「矛と盾」: 飯島望未が踊る"5つの矛盾"

大阪出身のバレエダンサー飯島望未。彼女は、時代を超えたモダニティと洗練されたCHANEL Nº5 L’EAUの香りを、この作品「5つの矛盾」のインスピレーションとして選んだ。

by i-D Staff
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06 July 2017, 9:35am

上品なフローラルの香りにスモーキーなノートが潜む、複雑で革新的なパフュームは、まるで彼女自身が抱えるパラドックスだ。
香りのように変幻自在で魅惑的、直感を信じて高く空へ舞い上がる彼女の深層心理の物語を、フランス人の二人組ディレクター、ローラ・ラバン-オリビア(Lola Partel Olivia)が描き出した。

現在コンテポラリーダンスを主流に活動されていますが、6歳の時にクラシックバレエを学び始めて、ヒューストンとチューリッヒのバレエ団に所属されていましたね。
15歳の時にヒューストン・バレエで学ぶためにアメリカに移住しました。ヒューストン・バレエは実はレパートリーが多いのですが、よりスタイルの幅を広げたいと思ってチューリッヒに転向したんです。幅広いけれども有名な演目しか公演しないアメリカに対して、ヨーロッパのカンパニーは振付家の作品や新しくオリジナル作品を創作することが多いんです。しかしながら、監督にとって私はクラシックバレエダンサーなのだな、と感じたので、ヒューストンに戻ることを決意しました。

望未さんにとってクラシックとコンテンポラリーダンスのそれぞれの魅力は?
クラシックバレエが心から大好きなんです。全く違う人物や白鳥にだってなれますからね。ドラマチックな物語が多いので、観ている方々にも映画のように楽しめることも魅力のひとつだと思います。クラシックは日々練習を積み重ねて基礎や技術、経歴が伴わないと踊れないのも魅力です。対して、コンテンポラリーやモダンは技術よりもセンスが生きる場合もあります。コンテンポラリーの魅力はとにかくその自由さ。ディレクターの世界観がはっきり作品に出るのが面白いんです。クラシックに比べて比較的リラックスして踊っている気がしますね。

ダンスをするにあたり、5感で最も大切にしているのは?
音感ですね。昔から音楽性だけは必ず褒められるんです。間を開けてアクセントをとるとか、音に遊びを取り入れるのが好きなんです。美しかったとしても音楽と遊んでない人の踊りは退屈だと感じてしまいます。実は、私の兄がブレイクダンサーで、彼らのハウスダンスなどのいろいろなステップをよく見ていました。ハウスダンスは足のステップが巧妙ですし、彼らは音楽の取り方がうまくてカッコイイんです。

地元大阪から15歳で渡米した時の街の感覚を覚えていますか?
私ホームシックになったことがなくて。バレエが一日中できる素晴らしい環境だと心酔していたほどで、言葉の壁や文化の壁もありましたが楽しみしかなかったですね。バレエの中では、日本人がアメリカ人の中にポツンといて、どう思われているんだろうとは思っていましたし、自分の実力が全然見えなかったというのはありました。15歳で渡米した当時、英語がわからなくて役を降ろされたりしたこともあったんですが、その後腕を組んで立ち去る私を見て、度胸があると監督に思われたようです。私は全く覚えてないんですけれどね。

劇中では香水にインスパイアされたオリジナルのダンスを表現されましたが、CHANEL Nº5 L'EAUの香りを体感した感想はいかがでしたか?
フローラルな中にスモーキーな香りも漂う、ユニークな香りだなと感じました。フレッシュで華やかで上品なノートに隠れる様々な香りの要素が複雑に組み合わされているところから、二面性を表現しようと思ったんです。私は裏表がかなりはっきりしているタイプですが、世の中も人間も矛盾やパラダドックスが常にありますよね。強いけど弱い、綺麗だけど不恰好、自分の中でこうなりたいけれどできないとか、こうしたいのにやらない自分がいたりとか。それらを踊りで表現してみたかったんです。クラシックは大好きで得意だったけれど、コンテポラリーをもっと追求したくてチューリッヒに行ったのに、実力がなくてできない。そのフラストレーションを踊りでどのように表現したら良いかに注力しました。

ディレクターのローラ・ラバン-オリビアとの作品作りはいかがでしたか?
映像監督と同じで女性の振付家も少ないのですが、以前女性のコンテンポラリーの振付家とご一緒した時に女性の振り付けの方が難しいと感じたことがあったので、どうなるのかとは思っていました。ディレクターと振付家とは違いますが、カメラマンへの指示や細かいところを何度も撮影しているのを見て、ローラの強いこだわりを感じましたね。ヴィジュアル部分で日本らしさを取り入れていたので、私のアイデンティティを象徴してくれたのだと思いますし、彼女はいつも私の意見を第一に優先してくれて、ダンサーが動きやすいように働きかけながらも、彼女自身の世界観の中でどう良く見せようかというのを考えてくれていました。フランス人女性で活躍している彼女は"かっこいい女性像"と言う枠に入ると思いますが、すごくスイートで人柄が素晴らしい。彼女が監督で本当によかったと思っています。

初めてのコレオグラフィーそして本格的な映像制作に挑戦されました。
はい。ローラは、リハーサルの時から『ここはこうしてほしい』とか『ここはもっとダイナミック』になどと細かいことも伝えてくれたので振り付けもしやすかったですね。もし、向こうの意見ばかりだったり、フィードバックもなかったりしたら自信をなくしていたと思いますね。

納得する振り付けに仕上がりましたか?
実は、いざ現場で踊ろうとしたらプランしていたことがほとんど飛んじゃったんです。ロケーションやシチュエーションによって勝手が違い過ぎて、結果的にほぼ即興になりました。即興はそんなに経験がなかったので、完成を見るまで少し怖い部分もあります。でもコンテンポラリーやバレエも正解がないのかもしれませんし、踊りがどうというよりも観ている人に伝わればいいと思っているので、わからなくても何か感じてもらえれば嬉しいですね。クラシックバレエは、物語もポジションも衣装も決まっているからこうあるべきというのがわかりやすいし、踊っている側もこうしなきゃいけないというのがありますが、コンテポラリーは振り付けの人によってそれぞれ。『自由』にという人もいれば『言われた通りに動いて』というのもある。でもそこに正解はなくてコンセプトも決まっていない作品もあって、それが面白いんです。振り付けがわからなくても、観ているお客さんがどう感じるかが大切なんですよね。

双子の小学生ダンサーが登場しますが、彼らとの作品作りはいかがでしたか?
踊るのが好きでバレエが好きというのが溢れ出ていて、キャスティングでは全員一致でこの子たちにしようと決まりました。バレエで子役と共演することもあるし接触は多いですけれど、指導は未経験です。さらに今回は振り付けとバレエの指導を同時に行ったので大変さを感じましたね。子供ってとにかく話をきかないし、辞めてっていうまで双子で同じ動きをしているんですから(笑)。可愛くてとてもいい経験になりましたね。

クラブのシーンが出てきますね。世界共通でダンスを楽しめる場所ですが、どのようなクラブに行かれるのでしょうか?
テクノが好きで普段もよく行きます。今回の撮影で訪れたのは初めて行くクラブでしたが、友人を呼んで、ということだったので撮影も楽しかったです。海外のバレエダンサーはよくクラブに行くのでヒューストンにいた頃は、ゲイの子たちとゲイクラブによく行って踊っていましたね。女性が安全ですし、みんなクレイジーだから楽しいんです。ザ・アメリカといったカルチャーのヒューストンはトランプ大統領の支持者が多いので、差別が多いという意見もありますが、私にとっては第二の故郷ですから、戻るのがとても楽しみです。

今回の舞台は東京でしたが他都市と比較してみた時の東京の魅力は?
東京の街は特別ですよね。渋谷の夜に渡るスクランブル交差点には毎回ワクワクします。ニューヨークとも違って、一番いろんな人種やいろんな人が見られるところ。表面的な明るさに反して、暗く包まれた人々がうごめいているような、明るさと闇が混在している街。そんなダークな部分を持っている東京に惹かれます。

これまでの長きに渡るダンス経験を通じて、見出したことは?
モーリス・ベジャールという振付家の名言で『伝統があってこそのモダン』という言葉が大好きです。クラシックがあるからこそ、崩すことができる。私はクラシックバレエが好きだし、そこから進化して行くコンテンポラリーが好きなんです。伝統や軸はどんな事にも共通してあるもの。正統を知る事で革新が生まれる、そう思っています。

IN PARTNERSHIP WITH CHANEL

Credits


Text Yuka Sone

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