〈BOYS OF SEOUL〉が切り取る 韓国人男性の型破りな美しさと親密な友情関係

韓国人男性の多種多様な美への追求や、男性同士のごく親密な友情表現をテーマに撮影したポートレート・シリーズ〈BOYS OF SEOUL〉。このプロジェクトを立ち上げた写真家、リンジー・ライクリーフにi-Dはインタビューを行なった。

by MAKOTO KIKUCHI
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16 July 2021, 1:36am

南アフリカ出身、写真家兼イベントオーガナイザーのリンジー・ライクリーフが故郷から遠く離れたソウルの街に越してきたのは今から8年前、2013年のことだった。「大学を卒業してこちらに越して来た当初は、まだ自分が何をしたいのかよく分かっていなかった。大学では経済を学んでいたから、クリエイティブとはかけ離れた人生を送っていた。いつもアートに興味を持ってはいたけれどね。もし職がなければ英語を教えればいいから、とりあえず行ってみようって思ったんだ」

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アジアはおろかアフリカの外に出たことすらないリンジーが、韓国に着いて最初に辿り着いたのは市街地から車で2時間ほど離れた郊外だったと言う。「僕以外に外国人なんて周りにひとりもいなかったし、近所のひとはお年寄りばかりで英語がほとんど通じなかった。必要に駆られて、急いで韓国語を勉強したよ」と当時を懐かしそうに振り返って彼は笑った。

その後ソウルの中心地に拠点を移し、都市部にいる若者達と多く触れ合うようになった彼が最初に気づいたのが、韓国人男性の美意識の高さだったと言う。「僕の育った文化では、男性が見た目に気を遣うと、すぐに”女々しい” “ゲイっぽい”と蔑まれる対象になってしまう。ここではそういった偏見を誰も持っていないことに気付いて、刺激を受けた。そうしてはじまったのが、〈BOYS OF SEOUL〉のプロジェクトだ」

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〈BOYS OF SEOUL〉は、韓国人男性の多種多様な美への追求や、男性同士のごく親密な友情表現をテーマに撮影したポートレート・シリーズだ。「韓国人の男性達は、飲みに出かけたときにごくカジュアルにお互いを抱きしめ合ったり、手をつないだりする。そこに性的な緊張感があるわけでもない。彼らにとってそのスキンシップは、あくまでブラザーフッドに過ぎないんだ」

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「韓国に来て、本当にたくさんのことを学んだ」とリンジーは言う。「自分はゲイだと親にカミングアウトできたのも、韓国に来てからなんだ」。”リンジー”という一般的には女性に使われる名前と、彼の中性的な見た目から、幼少期にずっといじめを受けてきたという彼。「セクシュアリティやジェンダーについて疑問を持つことは度々あったけれど、周りにそれを気付かれたくなくて、ずっと虚勢を張っていたんだ。カトリック・キリスト教徒の家庭で育ったから、自分の気持ちを無視して女の子と付き合ったりもしていた。身の回りでゲイが受ける扱いを、自分は受けたくないと思った。韓国に住むようになったら、自分が急に自由になれた気がした」

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リンジーは2016年、すべてのジェンダーやセクシュアリティを持つ人が安心して集うことのできるクラブイベント〈Shade Seoul〉を立ち上げた。「当時のソウルのクラブシーンにはクイア・カルチャーを取りあげる場所が一切なかったから、かなり画期的だったんじゃないかな」。Shadeの第一回目として開催されたパーティは「v.o.g.u.e」と題され、ドラァグクイーンやヴォーグダンサーを招いて行なわれた。Shadeの評判は瞬く間に広まり、彼は友人と新たに〈Femme Seoul〉を創設。女性のDJを起用し、レズビアンのコミュニティによりスポットライトを当てたこのプロジェクトも、現地のクラブシーンを大きく変えるきっかけとなった。

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セーフスペースを作ること、それはリンジーがイベントオーガナイザーや写真家としての活動を通して掲げる信念のひとつだ。自分がオーガナイズするパーティで〈BOYS OF SEOUL〉の被写体と出会うことも多いという彼。「このプロジェクトの参加者の多くは、プロのモデルでないことがほとんど。モデルだとしても、パーティで声を掛けてきた外国人の家にいきなり呼ばれて『ヌードになって欲しい』なんて言われたら誰だってびっくりするよね。だから僕は撮影時に被写体の同意を確認することを怠らないし、彼らの居心地の良さを大切にしているんだ」

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「男性らしさと女性らしさは、ひとりの人間のなかに共存しうるものだと思う」とリンジーは言う。そんな彼が常に心に留めているというのが、批評家であり活動家のスーザン・ソンタグが言ったとされるとある格言だ。「『男らしい男性に宿る最大の美しさはその人の女性性であり、女性らしい女性に宿る最大の美しさはその人の男性性である』。ソンタグのこの言葉は自分のなかですごく大切で、まさに僕が写真を通してやろうとしていることだと思う」

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〈BOYS OF SEOUL〉のプロジェクトに登場する韓国人男性達は、髪が長く線が細い中性的な見た目の人から、隙間無く身体中にタトゥーを入れた人まで、実に多種多様だ。「彼らはボディビルダーやモデル、ドラァグクイーン、アーティストなど職業も様々。ユニークな美しさを持つ人を選んでいる。韓国人男性というとみんなK-POPアイドルみたいな見た目を想像しがちだけど、本当はそれだけじゃない。韓国の典型的なビューティースタンダードに当てはまらない、型破りな美しさを持つ人が撮りたいんだ」

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