ホリデーシーズンに観たい、ニューヨークが舞台の映画7選

憧れの街ニューヨークの日常を綴った7本の名作映画を紹介する。

by Douglas Greenwood; translated by Nozomi Otaki
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22 December 2021, 2:45am

映画の中でニューヨークという街がひとつの特性となるのは、今となっては珍しいことではない。あるひとにとっては、聖なる目的地であり、夢が生まれる場所。いっぽうで、人工の高層ビルが天高くそびえる土地に不安を覚えるひともいる。しかし、多くのひとにとっては、この街は単なる故郷であり、日常の背景に過ぎない。

これから紹介する映画もそうだ。直接ニューヨークの物語を提示するのではなく、そこで暮らす人びとに焦点を当て、周囲の環境はそれぞれの登場人物、会話、日々の出来事の背景へと溶け込んでいる。現代の傑作からクィアのドキュメンタリー、優れたインディペンデント作品まで、世界一の都市をぜいたくな背景として活用している7本の映画を紹介する。

1. ノア・バームバック監督『フランシス・ハ』(2011年)

ノア・バームバック監督が牽引したマンブルコア映画(※訳注:2000年代に生まれた、日常を描く低予算の自主制作映画)のムーブメントは、NYで人生に迷う30代前半の女性を描いた『フランシス・ハ』の公開をきっかけに、広く知られるようになる。監督のパートナーで何度もアカデミー賞にノミネートされている映画監督グレタ・ガーウィグが演じる主人公は、あらゆる面で崖っぷちの状態だ。NYで部屋を借りられないまま暮らし、ダンス・カンパニーに所属しながらもダンスの仕事はほとんどない。しかし、彼女は楽観主義的な自由奔放さでそれを切り抜け、「クソ食らえ」と一蹴し、どれほど無謀に思えても夢を追い続けながら、資本主義の業火を乗り越えていく。

2. ジェニー・リビングストン監督『パリ、夜は眠らない。』(1991年)

1980年代のクィアなNYは、この『パリ、夜は眠らない。』のスターたちのおかげで、永遠に私たちの記憶に刻まれた。数年かけて完成した本作は、ダウンタウンのドラァグ/ボールシーン最盛期を捉え、先駆者たちが築き上げた空間の自由な雰囲気だけでなく、ホモフォビアとトランスフォビアが蔓延し、人種差別的な警察が跋扈する時代にクィアだと明かすことの危険や意味も描写している。近年になって、ジェニー・リビングストンが本作で有名になったいっぽうで、出演者の多くが忘れ去られたとして非難の的となった本作。出演した人びとの大半はもうこの世にはいないが、『パリ、夜は眠らない。』は失われたNYの文化の証しであり続けている。

3. マイク・ミルズ監督『C’mon C’mon(原題)』(2021年)

A24が贈るマイク・ミルズ監督の最新作は、米国の西海岸と東海岸を舞台にした詩情あふれるモノクロ映画。本作の物語は東西の両海岸で展開するものの、その核となるのはNYの街だ。主人公ジョニー(ホアキン・フェニックス)は、国内各地の子どもたちに将来についてインタビューするプロジェクトを行なっているNYのラジオジャーナリスト。姉妹からの連絡をきっかけにカリフォルニアへ向かったジョニーは、初対面の甥ジェシーの面倒を見てほしいと頼まれる。ふたりは一緒にNYに戻り、秋めいたセントラルパークの小道を散歩しながら、少しずつ人生の意義を見出していく。

4. スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)

舞台はブルックリン、ベッドスタイ。その年いちばんの猛暑日のこと。うだるような暑さにあてられ、黒人の住民がピザ店のイタリア系経営者と口論になる。ヒッチコック監督作品や当時の米国での黒人に対する警察の暴力を着想源に、スパイク・リー監督が脚本/監督/主演を務めた本作は、マディソン・アベニューのブティックやアッパー・ウエスト・サイドを中心に、NYという街を描き出す。これこそが現実の人びとが暮らす街であり、文化と社会の中心地だ。本作はリー監督の長編デビュー作『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』とともに、ブルックリンに縁の深い監督としての彼の地位を揺るぎないものにした。

5. トッド・へインズ監督『キャロル』(2015年)

トッド・へインズ監督『キャロル』は、いつでもNYの過ぎ去った時代を思い出させてくれる。異性との恋愛にうんざりしていた、デパートの店員で時に写真家として働くテレーズ・ベリベットは、裕福な主婦キャロル・エアードに惹かれていく。ふたりは危険な情事に耽り、国を横断する旅に出る。しかし、本作で最も魅入られるシーンは、煙の充満する薄暗いダイナーや、ティンセルで飾られた百貨店、富裕層や有名人が暮らすアップステートの緑豊かな街並みだろう。

6. ディー・リース監督『アリーケの詩』(2011年)

スパイク・リーが製作総指揮を務めた、このディー・リース監督のデビュー作は、リー監督おなじみのブルックリンを舞台に繰り広げられる。ディーのレンズを通して観るNYの生活は、ずっと甘美だ。17歳の高校生アリーケの視点から語られる本作は、彼女のセクシュアリティの目覚めやジェンダー表現との対峙を描く。アリーケはある少女に恋をし、自らの同性愛の定義に悩み、彼女が歩む道を受け入れようとしない母親と対立する。これこそが、本作の要だ。大都市は、往々にしてなりたい自分になれる理想の場所として描かれがちだが、ディーの映画はその中での葛藤を捉え、都会で暮らす人びとの価値観も決して一枚岩ではないことを、ありありと描いている。

7. クリス・コロンバス監督『グッドナイト・ムーン』(1998年)

時折1990年代のちょっとチープなメロドラマが観たくなるひとにぴったりなのが、ややセンチメンタルだが感動的なこの『グッドナイト・ムーン』だ。ジュリア・ロバーツ演じる売れっ子ファッションフォトグラファー、イザベルは、先妻との子どもたちの共同養育に奮闘する弁護士と恋に落ちる。がんと闘う先妻のジャッキー(スーザン・サランドン)は、新たな継母と出会った子どもたちを、なかなか手放そうとしない。本作は、秋から冬へと移り変わる、最も派手で(巨大なフォトスタジオやオフィス)魅力的な(セントラルパークの真紅や黄色の葉、美しいブラウンストーン、アップステートの中産階級の邸宅)NYを映し出している。

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