Carmen Daneshmandi

トランプ大統領のイスラム禁止令から1年 アート展「Before We Were Banned」

グループ展「Before We Were Banned(私たちが禁じられる前から)」のキュレーターたちは、昨年のいまごろ、JFK空港で抗議行動をしていた。

by Salma Haidrani; translated by Atsuko Nishiyama
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06 February 2018, 5:55am

Carmen Daneshmandi

This article originally appeared on i-D US.

DACA(訳注:幼少期に米国に到着した不法移民に対する国外強制退去を延期する措置)の存続が危ぶまれ、不法滞在移民の逮捕も増えている。トランプ政権によって移民のコミュニティや宗教的マイノリティの権利が現在も奪われつつあることは明らかだ。

特に国際社会が激しい怒りを爆発させたのは2017年1月、入国に関する最初の大統領令が出されたときだ。ムスリムが多数を占める7か国から米国への入国を拒否することを命じた、いわゆる「イスラム教禁止令」。ちょうど1年前の週末、これに抗議する人たちがJFK空港や国内の他のいくつかの空港に押し寄せ、ロンドンの街中にも何万もの人々が集まった。あれから1年、コンテンツディレクターのKiana PirouzとグラフィックデザイナーのMahya Soltaniが共同でキュレーション、企画してきた3日間の展覧会「Before We Were Banned」が開かれた。

1月に出された禁止令の対象から、その後イラクは除外されることになった。しかし元のリストに挙げられていた7つの国々(シリア、イラン、イエメン、スーダン、ソマリア、リビア、イラク)は「入国禁止の国」として矮小な印象を強く植えつけられてしまった。それぞれの国と人々について、いまきちんと知らしめることが必要になっている。
ブルックリンのヘリックス・ギャラリーで開催された「Before We Were Banned」展には、大統領令で名前をあげられた国に(複数の国々の場合も)ルーツを持つことを自認し、アメリカを拠点として活動する11人のアーティストの作品で構成されている。作品はマルチメディアのインスタレーションから、映像、写真、コラージュ、版画まで多岐にわたっている。

この展示は、これ以上ないほどのインパクトを持つタイミングで開催されることになった。連邦最高裁判所は2017年12月、イスラム圏6カ国からの入国制限を命じた同年9月の最新の入国禁止令の、暫定執行を認めた。いまだ引き離されたままの家族もいる中で下された判断だ。さらにこの週末は、共同キュレーターのふたりがとりわけ感傷を誘われるときでもある。ちょうど1年前、ふたりはJFK空港で、合衆国に入国できない人たちを助けていたのだ。

「Before We Were Banned」の一般公開に合わせて、i-DはKianaとMahyaに会い、展示を開催するまでの経緯、移民のコミュニティに必要な癒しのスペースとしての展示の役割や、目標としていることなどを聞いた。

Tandis Shoushtary

——「Before We Were Banned」のアイデアは、最初どのように出てきたのですか。
これは権力側が行使する憎悪に対処する行為であり、彼らとは別の立場があることを示すための、抵抗としての行為でもあります。私たちにとって、禁止令そのものは〈単にまたアメリカ政府が反移民、反ムスリムのレトリックを使っている〉というだけのもの。展示のタイトルを「Before We Were Banned」としたのも、そういう意味なんです。つまり、トランプが大統領になるよりずっと前から、私たちは恐怖や痛みを感じ続けてきたことを表しています。

私たちは物語を取り返したかった。メディアや政府は、禁止令の対象になった国を含む地域をステレオタイプ化するような視覚的な刺激を流布します。飢えた子ども、戦争、反アメリカ的なスローガン、ヒジャブ姿の女性。そうすることで、矮小化されたストーリーを固定させてしまう。私たちは、違う側面を見せたかったんです。それから「移民」や「ムスリム」「中東」というアイデンティティを、実際にそれらの地域にルートを持つアーティストが強制的に名乗らされているという事実を肯定しなければ、問題にきちんと対処できないと考えました。それで、アーティストたちにこの問題に反応してくれるよう呼びかけました

Asiya Alsharabi

——参加アーティストはどんな理由で、どのように決めたんですか。
一般公募にしました。コミュニティが重要なテーマの企画だから。さまざまな反応があって、興奮しました。その中から展示に選んだのは、個々人の声や物語の多様な広がりを示すような作品です。

——「Before We Were Banned」の重要性はどんな部分にあると思いますか。
この国の文化は、「よそ者」を作らせようとします。けれどこの展示では、入国を禁止された国そのものの実態を伝えるより、各個人にそれぞれの物語があることを、観る人に再認識してもらうことを大切な目的と考えています。そうすることで、違いを超えて共通の基盤を持てるから。みんなそれぞれ独自の物語を持っていて、禁止令にしてもさまざまに違った形の影響はありました。今回作品を展示したアーティストたちの中には、合衆国で生まれたり育ってきて、昨年の禁止令に傷ついた人たちがいます。また、過去数年間の戦争で国を追われて、最近アメリカに亡命した人たちもいます。私たちの願いは、展示を訪れた人たちが、アーティストたちの個々の物語と、禁止令の対象にされた国々との問題を結びつけて考えてくれることです。忘れてはいけないのは、問題を一般化し、他人ごとと考え続ければ、ますます孤立化と恐怖のスパイラルに落ち込んでいくということ。この独裁的な政権が得意なやり方です。

Rhonda Khalifeh

——トランプの禁止令の対象にされた国々について、人々の憶測や思い込みを正したいと思う部分はどこでしょうか。
2点あります。まずこの展示が、それらの国の文化を祝福するものになってほしい。いまは何百万人という移民にとって、とても辛いときです。それでも私たちの文化は美しく、祝福されるに値するものであることを忘れたくない。それから、禁止令の対象にされた国々に西洋側のメディアや政府が植えつけたステレオタイプと、展示に参加しているアーティストたち個人の、それぞれに違う物語とを関連づけて観てほしいです。

——移民の子供たちにとって、いまは自分の親たちの文化、歴史や伝統を改めて知るのに最適なときだと思いますか。
はい。インターネットのおかげで、私たちは境界を超えてつながり合うことができます。コミュニティの感覚は明らかにありますし、未だかつてないほど、必要とされている。移民の状況が危機的であるからこそ、2018年はその歴史や伝統を再認識するときでもあります。物語を引き継ぎたいという願いもまた、危機にさらされています。けれど若い世代の人たちは、自分たちこそ先祖の物語を守る役割を担っていると気づき始めています。自分たちのことを知るのに、メディアが流す情報に頼る必要はないのだということに。

Carmen Daneshmandi
Gina Malek

——いまのところ、展示に対してどんな反応があるのでしょうか。
驚くほど肯定的な意見が多く、広く支持されていることを感じています。企画者である私たちもアート界の人間ではなく、自分たちの文化や人々に対する愛情のためにやっています。

——展示を行うことで達成した目標などはありますか。
アーティストたちが声を得られて、コミュニティを癒す助けとなるきっかけを提供できれば、それ以上望むことはありません。

@beforewewerebanned

Soraya Majd
Layali Alsadah
Ibi Ibrahim
Carmen Daneshmandi