ラリー・クラークが語る「TOKYO 100」

現在、展覧会「TOKYO 100」を開催しているラリー・クラーク。キュレーションを務めたレオ・フィッツパトリックとともに、“異例”ともいえる本展について2人に話を聞いた。

by Kanayo Mano
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29 September 2016, 5:15am

Masaki (Studio Punkfloyd)

ニューヨーク、パリ、ロンドンと開催され、話題となったラリー・クラークの展覧会「TOKYO 100」がついに東京に上陸した。大盛況により会期は3日延長され、会場では、映画「KIDS/キッズ」や「BULLY/ブリー」など、ラリーが手がけた映画作品のロケで撮りおろしたスナップショットや、Supremeのカレンダー撮影の際に撮ったポートレートなど、貴重な写真を見ることができる。本展に合わせて来日を果たしたラリーと、「KIDS/キッズ」出演以来、ラリーとつながりが深く、キュレーションも務めるレオ・フィッツパトリックに、本展にまつわる秘話や見どころなどを聞いた。

先に開催されたニューヨーク、パリ、ロンドンでも本展は大きな話題となりました。次の開催地に"東京"を選ばれた理由を、まず聞かせてください。
ラリー:70年代に初めて来日してから、これまで12回以上東京に来ている。僕は日本の人たちが大好きだし、東京も大好きだからね。だからここ東京を、この展覧会の"終着点"にしたんだ。それに、僕自身が実際に展覧会に在廊して、何千枚もある写真を見てみんながどんな表情をしてくれるか、自分の目で確かめるのも初めてのことなんだよ!

「展示する写真を破格で購入できる」というのもユニークです。「長いキャリアを通して撮りためた写真を、自分を支えてくれたファンや友人に持ってもらいたい」というラリー自身の思いからスタートしていると聞きましたが。
レオ:そう、この展覧会のアイデアはラリーから生まれたものなんだ。最初に開催したニューヨークでは、あるギャラリーに「クレイジーだ」って開催を断られたみたいで、僕がやっている小さなギャラリーで行うことになった。多くのギャラリーは、もちろんいい意味で、アーティストとその作品の価値を守ろうとするからね。でも、今回の展覧会はアート云々の話じゃなくて、キッズたちに恩返しすることが第一義だったから。

ニューヨークでの反響はどうでしたか?
レオ:ラリーも僕も展覧会の告知を一切していなかったんだ。キッズたちなら、何かで聞きつけてやって来るだろうと考えて、口コミで広がるのに任せていた……そうしたら、やっぱり来てくれた。最高だったよ。その人たちにとっては、他では得られない体験にもなったと思うしね。

今回の展覧会では、展示の仕方も特徴的です。大きな木製のクレートをギャラリー内に設置して、中に積み上げられた写真を自由に見ることができる"ガレージセール"のようですね。
レオ:実は、これもラリーのアイデア。アーティストの作品に"触れる"ことができるなんて、本当に異例だよ。展示されている写真のなかには、ラリーの映画作品や写真集に関わるものも多くあるけど、なぜかラリーがサファリで撮ったプライベートな写真もあったりする。考えてみてよ、ラリー・クラークが撮ったキリンの写真を所有できるかもしれないんだよ、そんな機会は滅多にない(笑)。

GALLERY TARGET

展示されている写真のなかで、思い出深いものは何ですか?
ラリー:たくさんありすぎて、選ぶのは難しいなあ……。1961年から55年もの間、自己表現の方法として撮り続けてきたんだから。でも選ぶとしたら、2002年にロサンゼルスのサウスセントラルで偶然出会った、若いラティーノたちの写真だね。

それはなぜですか?
ラリー:そのエリアは白人たちが行かないところでね、黒人とヒスパニックの人たちしかいないんだ。彼らの姿を写真や映画に収め続けてもう17年になる。僕は、彼らが12・13歳の頃から成長していく様をずっと撮っていて、写真集も3冊出しているんだ。そこで出会ったジョナサン・ベラスケス、キコ、カルロス、エディー、ルイ、ミルトン——みんな、13-15歳の頃に『ワサップ!』に出演してくれた。彼らは僕の親友で、今も変わらず会って、彼らの写真を撮っているから。『ワサップ!』で彼自身を演じたジョナサンは当時15歳になるかならないかくらいだったんだけど、今制作中の映画『MARFA GIRL 2』にもミゲル役で出てくれているよ。
レオ:僕はやっぱり90年代初期に撮られた写真が好きだな。ラリーの写真には、若さと至らなさゆえの自由みたいなものがある。見ていて、ノスタルジックな気持ちになるよ。

ラリーと初めて出会ったとき、あなたも14歳でしたね。そのときのことを聞かせてください。
レオ:僕のスケートボード仲間たちのなかにラリーもいて、最初はよく彼を見かける程度だった。当時40代のラリーは目立っていたしね。その頃のスケートボートの世界は狭くて、みんな知り合いだった。ラリーは写真家のトビン・イェランドと一緒にいたから、有名な人なのかと思っていたけど、アーティストとしての彼のスゴさを理解できるようになったのは、20代半ばになってから。当時の僕は中学を中退した若いスケートボーダーで、アートのことは"気になる"程度だったからね。ラリーは自分のスゴさを僕たちに伝えるんじゃなくて、自分から僕たちの輪のなかに入ろうとした。そういう姿勢は、彼のなかにずっとあるものなんだと思う。

40代後半になって始めたスケートボードは、作品にどんな影響を及ぼしましたか?
ラリー:スケートボードをしていなかったら、『KIDS/キッズ』で描いたような"キッズたちの秘密の世界"に足を踏み入れることはできなかっただろうし、みんなの好きな『BULLY/ブリー』も撮ることができなかっただろう。僕のお気に入りの『ワサップ!』も、『MARFA GIRL』や『MARFA GIRL 2』だって誕生しなかったはずだよ。

「TOKYO 100」の次、今後の展望を聞かせてください。
レオ:ラリーと僕はもう25年も仕事をしているから……一緒に年をとって、リタイアしていくって言いたいけど、そんなことを言うと、きっとラリーは僕を「臆病者!」って呼ぶだろうなあ。
ラリー:僕の人生哲学は「忙しくあれ」「前進あるのみ」だからね。
レオ:ほら、ラリーは僕よりもずっと若いんだ(笑)。

Masaki (Studio Punkfloyd)

LARRY CLARK 「TOKYO 100」
会期:2016年9月23日(金)〜9月30日(金)*10月3日(日)まで延長
会場:GALLERY TARGET
住所:東京都渋谷区神宮前2-32-10
時間:12:00-19:00
tel. 03-3402-4575
gallery-target.com

Credits


Text Kanayo Mano

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