自宅で過ごすジョン・レノンとオノ・ヨーコを捉えた貴重な写真

ショートカットに変身したふたりを撮影したリチャード・ディレロが、当時のジョンとヨーコについて振り返るとともに、不朽の名盤『ジョンの魂』の魅力を語る。

by Frankie Dunn; translated by Nozomi Otaki
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22 April 2021, 12:16am

1970年1月、ジョン・レノンとオノ・ヨーコは、ショートヘアに変身してデンマークの旅行から戻ってきた。このヘアスタイルは、ふたりの人生の新たな門出を象徴していた。当時密かにザ・ビートルズを脱退していたジョンは、ファーストソロアルバム『ジョンの魂(原題:Plastic Ono Band)』の準備を進めていた。

「すぐにメディアから、レノン夫妻の美大生風スタイルの写真を求める依頼が来ました」と同バンドが設立したアップル・レコードに勤めていたリチャード・ディレロは語る。「デレク・テイラーと広報室にいたんですが、撮影の依頼が次々に舞い込んでくるなかで、彼に訊いたんです。『ジョンとヨーコは僕に写真を撮らせてくれるでしょうか?』って」

2年前にVOXのアンプを友人の50ミリレンズ付きのニコンFと交換していたリチャードは、写真を見る目には恵まれていたものの、技術的な知識はあまりなかった。それでも、ジョンとヨーコは撮影に同意した。その2日後、リチャードはティトゥンハースト・パークにあるジョージ王朝時代初期のカントリーハウスに招かれた。ジョンとヨーコは、1971年にニューヨークに引っ越すまでの2年間をこの邸宅で過ごした。

広大な邸宅で過ごすポップカルチャーのアイコンの飾らない姿を間近で捉えるため、アップル・レコードのお抱え運転手がリチャードを乗せて、アスコット競馬場にほど近い72エーカー(約8万8000坪)の私有地へと向かったのは、寒くどんよりとした日(正確には1970年1月31日)のことだった。

「レノン夫妻の撮影ですばらしかったのは、ふたりが心からくつろでいたことです」とリチャードは当時を振り返る。「僕が全くの赤の他人でなかったのも良かった。ディレクションする必要はほとんどありませんでした。ふたりの人生のディレクターは、ふたり自身なので。その日は何もかもが白黒の世界だったので、ほぼイルフォードのモノクロフィルムだけで撮影しました」

Yoko Ono and John Lennon standing by their pond

これらの写真は、池の横でおそろいのロールネックセーター姿で寄り添う姿から、犬を連れて木立の中を散歩したり、かの有名な『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のキャラバン(「あの場所で唯一白黒でなかったもの」)の階段に座る姿まで、広大な敷地のさまざまな場所で過ごすふたりを捉えている。

さらに、友人と遊びにきていた息子のジュリアンとミニバイクを乗り回したり、スコットランドでの家族の休暇中に事故を起こしたオースチン・マキシの上でポーズを取るジョンを撮影したものもある。

「デレク・テイラーは親しみを込めて、『ジョンはそもそも決して運転は得意じゃなかった』と言っていました」とリチャードは語る。「壊れた車を廃棄場に送るのではなく、ジョンとヨーコはコンセプチュアルアート作品へと変身させたんです」。もちろん、このふたりならそうしただろう。

「屋外での撮影のあと屋敷に入ると、ヨーコがランチにサラダを作ってくれて、キッチンや階段、寝室でテレビを見ながら撮影を続けました」とリチャードは回想する。「プレッシャーは全くなく、とても居心地が良く、気負わずに過ごせました。フラッシュは持っていなくて、そもそも使い方も知らなかったので、すべて自然光で撮影しました」

さらに自分が「オフィスから来たただの若造」だったにもかかわらず、ふたりはとても親切で、リラックスさせてくれた、とリチャードは証言する。「ジョンとヨーコと一緒に過ごすのは、いつでもワクワクしました」と彼はいう。「ただ紅茶を飲んだり、タバコに火をつけるだけでも、何か重要な出来事や一種のアートのように感じられたんです」

Yoko Ono and John Lennon with their crashed car
 

撮影から50年の時を経て、リチャードが撮ったジョンとヨーコの写真がようやく『ジョンの魂』アルティメット・コレクションの一環として公開された。159曲(新たなミックス、初公開となるデモ、アウトテイク、ジャムセッションやライブセッションのレコーディング)のコンピレーションに加え、歌詞や思い出の品々、そして前述の写真を収めた冊子が付属する。

オノ・ヨーコによるジョンのファーストソロアルバム発売50周年を記念する本プロジェクトが、今年4月に発売される。リリース当時、『ジョンの魂』のサウンドは、世界を代表するポップスターの作品とは一線を画していた。ジョンが幼少期から抱えていた傷をアートを通して昇華した、非常にパーソナルな本作は、いつまでも聴く者の心に響き続ける。リチャードにとっても思い出深い一作だ。

「『ジョンの魂』を初めて聴いたとき、その明らかに反商業主義的な叫びがとてもしっくりきたんです」とリチャードは語る。「ジョン・レノンがビートルズ後の人生で作るべくして作ったアルバムでした。あの作品は必然であり、不可避だった。まさに痛みそのもののような作品で、聴いていると胸が痛みました」

「人生で最も親を必要とする時期に母と父に捨てられた、幼く繊細な少年に、そもそも〈原初の傷〉などというものが存在しなかったとすれば、(ジョンとヨーコが米国の精神分析医とともに実践していた)プライマル・スクリーム療法は必要なかったのかもしれません」

「傷つき、見捨てられたその少年は、誰もが憧れる世界で最も有名なミュージシャンになりました。ジョンの3人の親友であるバンドメイトはいずれも完璧な、愛にあふれた家庭の出身ですが、ジョンは違いました。そして彼は、その痛手を負うことになったんです」

ソロアルバム発売時はまだアップル・レコードに勤めていたリチャードは、なぜ『ジョンの魂』が画期的な作品だったのか、彼なりの持論をこのように語る。

「ジョン・レノンと同等の地位を得た20世紀のミュージシャンは、誰ひとりとして彼のように心を開いて、自分の中で叫ぶ悪魔をさらけ出すことはできませんでしたし、あえてそうする勇気もありませんでした。ディランやレナード・コーエンでさえも」

「だからこそ、このアルバムは今なお色あせず、今もロックなんです。これはパンクやグランジなど、真情を吐露する音楽の先駆けでした。本心をさらけ出すことこそが、すべての偉大な音楽とアートの真髄なんです」

『ジョンの魂』アルティメット・コレクションは4月23日に発売。予約はこちら

Yoko Ono and John Lennon sitting on top of their crashed car
Yoko Ono and John Lennon sitting playfully on some steps outside their home
John Lennon hugging Yoko Ono from behind. They both have short hair
Yoko Ono and John Lennon riding a mini motorbike around their garden, followed by a black dog
John Lennon giving son Julian Lennon a ride on the back of a mini motorbike
John and Yoko sitting on the steps of their Sgt. Pepper caravan
Yoko Ono and John Lennon in their kitchen
side profile of John Lennon gesticulating while talking
side profile of Yoko Ono watching television under a cover

Credits


Images courtesy Richard DiLello

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