双子とLOEWEと昼間の蝶々:fumiko imanoインタビュー

LOEWEの最新コレクタブルブック『Publication#17』のコラボレーターは、日本人アーティストfumiko imano。彼女に、パリのユネスコ本部でのシューティング、そして2017年に発表した“ビッグソング”について尋ねた。

by Tatsuya Yamaguchi
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22 January 2018, 7:24am

日本人アーティスト、fumiko imanoによる楽曲『hiruma no chocho』をリピート再生しながら彼女との待ち合わせ場所に向かった。昼夜問わず、その声と音が頭からどうしても離れないのだ。この日、彼女に聞きたかったことは、LOEWEがブランドの世界観を表現すべく毎シーズン展開しているコレクタブルブックの最新作『Publication#17』でのコラボレーションについて。「その経緯やシューティングの様子について、ちょっと踏み込んだお話をうかがえたら」と言うと、「あっ(fumikoに)踏み込んだ、ね」と突っ込みが入った。今思い返せば、もうこの瞬間から、音楽のようなリズムで相槌を打つ彼女の波長に引き込まれていたのかもしれない。

エッフェル塔を眺望できるパリのユネスコ本部を舞台に、アーティストの顔も持つオランダ人モデルのサスキア・デ・ブロウと、「2人の」彼女が自由気ままに楽しげな時間を過ごしている。「バゲットで闘うなんて平和でしょ? 実際には私の過去作品から着想していて、ネギでバトルしているもの、エッフェル塔の下で“私たちが”オーケストラをしているのもそうね」。彼女にかかればバゲットは、剣にだって、フルートやバイオリンにだってなる。今作は、彼女の代表作である「Twins(双子)」シリーズのアプローチで生み出されたのだ。セルフポートレイトを切り貼りした、まるで一卵性双生児の姉妹を撮った家族写真(もしくは記録写真)のような作品は、日常的な風景を切り取った2つの「リアル」がレイヤードされたフェイクの「現実的なファンタジー」とも言える。既に世界的評価を受けている写真集『We Oui!』にしろ、この作品にしろ、クスッと笑みを浮かべたあなたは、すでにfumiko imanoの稚気に魅了されていると自覚した方が良い。言うなれば、彼女のイノセントなユーモアが、LOEWEのクリエイティブ陣の心をぎゅっと掴んだ、ということなのだ。

ところで、オファーは誰からだったのだろう? 「ある時“ピコン”って携帯が鳴ったの。そのメッセージの内容はとてもシンプル。LOEWEのスペシャルブックの撮影は興味ある?って」。送り主は、ジョナサン・アンダーソンがクリエイティブ・ディレクターに就いて以降、そのブランドイメージを先鋭的に刷新してきた功労者のひとり、LOEWEのビジュアルやアートディレクションを手掛けるM/M(Paris)のミカエル・アムザラグだった。「ミカエルの弟とあたしの友達がRCAの同級生で、その繋がりから私がロンドンにいた頃から顔見知りだったんです。彼らの仕事をリスペクトしているし、その頃からいつかM/M(Paris)とは何かやりたいなとは思っていて」。知り合ってから数えると、十数年越しの協業だ。「もちろんイエス!と返事したの」。現代のファッションシーンに欠くことのできない彼らを「私としては『グラフィック・デザイン界のアール・ヌーヴォー』だと思っています。流れるように有機的で多様性があるから」と語る彼女曰く、彼らはアートを熟知し、クリエイターを心からリスペクトしながら活かそうと努めるのだという。「ミカエルはよりデザイナー的で、マティアス・オグスティニアックはよりアーティスティックな印象を受けたのでバランスの良いコンビだと思いました」。

ユネスコというロケーション(LOEWEのショーの会場でもある)に加え、M/M(Paris)がPARCOの広告でも組んでいるサスキアのキャスティングはほぼ決まっていたそうだ。「でも、それ以外は『fumikoのやりたいようにやりなさい』と言ってくれた。撮影はショーの前日。ユネスコの場所を実際に見て仮撮影した後、それを元にして考えた『こう撮りたい』という案をジョナサンとスタイリストのベンジャミン・ブルーノ、M/M(Paris)のふたりに話したんです。これはもう撮影当日のこと」。彼女の提案に対して、M/M(Paris)、特にマティアスがストーリーとサスキアが演じる役柄を与え、ベンジャミンがその場で彼女が着る服を決めていった。「要塞のように見えた」と言う荘厳な建築物とエッフェル塔を背景に、基本的に“彼女たちは”中央でポーズしていて、コンポジションの中心もそこにある——これは彼女の作品に一貫していて、どうやら70〜80年代にお父さんが撮っていた家族写真からの影響を受けているそうだ。確かに「ほら、この真ん中に立って、前を向いて」と、よく言われた気がする。「今回はお土産屋さんにあるようなポストカードのイメージもあって、観光客がパリを訪れて記念写真を撮っているような感じかな。みんながやっている事って馬鹿馬鹿しくも面白い。それが純粋に伝わっていると嬉しい」。その歴史を鑑みても、LOEWEがこれまで生み出してきたどのイメージよりも挑戦的でプレイフルだ。彼女は、LOEWEの美しいドレスに新しい表情を付け加えたのだ。

「We oui!」by fumiko imano
「We oui!」by fumiko imano

もう20年近く撮り続けているという双子シリーズの誕生は偶然だった。「もともと自分を元気付けるためのプロジェクトだから、双子は明るい存在であってほしい。どちらかというと私自身の『両足』のような感じかな。『We Oui!』に収録されているものでは最も古い2001年ごろのものはまだ内気で家から出ていないけど、今ではどんどん明るくなってきているかな we Oui!に収録されてる10年は内気なの」。セルフポートレイトは自分に銃を突き立てるかのように、自身とまざまざと向き合うことになるのではと尋ねると、「人って誰しも自分の姿を実際よりもマシだと思っているじゃない(笑)。でも、鏡に映ったり、他人が撮ったりした自分の姿をみると目を覆い隠したくなることもありますよね。そこはみんなと同じで私にも承認できないこともあるから」と話す。その一方で、今では「昆虫採集をするコレクター精神みたいなものがある」とも。「自分のものだけど長い間撮っているから、自分でもファウンド・フォトと言うか、ちょっと他人事のような感覚もあるんですよね。きっとずっと歳をとっても『双子』を撮り続けると思うけど、同時に本当の自分に『見慣れる』っていうのは大変なことなんだなと痛感しているし、そこに向き合うことにはこれからもっと挑戦していきたいと思っていますよ」。

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最後に、私たちが愛してやまない『hiruma no chocho』(Arranged by 2lego, Produced by QQQQQQQQQ)にまつわるエピソードも訊いた。「随分前からyoutubeで歌っていたりしているんだけど、この曲を書いた時だけは、これはヒットソングになるかも!と思って誰かにプロデュースしてもらおうと。そこで、ウィットに富んだ謎のミュージックチームの2legoという人に動画を送ったの。そしたら『feelしました、作りましょう』と快く引き受けてくれたんです(笑)」。2日後にレコーディング(しかもファーストテイクが採用)して、なんと次の日には完成した音源が届いたそうだ。現在Apple MusicとiTunesにて配信中。「かっこよくアレンジしてくれて、本当に天才! iTunes配信のアイデアもくれたのも2lego。LOEWEの撮影の前にも聴いて気分を上げていたくらいお気に入り!」。昼間の蝶々は、絶対になれない夜の蝶々に片思いをしている……のだが、これ以上の解説はしない方が良さそうだ。未聴なあなたへ。この2分31秒のビデオを観ることが何よりも先決だと断言しよう(これもまたピン・ナップなのだろうか?)。


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