若手デザイナーの育成、支援を目的としたLVMHプライズのファイナリストに選ばれた、岡﨑龍之祐にインタビュー

優勝者には30万ユーロ(約4000万円)の助成金、ファッション最大のプライズ、LVMHプライズの最終選考まで選ばれたデザイナー、岡﨑龍之祐。パリに発つ直前の気持ちをインタビューで聞いてみた

by Kazumi Asamura Hayashi; photos by Adi Putra
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10 June 2022, 2:00am

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MOTORA SERENA WEARS DRESS RYUNOSUKE OKAZAKI.

ファッション界最大のプライズが今年も開催され、ファイナルまで勝ち進んだ、RYUNOSUKEOKAZAKIのデザイナー岡﨑龍之祐が彼のクリエイティブについて語ってくれた。

優勝者には30万ユーロ(約4000万円)の助成金と、LVMH傘下のグループからのメンターシップサポートを受けることができる。具体的には、流通や生産などを含めたファッションビジネスに必要な知識提供を1年間、専門家から受けられるという。若手のファッションデザイナーにとって助成金の金額もさることながら、ビジネスの礎となる知識の提供は、ファッションビジネスの成長に向けて大いに役立つことだろう。

6月2日のファイナルに向け多忙の中、岡﨑龍之祐は撮影現場にも足を向けてくれた。

立体的で複雑なデザインの服は、着用するのに彼自身の手ほどきが必要とされるのだ。撮影を楽しむ彼の姿は、こちらの気分も上げてくれる。ファッションを愛し、それを通じたコミュニケーションに喜びを感じている彼は、コロナ禍により、少し閉鎖的になっていた撮影現場を和やかにしてくれた。今回は、パリに旅立つ直前の岡﨑龍之祐に、クリエイティブの原点や未来のことを聞いてみた。

──子供のころの夢はなんでしたか?

広島県の宮島口で育ちました。父も母も音楽関係の仕事についていたので、いつも音楽が家に溢れていました。その環境はクリエイティブの根幹にもなったのではと、僕は感じています。子供の頃の夢は、大工さんです。3歳くらいの時に引っ越して、家を建てていた大工さんを見て憧れを抱きました。ものづくりの面白さを感じたんです。

高校の時には美術に触れて行きたいと思い始めました。芸大ではデザインに幅広く触れたかったので、デザイン科を選びました。大学院の研究室ではビジュアルコミュニケーション、グラフィックデザインを学びました。

──東京芸術大学を卒業してから、美術の道に進まずファッションを選んだ経緯を教えてください。

僕の中では、デザイナーといえばファッションデザイナーのことを指していました。普段着られないような彫刻的な服でも、デザインと呼ばれていることに面白味を感じました。

日常的なデザインより、ファンタジーの要素が詰まった、概念を形にした造形に惹かれ、広く表現を学ぶために藝大を選びました。なので、入学当初から僕はファッションデザイナーを目指していました。

ファッションデザインという領域は、僕の中でとても不思議で魅力を感じていたのです。

概念を形にしていくことは自分の中でも、デザインのアプローチとして使っています。

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MOTORA SERENA WEARS DRESS RYUNOSUKE OKAZAKI.

──ご自身の洋服は、どのような人に着てもらいたいをイメージして作っていますか?

僕の作品は、抽象的で、概念的な服なので、人が着ているとファッションだけども、展示してあるとアートだなと思います。

過去二回のファッションショーを通じて、洋服を着て楽しんでいる人を見て、より多くの人に楽しんで着てもらいたいと思いました。

──岡﨑さんの作品は立体的、流動的ですよね。インスピレーションの源を教えてください。

僕のインスピレーションは、「祈り」です。元を辿れば自分のルーツである広島に対する平和への祈りです。祈りは日本古来から続く、自然と人との密接な関係の中から生まれたものです。神道や縄文土器の造形だったり、パワーを持った造形や装飾は、祈りに密接に繋がっています。人間の根本にある祈りが、僕のインスピレーションです。古来では土や染色で祈りを造形していたんだけど、僕は現代の素材を使って祈りを表現しています。人が目に見えないものに対して感じる力強い願いが造形として立ち上がってくるのが僕は面白いと感じています。

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MOTORA SERENA WEARS DRESS RYUNOSUKE OKAZAKI. SHOES STYLIST'S OWN.

──今まで経験した中で、自分のキャリアの方向性を決定づけた出来事などありますか?

僕が洋服を好きになったのは中高時代でした。男子校時代に周りの人もファッションに興味を持っている友達がたくさんいました。その頃の興味が自分の今のキャリアに繋がっていると思います。

そして、コロナ禍になり、自然の脅威を身近に感じるようになりました。一層、生きることに対して願い、祈る思いが深まり、今のデザインが生まれました。

──LVMHプライズのファイナルに選ばれました。パリに行く直前ですがどのようなお気持ちですか?

すごく楽しみにしています。そしてドキドキしています。ファイナリストに選ばれたデザイナー達は、僕とは違った方向性でファッションに向き合っている人がいるので勉強になるし、刺激になります。そしてルイ・ヴィトン財団美術館にも行ったことがないので楽しみです。

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MOTORA SERENA DRESS RYUNOSUKE OKAZAKI.

──もしも、受賞することができたらやってみたいことなどはありますか?

僕は、生地会社「小野メリヤス」の研究開発段階の生地を頂いて洋服を作っています。研究開発の生地はロット数の問題で、生産に回せなくそのまま廃棄されてしまうことが多いのですが、僕はその生地を使用させてもらっています。

小野メリヤスの社長さんに作品を見せたところ、廃棄される生地でできた作品を見てとても喜んでくださり、「生地会社の救済にも繋がっている」とおっしゃってくれました。それを通じて、僕は自分の作っている作品の存在意義を感じました。

もしも受賞することができたら、世界中の生地会社や産地を実際に訪ね、その素材を使って新たな作品が作れたら面白いだろうと感じました。

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YAMATO AND TAKERU WEARS DRESS RYUNOSUKE OKAZAKI.
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MOTORA SERENA WEARS DRESS RYUNOSUKE OKAZAKI.

──岡﨑さんのように、ファッションデザイナーを目指している人々に一言アドバイスをください。

僕は、作ることがとにかく大切だと思っていて、手を動かすこと。手を動かすとは同時に、内省することだと思うんですね。自分と向き合う時間。同時に外に出ていろんな人に出会うことも大切で、この二つは平行してできることだと思います。世界と自分を見つめ合わせることは大切なことだと思います。ファッションデザイナーを志す人には、作り続けるということを止めないで欲しいです。

──岡﨑さんが、一番好きなアーティストを教えてください。

シュレリアリスムの開祖であるアンドレ・ブルトンの提唱した考え方にすごく惹かれます。彼の頭に降りて、考えついた言葉をすぐに文章化するというオートマティスムという考え方があります。簡単に説明すると、降りてきた言葉、文章、思いをそのまま筆記することにより、自分の想像を超えた表現になります。

先ほど話が出た、作り続けることが大事というのはここに通じています。僕はデザイン画を描かないし、完成を想像しないでものを作ります。作る行為自体がオートマティスムだなと感じています。自分の中では、その創作活動、創作行為そのものが祈りなのです。

CREDITS



Creative Director:  Kazumi Asamura Hayashi
Photographer: Adi Putra
Styling: Shohei Kashima
Styling assistance: Taku Kato. Tsuyune Mine. Rei Ohtani.
Hair: Waka Adachi
MUA: Tamayo Yamamoto
MUA assistance: Sakura Nishiura
Models: Motora Serena. Yamato. Takeru.
Editor: Noriko Wada

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