校上がりで、いつも「禁欲的で従順な女性でなければならない」って強くそこで教えられていたの。それに対する苛立ちからその1つ目の宣言ができた感じかな。2つ目はジェンダーのステレオタイプについての宣言。男性が重いもの運ばないといけないとか、そういう感じのことにも苛立ちを感じてた。三つ目がキティの壮絶な経験から来てるんだけど、、、。

K:学生だった頃に、映像系のインターンをやってたんだけど、めっちゃ搾取されたの。(笑) 低賃金で雇われていたんだけど、相手は「経験を与えてあげてるのよ?我慢しなさい」って感じだった。まじでやりがい搾取だったな。電話のシーンがその部分なんだけど、そこの会話は実際にあったの会話なの。

映像を見終えて、よくある政治やジェンダーに関する映像とは違いオリジナルだなと感じました。

C:まあジェンダー、政治、社会規範に関するショートフィルムって結構多いけど、このフィルムのオリジナリティーは全部個人的な経験をもとにした映像ってとこ。

最後のシーンが印象的だったあけどあれはどういう意味ですか?

K:実は二人で違う解釈を持っているの。私は「卒業するから、こんな怒り狂った女子大生じゃなくて、社会に従順な女性にならなければならない」っていう意味で女子大生の自分を殺したの。

C:私はもっと楽観的なんだよね。宣言をしたことで怯えていた自分を葬ったっていう解釈なの。

二人で作って違う解釈を持ってるのは面白いですね。次のプロジェクトとかって用意してますか?

K:今起きてる社会運動についての映像は作りたいなって思ってる。自分目線から作りたい。最近、毎日#blacklivesmatterとか#stopasianhateみたいな#上だけで起きる革命が多すぎるから本当の革命、何かを確かに変える革命について映像で表現したいな。

C:私は最近テレビをよく見る機会が多くなったから実はテレビ番組をやりたいんだよね。(笑) コメディとか。

5年後何してると思う?

C:多分みんな死んでると思う。

K:わかる。未来ないよね。だって社会も崩壊してるし、環境も終わってるし。でも、変わらないだろうなって思うのは、今私が嫌いなタイプの人間にはなっていたくはないってことかな。

C:本当にわからない。たくさんのことが香港で起きてるし、意味わからない法律とかも勝手に立てられてるし。影が覆ってる感じ。でも、何が嫌いで何になりたくないかは今と同じだと思う。同じでありたいな。

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