5人の女性彫り師が語る、タトゥーの業界事情

人気と実力を持ち合わせる女性タトゥー・アーティストたちに、男性中心の世界でそれぞれが体験したことを聞いた。

by i-D Staff
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31 May 2017, 6:30am

現在、タトゥー・アーティストの6人に1人は女性だという。しかし、その比率は急激に変化している。このシリーズ第1弾では、フェミニズム第4波とソーシャル・メディアがいかにタトゥー文化におけるジェンダーのバランスに衝撃を与えたかを書いたが、近い未来にはその女性比が3人中1人となり、2人に1人になるだろう─タトゥーの世界で独自の立ち位置を確立し、女性がいきいきと作品を生むことができるタトゥー界の未来を後押ししている5人の女性タトゥー・アーティスト、サラ・カーター、ローズ・ウィタカー、スタニスラヴァ・ピンチュク、ミナ・アオキ、そしてセラ・ヘレンに、i-Dは話を聞いた。彼女たちの声に耳を傾けてほしい。

セラ・ヘレン(Sera Helen)
メルボルンでタトゥー・アーティストたちが集まって暮らしている倉庫に住まわせてもらったとき、タトゥーを始めた。そこのひとたちはDIY精神を大切にしていて、雨漏りする天井も自分たちで直し、ギターのペダルやスタジオを作ったり、戯曲を書いたり、ありとあらゆることを自分たちでやっていた。彼らはタトゥーに興味があるというわたしに「やってみなよ」と背中を押してくれた。基礎を教わりながら、拙いながらも友達のタトゥーを掘らせてもらった。わたし自身はいくつもタトゥーを入れていて、タトゥーこそがわたしのやりたいことだと分かっていたから、色々なショップに「入門させてくれ」と頼み込んで、ようやく採用になって……タトゥー業界にも世の中と同じように男女間の不平等がある。この業界の女性たちは、男性至上主義の構造をなくそうと努力してる。男性至上の考え方は社会に定着してしまっているから、タトゥー業界でもそんな構造と戦わなくてはならない。でも、変化もあるわ。タトゥー・アーティストになれる人間の資質、タトゥーを入れるひとの傾向、タトゥーを入れる場所─そういったイメージがすべて変わってきているの。わたしが女性だからということで、男性のアーティストと扱いが違ったり、もっと違った立ち居振る舞いを求められたりして悔しい思いもする。でも、わたしはストレートで、ヨーロッパの血が流れていて身体に不自由もない人間。だから、まだ生きやすいほうだと自覚しているわ。
@serahelentattoo

サラ・カーター(Sarah Carter)
わたしは、男性しかいない環境でタトゥーを学んだ。だけど、スマートな男性たちだったから、過酷とは思わなかった。もちろん、低俗な男性アーティストもいなかったわけじゃない。女性の彫り師を軽視したりするひともいたけれど、幸運なことに、わたしのキャリアに影響なかったわ。そんな古い考え方のひとたちは、ただの笑いのタネだった。仕事環境において、ジェンダーでの違いはこれからもなくならないと思う。タトゥーの世界でもね。女性がいるから多様性が生まれる─どんな状況でも、そこに変化のきっかけと選択肢を生み出すから。具体的に、女性アーティストが何を生んだかは説明が難しいけれどね。「優しく、一般的に親しみやすいイメージを作り出した」ということだと思うけれど、怖くてとっつきにくい女性アーティストもいるし……「女性らしさを業界に持ち込んだ」ということでもあると思うけれど、そうすると、「特に女性らしいと自認していない女性はどうなるの?」という反論も出てくる。タトゥー業界に挑戦したいという女性へのアドバイスは(男性へも同じことが言えるけど)、「敬意は勝ち取るもの」ということ。
@sarahcartertattoo

ローズ・ウィタカー(Rose Whittaker)
ロンドンのソーホーにある<A True Love Tattoo>で、スティーヴ・バロン(Steve Baron)の助手に就いたのが2010年のこと。あんなふうに安定した状況で助手を経験できたのは、本当にラッキーだった。その前には、この世界に入ろうとして、2度もイヤな思いをしていたわ。わたしをタトゥーの世界に引き入れてくれた男性アーティストは、よくよく聞いてみると極右で、わたしとはまったく相入れない思想だった。2軒目のショップもむちゃくちゃだった。"器具代"として3000ポンドを支払えと請求されたり、「うちで働くときは、デニムスカートをはけ」って言われてね。そこでは働かなかった。タトゥーを本職としたのは2012年。それまでいろんな店でタトゥーを彫ってもらったけど、女性客はわたしだけだった。どの店でも居心地悪く感じたことはなかったわ。タトゥー作品をポートフォリオにして、その内容が良くて、努力を忘れず、自分の技術と感覚を大切にしていれば、ジェンダーは問題にならないと思う。タトゥー業界は、性差別が当然のようにまかり通っていると思われがちだけれど、わたしが知るかぎり、それはほかのどの業界でも変わらないものだと思う。わたしが知るもっとも先進的でオープンなひとたちは、タトゥー・アーティストよ。
@britlle_wrists

ミソ(スタニスラヴァ・ピンチャク:Stanislav Pinchuk)
友達がマシンを手に取るのを横で見ていて、わたしもやってみたいと思ったのがタトゥーを始めたきっかけ。ひとが使い方を学びながらタトゥーを彫っていくのを見て、触発されたの。わたしにとってタトゥーはとてもサブカルチャー的で、そこに魅力を感じる。誰かの助手についたことはなくて、すべて周りのひとから学んでいった。ショップという環境にも惹かれたことがないのよね……男性中心の環境であろうと、そうでなかろうと─とはいえ、惹かれない理由を考えると、男性中心の世界であるということが「影響はしている」と言わざるを得ないんだけれど。7年前にタトゥーを始めたころ、DIY系タトゥー・アーティストということで、男性アーティストからの風当たりは強かったわ。でもそれはおかしいといつも思ってた─だって、8000年も続くタトゥーの歴史は、DIYの歴史なんだから。そうやってタトゥー文化は伝承されてきたの。わたしにとって、タトゥーはコミュニティのもの。友達に彫ってあげるものであって、お金のためにやることじゃない。数分で永続するものを作り上げるというのも好き。そして、信頼関係がなければできないところも。あの緊張感もね。後悔の念もまた良いものだと思う。
@m_i_s_o_

ミナ・アオキ(Mina Aoki)
14歳になったとき、ショップの床掃除と電話番、清掃の仕事に就いたの。客がいない時間には、「認めてもらえるかも」と思いながらスケッチを描き続けた。でも、タトゥーを入れたいとお店に入ってくるひとは大柄で怖い男のひとばかりだと思っていたから、誰にも認めてもらえないだろうとも思っていた。雑誌で見るタトゥー好きはみな荒々しく、レザーの服を着ているような男性ばかり─わたしはそんなイメージから遠くかけ離れた存在だった。荒削りな容姿にもなれるし、自分がタフじゃないとは思わない。でも、なんといってもわたしは女性だから。でも、そのうち、ショップの人たちがわたしを助手にしてみてもいいんじゃないかと考えるようになったの。スティーヴ・ペドーニ(Steve Pedone)とブラッド・スティーヴンス(Brad Stevens)が特に。彼らはわたしをジェンダーに関係なく他のアーティストたちと平等に扱ってくれて、いつも背中を押してくれた。今のわたしがあるのは、母のおかげによるところが大きい。女性であるということが不利ではないと教えてくれたのも、何かを実現したいときに実現できるのはわたし自身しかいないと教えてくれたのも母だった。そういう精神でこの業界に飛び込んだから、敬意を得る必要性と、それを当然のものとして要求することの大切さを感じたわ。
@minaaoki

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Credits


Text Zio Baritaux
All images courtesy of the artists
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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