抗議する共同体 シスターズ・アンカット

「シスターズ・アンカット」は、積極的に声を上げて政府に立ち向かう、現代の女性権利運動のフロントラインに立つ女性たちだ。メディアが食いつくような行動を起こし、画面を通じて、ドメスティック・バイオレンスの被害者を守るために地方自治体に圧力をかけている。

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jun 21 2017, 10:40am

トランプ政権下となった現在のアメリカでは、女性や有色人種、LGBTQIコミュニティ、そしてイスラム教徒などのマイノリティな人々の安全を守る法律が毎日のように改定され、彼らは迫害の危機にさらされている。イギリスでは、彼らの命を救う政府支援機関への予算が大幅に削減された。今私たちには、権利と生活を守ってくれる力強い味方が必要だ。

「シスターズ・アンカット」は、ダイレクト・アクション(混乱を招くようなプロテストを行って確実に注目を得ること)がカルチャーとしての話題を集めるだけではなく、実際に問題改善の手助けになることを、2年間にわたり実証している。シスターズ・アンカットは、2014年11月、ドメスティック・バイオレンス(DV)による女性被害者に対する政府の支援機関の予算削減が、特に有色人種やLGBTQIの被害者の死に直接つながると主張する、緊縮財政反対キャンペーンの活動グループ「UKアンカット」により発足された。メンバーは新聞の見出しに載るようなアクションで世間の注意を惹こうと、映画『未来を花束にして』(2015)のプレミアにも押しかけた。レッドカーペットの上に横たわり、「死んだ女性は投票できない」と唱えた。

週平均2人の女性がドメスティック・バイオレンスで殺されているのだから平等への戦いは終わっておらず、政府は救えるはずの命を見殺しにしていると、彼女たちは主張したのだ。これについて、同作に出演している女優ヘレナ・ボナム=カーターは「この映画にピッタリね」と称賛した。ニーナ(23歳)は、2015年11月の葬列プロテストの記事を読み、シスターズ・アンカットに加入した。メンバーたちがロンドンのトラファルガー広場の噴水を血の色に染め、黒いベールをかぶり花輪を持って、「予算カットは流血を呼ぶ!」とジョージ・オズボーン財務大臣の緊縮財政案に反対したのだ。

インドのタミル族であるニーナは、6年前にロンドンに移住するまで中東の地で育った。「政治運動になんか加担しようものなら逮捕されて国外追放されるような環境だったから、実際に行動に移すのは初めてだった。今まで溜め込んでいた気持ちを初めて行動にすることができた」と彼女は言う。デモを見てシスターズ・アンカットに参加したニーナだが、彼女にとってはサザーク協議会を相手に戦い続けることが一番大切だと言う。「政治家との直接交渉は、譲歩だとか時間のムダだとあざ笑う活動家も多い。でも、混乱を招くようなデモで注目を集めて、目に見える効果を出し、権力者に圧力をかけることは大事。結果は大きく変わってくるわ」と確信をもって語る。

アナベル(24歳)も、メンバーがサザーク協議会に抗議したこのプロテストの様子を「協議会のあるビルに侵入し、警備員を押しのけ、高いスーツを着た協議員たちの座るテーブルをみんなで取り囲んで会議を乗っ取ったのよ!」と話す。シスターズ・アンカットは情報公開請求をして得た資料をもとに、ロンドンのDVの生存者のうち、47%もの女性が保護施設に入れず追い返されていると協議員たちに抗議した。この侵入デモは効果的だった。「協議員の代表者が会議を開いてくれて、私たちの要求がいくつか通ったのよ」と言う。このとき認められた要求は、生存者の1人に住居を提供し、他の被害者のケースも再検討すること。また、避難場所が必要かを査定するDVの専門家育成を約束する、ということだった。

イーストロンドン出身のロンダ(17歳)がシスターズ・アンカットに加入したのは、彼女らが空き家となっていたハックニー地区の協議会支部局の明け渡し抗議をしたときだった。「ソーシャルメディアでグループの活動は追っていたし、自宅のすぐそばで行われる活動を呼びかける新メンバー募集の掲示を見たときは、今がチャンスだと思った」と彼女は言う。シスターズ・アンカットはこの協議会支部局に9週間留まり、DVで苦しむ女性たちへの住む場所の提供と、不要となった協議会の所有物件を被害者たちに開放することを要求した。ハックニー地区の区長は、まず数カ月以内に空物件のうち何軒かを改装して居住可能にし、残りの物件も翌年中にはすべて提供できるようにすると約束した。「支部局からハックニーの市民ホールまで、スピーチや歌で努力の成果を祝いながら行進したわ。今までもこれからも、約束は必ず守ってもらうって、ハックニーの協議員たちに警告する意味でね」

2014年に結成されて以降、シスターズ・アンカットは急速なスピードでその規模を拡大しており、今ではロンドン内で3地区、他にもポーツマス、ブライトン、グラスゴー、エジンバラ、ブリストル、ニューキャッスルに独立した支部を持っている。組織内にリーダーやランクは存在しない。毎週行われるミーティングの司会はメンバーが順番に交替で行い、決断は全員の意見を重んじた上の多数決で決まる。10代の頃からフェミニストだったアナベルは、シスターズ・アンカットについて「活動家グループというだけじゃなくて、コミュニティなの。トロツキーについてスピーチする70歳のおじいちゃんとかに脱線させられる心配のない、しっかりしたグループに入れて良かった」と笑って話す。今では親しい友達の90%がメンバーとして所属しているようだ。

27歳のサファイアは、「リーズ・ユナイテッド・レディーズ」などのトップクラスのサッカーチームで活躍した後、映画制作や女優、司会、レポーターとして幅広く活躍しているが、「各地に支部があるから参加しやすかった。ミーティングは真剣で効率よく行われるけど、心温まる感じで、女性が集まっても安全だと思えるところ」と言っている。メンバーに加わりたいと考えている女性に、ニーナから直球のアドバイスがある。「まず一度来てみて!」。サファイアも「何か心に訴える問題があるでしょ。怒りを感じるものでも、これから変えたいと思うことでもなんでも。その問題に取り組んでいる団体を見つけて、次のミーティングに出てみては」と同意する。「私のクリエイティブな面が、私の行く道を定めてくれる。なんたって私はアーティストだから。心に訴えるものを見つけたら、しっかり取り組むわ」。

シスターズ・アンカットのウェブサイトには、アサータ・シャクールによる次の言葉が掲示されている。「私たちには自由を得るために戦う義務がある。そして自由を勝ち取らなけらばならない。そのためにはお互いに愛し合い、支え合うことが必要だ。失うものなんて何もない、繋がれた鎖の足かせが取れるだけだ」

Credits


Text Charlotte Gush
Photography Piczo
Photography Assistance Ai Nakai.
Translation Julia Hahn