Photography Lee Guno

BTSやBLACKPINKを手がけるK-POPスタイリストにインタビュー

大人気アイドルのスタイリストを務めるまでの経緯を聞いた。

by Yang Boyeon
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04 April 2022, 8:00am

Photography Lee Guno

K-POPは、スターだけで成り立つで世界ではない。スターの周りには歌、ダンス、ルックを完璧に整えるためのさまざまなエコシステムが存在する。そのチームに不可欠な存在が、広い人脈と先見の明を持つスタイリストだ。ファッションとK-POPは共生関係を築き、特にここ数年、世界中のラグジュアリーブランドがK-POPスターを起用したり、ショーの最前列に座ってもらおうと躍起になっている。

今年2月だけでも、BLACKPINKのジェニー(JENNIE)がCalvin Kleinの2022年春夏キャンペーンに登場し、少女時代のユナはアンバサダーを務めるMiu Miuのセットアップを着用して雑誌の表紙を飾った。BTSはLouis Vuitton、EXOのメンバーはGucci、aespaはGivenchy、BLACKPINKのジス(JISOO)はDior、ロゼ(ROSÉ)はSaint Laurent、リサ(LISA)はCeline、ジェニーはChanelと、ブランドの顔を務めるK-POPスターは挙げればきりがない。

常に世間の目にさらされるスターは、見た目にも細心の注意が必要だ。だからこそ、K-POPスターたちはキム・ヨンジン、キム・ウク、パク・ミンヒ、イ・ギョンウン、チョン・ファンウクなどの一流スタイリストを雇う。CL、BTS、SHINee、aespa、BLACKPINK、Beenzinoなどを顧客とするスタイリストたちだ。

業界関係者ならよく知っているだろうが、スタイリストの仕事は最高の服を選ぶこと以上に、セレブが最高の自分を見せるための手伝いをするため、卓越したコミュニケーションに基づく密接なコラボレーションが必要不可欠だ。今回i-Dは、前述のスタイリスト5名のスタジオを訪れ、ファッションスタイリストとアイドルのスタイリストの違いや、仕事の核となるパートナーシップについて話を聞いた。

stylist youngjin kim sits behind his desk with a skateboard behind him

キム・ヨンジン

ソウルを拠点とするスタイリストのキム・ヨンジンは、幼い頃からファッションに夢中で、お小遣いをすべて雑誌につぎ込んでいた。「(ファッションは)僕にとってとても特別なものでした」と彼は当時を振り返る。大学で写真を専攻するも、同じくらいルックの制作に熱中するようになり、スタイリングの仕事を勧められたことをきっかけにこの道を志す。最近はBTSのスタイリストを務めているが、NCT 127、Super M、カン・ダニエルなどの雑誌の表紙、キャンペーン、アルバムアートワークの衣装も手がけている。

──スタイリングに興味を持ったきっかけは?

5年くらい(韓国人俳優の)チョン・ジンオのアシスタントを務めるなかで、韓国のファッションシーンの全体的なシステムを理解しました。振り返ってみると、とても貴重な時間でした。あの期間があったからこそ、今の自分がある気がします。

──あなたの仕事について詳しく教えてください。

BTSとColdplayの「My Universe」などのアルバムや作品のスタイリングは、世界規模で大きな注目を集めました。アイドルグループのスタイリングをするときは必ず、コレクションを制作するデザイナーのことを考えます。Comme des GarçonsやYohji Yamamotoなどの日本ブランドをミックス・アンド・マッチし、それぞれのコンセプトに合わせ、スタイリングを通して自分の美学を表現します。僕は自分をファッションスタイリストだと考えていますが、初めてアイドルのスタイリストになったときは、ファッションスタイリストがアイドルを手がけたらどんなヴィジュアルを創れるのか、自分が示せることが誇らしかったです。

two mannequins stand in a room

──当然ながら、スタイリストの仕事はスタイリングだけではありません。アイドルが着用したルックが突然トレンドになる可能性もあるので、セレブとブランドの橋渡し役を務めることも多いですよね。

その通りです。勢いのあるセレブやモデルをブランドや雑誌に勧めることが多いです。そのひとがファッションブランドのアンバサダーなら、ブランドとさらに密にコミュニケーションをとります。

──スタイリングにおいて最も重要なこととは?

最新のトレンドとクラシックなアイテムを組み合わせるようにしています。例えば、個人的に好きなのは、Saint LaurentのブレザーとLevi'sのデニム、カジュアルなスニーカーの組み合わせ。メンズウェアはディテールが命で、ちょうどいい長さの丈や袖といったディテールがスタイル全身に影響を与えます。

──好きなブランドやデザイナーを教えてください。

ずっとリカルド・ティッシのGivenchyが大好きで、スタイリストとしても大きな影響を受けました。自分のやりたいことを長年実現し続けているひとを、心から尊敬しています。その点では、ミウッチャ・プラダやラフ・シモンズも素晴らしいデザイナーだと思います。

stylist wook kim sits behind a glass desk with a leopard statue by his side

キム・ウク

自分の仕事が賞を取れば、それは将来が安泰だということを証明している。2022年2月、キム・ウクは第11回ガオンチャートミュージックアワードでスタイリスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。対象となったスタイリングはSHINeeの「Don’t Call Me」、テミン(TAEMIN)の「Advice」、キー(KEY)の「Bad Love」などのMVの、ストリートウェアからグランジ、PVCスーツ、チェーンのバラクラバまで、多様な要素を取り入れたヴィジュアルだ。ウクにとっては、コラボレーションがすべてだ。「アーティストが自分の持つエネルギー、達成したい目標、より良いアーティストへと成長する方法を模索する手助けがしたい」と彼はいう。「僕にとって、スタイリングとは一緒に未来を描くことです」

──スタイリングの世界に入ったきっかけは?

学生時代からスニーカーに夢中で、自然とスケートボードに興味を持つようになり、Casinaというストリートウェアショップに就職しました。兵役の後、まず『SHOW ME THE MONEY』シーズン2に出演したSwingsのスタイリングをして、その後アイドルグループEXOのデビューの衣装を担当しました。ですから、アシスタントを経験せずにスタイリストになりました。

──クライアントを教えてください。

aespa、カイ(KAI)、SHINee、WOODZ、EXO、SuperMのスタイリングを担当していますが、今は休止中です。韓国の三大芸能事務所であるSMエンターテインメント、JYPエンターテインメント、YGエンターテインメントと仕事をしてきましたが、SMがメインです。ミュージシャンのカムバックに関わる仕事のプロセスでは、チームメンバーそれぞれの意見が柔軟に取り入れられます。上下関係はありません。

tidy shelves full of candles, jewellery and a pair of clean sneakers

──スタイリングにおいて最も重要なこととは?

自分の好みだけでなく、もっと広い視野で物事を捉えるようにしています。全員の意見を尊重しますし、与えられた状況でスタイリストとして最高の結果を出すことを目指します。アーティストの未来は最高のスタイリングと同じくらい重要ですから。アーティストが自分の持つエネルギー、達成したい目標、より良いアーティストへと成長する方法を模索する手助けがしたいと思っています。

──好きなブランドやデザイナーを教えてください。

BONBOMが好きで、Cost Per Kiloも毎シーズン楽しみにしています。海外のブランドなら、Luis De JavierとLa Lune。とても挑戦的なシルエットが魅力です。NIGO®のKenzoもとても楽しみにしています。

──キャリアの次の目標は?

これからもスタイリングに熱心に取り組み、ベストを尽くすと同時に、ブランドのローンチなど他の分野にも挑戦してみたいです。

stylist minhee park sits on her phone at her desk

パク・ミンヒ

キム・ウクと結婚したパク・ミンヒは、BLACKPINKの唯一無二のスタイルを手がけるレジェンドだ。このガールズグループとのコラボレーションは今年で5年目になり、信頼と相互理解に基づく長期的な関係を築いてきた。「アーティストとのコミュニケーションが一番大切です」と彼女は説明する。「どんなにクールなスタイリングでも、似合わなければ意味がありません。ですから、いつもアーティストととことん話し合うようにしています」。家族と一緒に仕事をするべきではない、というアドバイスに真っ向から反対し、ミンヒは夫とともにBLACKPINK「Kill This Love」MVのララ・クロフトからインスパイされたルックを制作した。15億回を超えるYouTubeの視聴回数と複数の受賞が、その結果を証明している。

──これまでのスタイリング経験について教えてください。

中学生の頃からスタイリストを目指していたので、大学でファッションデザインを専攻しました。スタイリストのチェ・ギョンウォンの作品が大好きだったんですが、無謀にも彼女にメールを送り、どうすればアシスタントになれるか訊いたことがあります。面白いことに、私の最初の現場はBLACKPINKで、彼女たちとは一緒に仕事をして5年になります。4人のメンバーはそれぞれ別のファッションブランドのアンバサダーなので、彼女たちと一緒に世界中を旅して、さまざまな経験を積みました。

the corner of a room is filled with colourful pairs of womens shoes

──そういう意味では、BLACKPINKはかなり特別ですよね?

そうですね。ジェニーはChanel、ジスはDior、リサはCeline、ロゼはSaint Laurentのアンバサダーです。彼女たちがBLACKPINKとして集まると、また違った魅力があります。彼女たちは多彩なカラーを表現できる唯一無二のグループだと思います。今までもこれからも、多様なコンセプトを成功させてくれるでしょう。

──スタイリングにおいて最も重要なこととは?

アーティストとのコミュニケーションが一番大切です。どんなにクールなスタイリングでも、似合わなければ意味がありません。ですから、いつもアーティストととことん話し合うようにしています。アーティストの魅力やそのひとが追求しているスタイルを見出し、それをスタイリングを通して表現する手助けをします。今ではスタイリングを区別し、どのスタイリストがどのアーティストに合うか見分けられるようになりました。

──好きなブランドやデザイナーを教えてください。

たくさんのレファレンスを集めるので、最近は特定のブランドやデザイナーというより、目に留まったルックを選ぶようにしています。例えばBlumarineやFanci Club。ここ2年くらい注目しているPoster Girlもキュートですね。Kim Shuiもかなりクールだと思います。

──次の予定は?

もちろんBLACKPINKです! メンバーはみんな最高のファッションセンスの持ち主なので、スタイリストとしても、彼女たちの意見から学ぶことが多いです。これからもその相乗効果を高めていきたいですね。BLACKPINK以外にも、最初の夢だった俳優のスタイリングもしてみたいです。

a smiling woman wears read lipstick and double denim

イ・ギョンウン

かつて『ELLE』のファッションエディターだったイ・ギョンウンは、今、韓国の選りすぐりの新人俳優のスタイリストを務めている。その傍ら、雑誌『W Korea』、BTSを起用したLouis Vuitton 2021年秋冬キャンペーンなど、ブランドや雑誌のエディトリアルのアートディレクションやキャンペーンなどを手がけている。

──これまでのキャリアについて教えてください。

以前はKUHOとLucky Chouetteのヴィジュアルディレクターとスタイリストを務めていました。昨年、BTSと数名のモデルを起用したLouis Vuitton 2021年秋冬キャンペーンのプロデューサーを務め、今は(韓国俳優の)イ・ソム、イ・ホジョン、イ・ソルのスタイリングを担当しています。それからPiaget、Ferragamo、Cartierなどのエディトリアルのプランニングもしています。よく仕事をする雑誌は『W Korea』『ELLE』『Harper’s Bazaar』です。

──昨年、韓国ファッション写真作家協会(Korea Fashion Photographers Association)が主催するイベントで〈ファッションスタイリスト・オブ・ザ・イヤー〉に選ばれました。

本当に光栄でした。10年以上ともに働いてきたエディターやスタイリストの欠かせない同僚であるフォトグラファーからいただいた賞なので、私にとってはなおさら意味のある賞です。昨年はいろんなことに挑戦しましたし、担当した3人の俳優全員がドラマ撮影で忙しかったので、誇らしい気持ちでいっぱいでした。

a still life of an old motorola flip phone with charms on it, with a pair of wired headphones

──好きなブランドやデザイナーを教えてください。

ミウッチャ・プラダです。彼女にしか創れない世界を創り出すのが本当にカッコいいと思います。最近はRotate Birger Christensenにも注目しています。この前の釜山国際映画祭で、イ・ソルにここのドレスを着てもらいました。

──キャリアの次の目標は?

フォトグラファーのロー・エスリッジと一緒に撮影がしたいです。オルセン姉妹とクロエ・セヴィニーにも実際に会ってインタビューしてみたいです。個人的に、いつもファッションが完璧だと思うので。

stylist fwanwook jung stands in front of some busy rails of clothing

チョン・ファンウク

チョン・ファンウクも、同じくエディター出身のスタイリストだ。『MAPS 』(その後『High Cut 』と『W Korea』)のファッションエディターとして経験を積んだ後、ピンクヘアのチョン・ファンウクは今、主にラップ志向のアーティストのスタイリスト、ヴィジュアルディレクター、クリエイティブコンサルタントとして活躍している。さらに自身のスポーツカジュアルブランド、CAも立ち上げた。「キャラクターに合うスタイリングがとても重要です」とファンウクは語る。「コンセプトを十分に理解し、そのコンセプトに基づいて自分のテイストを表現するようにしています」

──これまでスタイリングしてきたアーティストについて教えてください。

かなり前からBeenzinoのスタイリングをしています。それからCHANGMOや(EXOの)カイ、CLの広告やエディトリアルも担当しています。Beenzinoとは長年一緒にいるので、彼の好みはよく理解しています。彼は挑戦的なものよりもクリーンでエレガントなスタイルが好きです。

──韓国のストリートウェアカルチャーの黎明期からこのシーンで活躍されてきましたが、このカルチャーはどのように進化してきましたか?

(韓国の)ストリートファッションは今ではずっと広い意味を持つようになりましたが、最初はただの数人のスケボー仲間の集まりでした。僕たちが好きだった音楽や、SupremeやStussyなどのブランドが流行り始めたときは、とても驚きました。

a tidy desk with a camera, supreme knick-knacks, a wooden fan and a marlboro box on it

──好きなブランドやデザイナーを教えてください。

Undercoverはずっと大好きです。少しロックの要素があり、ストリートやミリタリーな雰囲気を表現するのがうまいので。Post Archive FactionXLIMのような新しいブランドもカッコいいと思います。

──クリエイティブに関する次の目標は?

俳優のスタイリングがしたいです。今のクライアントはミュージシャンだけで、もちろん音楽に合うクールなスタイリングをするのも好きですが、俳優のもっとクリーンでハイエンドなスタイルにも挑戦してみたいです。

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