YUKINO WEARS SWEATER STELLA McCARTNEY. JEANS STYLIST'S OWN.

岸井ゆきのが24歳で迎えたポジティブな変化

映画・ドラマ・舞台にとさまざまな演出家から引く手あまたの新進女優、岸井ゆきの。結果的に仕事にもプラスになったという、プライベートでの大きな変化とは?

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jun 11 2018, 12:36pm

YUKINO WEARS SWEATER STELLA McCARTNEY. JEANS STYLIST'S OWN.

昨年末、『ピンクとグレー』でインタビューをしたときの彼女は、「まだ仕事がない日もたくさんあるし、不安です」と心境を語っていた。しかし、業界内での「女優:岸井ゆきの」に対する評価の高さをあちこちで耳にしていた筆者は、彼女がテレビドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』や大河ドラマ『真田丸』でお茶の間に存在感を示す一方で、次々と出演映画が公開される状況には驚きはしなかった。本人は「1年前は、次の仕事があるかないかという状態でしたし、週4で皿洗いのバイトもしていました。それが今はありがたいことに先々の仕事が決まっていて、バイトにもずっと入ってません(笑)。びっくりするような案件も決まったりして。幸せなことですよね」と、状況の変化を素直に喜ぶ。その一方で、「嬉しい半面、怖いです」とも語る。「本質を鋭い目で見定められる厳しい現場で、ペラッペラの自分や、嘘や付け焼き刃の知識は通用しないので、自分の層を増やしていかないといけないなって。どんなときでも、何があっても、お芝居ときちんと向き合っていく気持ちを大切にしたいです」

昨秋は『闇金ウシジマくん Part3』と『だれかの木琴』が、昨年12月には2人の男性のあいだで揺れ動くヒロインを演じる『太陽を掴め』が公開。そして今年はいよいよ初主演映画『おじいちゃん、死んじゃったって』が公開される。現在は堤真一や松雪泰子が出演する、Bunkamuraシアターコクーンで上演中の舞台『るつぼ』にも出演するなど、スケジュール帳はびっしり埋まっている。「以前、『岸井さんは可愛く映ろうとしないよね』って言われたことがあって。そんなことを考えたことがなかったから、そこが自分が人とは違うところなのかなと思って。今後もお芝居と違うところに意識があるようにはしたくないなって思っています」。彼女のこのエゴのないスタンスが、多くの演出家から指名される理由だろう。彼女自身、演じる際にもっとも大切にしているのはキャラクターの動機だという。「例えば、彼氏がいるのに不倫する役だったら、その理由を考えます。わからなければ監督にも質問します。でも、『太陽を掴め』のユミカは、いくら考えても全然わからなかったんです。2人の男の子のあいだでどっちつかずで、思わせぶりで。今まで演じた役のなかでもいちばん苦手な性格だったから、すごくもやもやしていました。最初はどう理解して自分に変換するか悩んだんですけど、頭でわかろうとすることをやめて、監督の演出を全力で受け止めて振り切ろうと決めてからは、だいぶ楽になりました。自分で答えを出せないときは、監督を信じればいいんだということがわかってよかったです」

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このように、さまざまなキャラクターを通して恋愛を体験・目撃してきたせいか、やや耳年増だと自己分析をする。「役作りもあって、彼氏がいるのに浮気する子の気持ちをいろんな人に相談したら、『よくあるじゃんこういうの』って結構言われて。個人的には、絵に描いたような健康的な関係を求めるんですけど……」。そんなピュアな岸井には最近、あらゆる価値観を共有できる同世代の女友達が初めてできたという。彼女の名前はシンガーソングライターの関取花。たまたまライブを見かけて彼女の音楽に魅了され、物販でCDを即買いし、あちこちで関取花の名前を出していたところ、共通の知人に行き当たり、あっという間に仲良くなった。「花ちゃんと会う時間は、睡眠と同じくらい大事な時間です。花ちゃんと会って話すとスッキリするし、疲れが取れて"お互いに頑張ろう!"と笑顔でバイバイできるんです。だから、朝しか会える時間がないときは、早朝に待ち合わせをして11時くらいまでお茶をして、それぞれの仕事に向かったり。花ちゃんとなら何時間でも話していられるんです。そんな友だち、初めてで。『アドレスってどうやって聞くんだっけ?』なんて、超可愛い話なんですけど、友だちと恋バナもしてみたかったからすっごく楽しくて」。同業者とはどうしても仕事や業界の話ばかりになってしまうし、ライバル的な要素を完全には取り除けない。その点、女優と歌手は、岸井曰く「職業は違うけど隣の畑のような感じ」なので、お互いの愚痴や不安をいい距離感で理解し、共感できるのだという。「これまで役者さんの友だちがあまりいなかったから不安みたいなものを誰とも共有できず、無言で皿を洗っていました(笑)」。そんな彼女たちには共通の夢があるという。それは役者とアーティストとして、ひとつの作品にそれぞれの立場で関わること。「あるとき、どうしてもその夢を伝えたくなって、花ちゃんに言ったら『そんなのずっと思ってた』って言われました(笑)。その目標に向かって、お互いに頑張っています」

この変化は、仕事にもいい影響をもたらした。撮影の現場でもひとりでいることが多かったという岸井だが、大親友に心を開くことができたのだから、他の人にもできるかもしれないと考え、この夏、主演映画の現場で自分から心を開いてみたという。「ちょっと開けただけなのに、みんながうわーって入ってきてくれたんです。自分の居場所を感じられると、お芝居に集中できるし、監督とも役について率直に何でも、じっくり話すことができました。何よりすっごく楽しかったです」。多少の人見知りが原因だとしても、期間が限定されている現場仕事において、他者とコミュニケーションをとろうと思えばとれたはず。そうしなかった理由について「……すごく恥ずかしいんですけど、人とあんまり話さずに、本番のときだけスイッチを入れてお芝居をすることを、ちょっとかっこいいと思ってたのかなって。そんなところで格好つけていた自分が恥ずかしいですし、いろんなことに心を開いて現場に立ったほうが絶対にいいお芝居ができるんじゃないかって考えられるようになりました」と語る。大切な友だちができた良い状態で、初主演映画の撮影に入ったというタイミングもまた、彼女が好調期にいる証拠だろう。彼女が目を輝かせる「びっくりするような案件」の報告を楽しみにしつつ、2017年の大ブレイクを予言したい。

Credits


PHOTOGRAPHY MOTOHIKO HASUI
STYLING TATSUYA SHIMADA
TEXT TAKAKO SUNAGA
Hair and make-up Naoki Ishikawa
Photography assistance Takuya Nagata
Styling assistance Yuki Koga