DYGL Photography Yusaku Aoki

ヨーロッパへと新たな一歩を踏み出したインディロックバンド、DYGL

ロンドンを拠点とするDYGLとスカイプインタビューを決行。7月3日にリリースとなる 2ndアルバム『Songs of Innocence & Experience』やイギリスでの生活について話を聞いた。

by Saki yamada; photos by Yusaku Aoki
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03 July 2019, 8:08am

DYGL Photography Yusaku Aoki

デバイスを開けば何でも情報が手に入るインターネット時代に突入してから随分と時間が経ち、テクノロジーはさらなる進化を遂げながら私たちの常識となった。あらゆるものの無駄が省かれ利便性に長けた現代において、DYGL(デイグロー)は手間が掛かるとされるフィジカルなアナログに未だ重きを置いている。生音にこだわったバンドサウンドやイギリスへの移住など、デジタルに染まりきらずアクションを起こし続ける彼らの音楽はどのように進化したのだろう。

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新たな出逢いとDYGLの賛美歌

アジアを含む大規模ツアーや欧米諸国のフェス出演など世界に目を向けながら約7年間の活動を経て着々とそのバンドスタイルを確立させ、ロックという成熟したように思えるジャンルを軸にアップデートを試みるDYGL。これまで制作した30曲に及ぶデモの中から今のムードに合う10曲を厳選し新たな土地で息を吹きかける、そんな初心と成長が混じり合った新作『Songs of Innocence & Experience』は耳の奥まで響き渡る生音から溢れ出すノスタルジアと適量にブレンドされた甘いロマンス、そしてエクスペリメンタルな要素を取り入れてひと癖ある音楽に仕上がった。

ロンドンでの生活を送る彼らが現地での暮らしから授かった恩恵を示すとしたら、それは“新しい人や物との出逢い”になるだろう。メンバーらが尊敬するビートルズが登場した60年代より世界中で消費されてきたジャンルとその聖地で再び向き合うことは、彼らが慣れ親しんできたガレージロックのスタイルにサイケデリックやポストパンクなど自分たちが好んできたサウンドを自由に絡ませたり、これまでのDYGLにはないアレンジ法やアイデア ── 例えばサックスプレイヤーを初サポートミュージシャンとして迎え入れるなど ── 実験的にチャレンジするキッカケとなった。

「イギリスと日本の社会を単純に比較するのは難しいですが、ロンドンは表現の枠組みがより自由だと感じます。ハックニーというエリアにある倉庫のひとつでは、アトリエや住居として改築してアーティスト達が住み込みながら制作活動をしていて、毎月住人たちとその友人、そのまた友人たちが集まってパフォーマンスを発表するパーティまで自主的に開催されていました。詩の朗読をしたり、真っ暗な部屋で自作のアンビエントを流したり ── 発想が自由で、どんな形の創作であれ、作る側も見る側も新しい体験に対してオープンで、とてもリラックスしつつ楽しむ姿勢があって素敵でした。普段のライブハウスでも変わった編成のバンドをよく見ました。サイケなバンドにポストパンク的なアプローチで管楽器を入れているバンドもいたし、長身の女性が棒立ちでフロアタムだけ叩き続けてるパンクバンドがいたり、見た目も面白いし曲もありきたりじゃなくて面白かった。日本でもアンダーグラウンドな界隈には変わったことをするバンドも多いと思うんですが、実験音楽やノイズ、サイケ、ポストパンクなサウンドは此方では、より市民権を得ているイメージです。もっと別ジャンルのイベントで言うと、サウンドシステムを持ち運んでイギリス各地のプールをクラブ化するイベントなどもあったり。水上と水中で違う音楽が聞けて、パーティ感がある感じかと思ったらもっとチルアウトな音楽が流れていて仕事帰りのビジネスマンのような人がきていたりとか。それでプカプカ浮かんでいるだけ。でもプールに入ると4〜5mくらい深くて、空に浮かんでいるみたいでした。他にはカフェの奥にあるシアタースペースを真っ暗にしてアルバムを爆音で視聴する会があったり。DIYなスタイルで手作りなイベントが多く、お客さんも自分自身気軽に楽しむマインドでリラックスしていて、街の空気感はだいぶん違う気がしました」

ヴォーカル兼ギターの秋山は記憶を辿りながら、そう話していた。休日にはDYGLが強くオススメするボーリング場の<Rowans Tenpin Bowl>に友人と遊びに行く ── ちなみに前回はUKロックファンならチェック必須のバンド、Swim Deepのメンバーのバースデーパーティに招かれて行ったそう…!── など、彼らはイギリスでの生活を謳歌している。DYGLは環境の変化によって無意識的に作り出していた壁を取り払い、また新たな岐路に立った。アルバム全体を通して描かれている不安や怒りによる衝動、その反動で浮かび上がる優しさや愛は痛みを伴いながら自分たちを成長させていくが、『Songs of Innocence & Experience』はそうやってもがき苦しみながら前進する全ての人を称える賛美歌のように聞こえる。

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僕らは情報に習い経験に学ぶ

ロンドンに拠点を移すという、バンドにとって大きな決断をしたDYGL。ストリーミングサービスもより一層充実し、どこにいても世界に向けて音楽を発信することができるようになったこのタイミングで実際に行動するということはミュージシャンそして私たちに何を教えてくれるのだろうか。フロントマンである秋山自身、そういったことを度々考えることがあったそうだ。

「今ではインターネットを通して世界中の誰もがすべての音楽を聞くことができるし、自分が今いない地域で何が起きているのかも分かる。でもこうした体験はやはり擬似体験だと思います。自分の感覚はやっぱり誤魔化せない。匂いも、音も、目の前の人間の表情も、何処かに行って誰かに会う、そのためにかけた苦労も、人って自分の人生が動いていると感じるときは大体フィジカルな体験じゃないですか。インターネットは確かに便利ですが、世界中の誰もがインターネットだけで生きていたら文化はどんどん統一されてフラットになる。そんな感覚になるからインターネットだけで毎日生きていると自分が空っぽになっていくようで怖くなってくる。でも現場で実際に起きていることを通して生まれる文化は、誤魔化せないんです。できたての飯を食うのと、その写真を見るだけなのはやっぱり違う。ライブ音源を自宅でSpotifyで聴くのと、実際に会場でライブを見て感じる客の雰囲気や、会場までの道のり、酒の匂いや演奏から伝わる振動も、違う。どっちが正しいとかではないけど、僕は少なくとも一回の人生だから自分の目で見て、自分の体で体験したい。何かを知るキッカケとしてインターネットはもちろん便利で面白いですが、ただ文章として読んだり映像を見るだけでは何もわからない。それぞれの地域性、ローカル性、そこにしかない文化があるからこそ、世の中は多様で面白くなっていくと思う。自分が創作意欲を刺激されるところに、常に身を置きたいですね。自分の肌感覚で面白いと思えるところなら、ロンドンでも上海でもケープタウンでも沖縄でもどこでもいい。自分の感覚に正直になって、選びたいものを選ぶことを遠慮する必要はないと思います」

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インターネットと実体験を比べることはできない ── 秋山は最後にそう付け加えた。外国で暮らす、そんな大それた話でなくとも気になっているスポットやイベントに足を運ぶ、SNSで繋がっている友人と会う、Netflixでの公開を待つのではなく映画館に最新作を観に行くなど些細なことでも構わない。そこにはそこでしか感じられない匂いがあり、集う人が作り出す空間があり、通りすがりに聞こえる会話や音がある。そういった感覚を肌で感じながら自分をより研ぎ澄まし、情報と経験の違いを知ることの重要さ。音楽活動を通じて体験してきたことを踏まえ、いま秋山が肌で感じていることだ。

“Songs of Innocence & Experience(無垢と経験の歌)” ── これは秋山が学生時代に手に取ったイギリス・ロマン派の詩人ウィリアム・ブレイクの著を引用した言葉なのだが、次々とアクションを起こし表現と向き合い続けようとする彼ら自身が必要としていた、ひとつの答えだったように思える。表現の自由さを知ることでよりピュア(無垢)な状態になり、それは自分の感覚(経験)によって培われていく。そんなことを考えながらDYGLとのスカイプを終えた。

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DYGL 『Songs of Innocence & Experience』
発売日: 2019年7月3日
価格:2,500円 [税込]
https://dayglotheband.com/

DYGL JAPAN TOUR
チケット:¥3,500(税込/ドリンク代別/整理番号付)発売
主催・企画 制作:HardEnough
詳細:https://ticket.line.me/sp/dygl

2012年結成、Nobuki Akiyama(Vo,Gt.)、Yosuke Shimonaka(Gt.)、Yotaro Kachi(Ba.)、Kohei Kamoto(Dr.)の4人組バンド。2017年4月にThe StokesのギターのアルバートハモンドJrのプロデュースで1st Album『Say Goodbye to Memory Den』をリリースし、日本を皮切りに台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、韓国とアジアツアーを敢行。その後、FUJIROCK FESTIVAL’17のREDMAQUEEのステージで5000人を集めてパフォーマンスを行うなど注目を集める。2018年に活動の拠点をイギリスに移し、精力的にヨーロッパツアーなどを行いながら、日本でも12月に行った東名阪札福ツアーはすべてソールドアウト。2019年1月にはアメリカのBAD SUNSとのヨーロッパツアーを成功させ、3月にはSXSW2019にて8公演を行う。今回約2年ぶりの2nd Full Album『Songs of Innocence & Experience』を7月にリリースし、全国ツアーを行いつつ、FUJI ROCK FESTIVAL’19への出演も決まっている。

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