Dress Mara Hoffman

主演ブリア・ヴィネイトが語る『フロリダ・プロジェクト』

インスタグラムで見出されたブリア・ヴィネイトは、ショーン・ベイカー監督の新作『フロリダ・プロジェクト(原題The Florida Project)』で女優デビュー。ディズニー・ワールドの影で起きている、貧困と売春を描いた挑発的な映画だ。

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05 december 2017, 6:25am

Dress Mara Hoffman

This article originally appeared in The Sounding Off Issue, no. 350, Winter 2017.

2016年4月、ブリア・ヴィネイトは飛行機でマイアミを発ち、出身地のニューヨークに戻った。アール・デコと〈アート・バーゼル〉(マイアミ・ビーチで開催される大規模なアートフェア)の街で1年を過ごし、地元に帰れることに心からホッとしていた。「フロリダにはうんざりしてた。これから先もう二度と、1日たりともあそこでは過ごすまい、と思ってた」。まさかそれから2ヶ月も経たないうちに〈サンシャイン・ステイト〉(フロリダ州の愛称)に舞い戻るとは、この時の彼女は知るよしもなかった。

マイアミにいた頃のブリアは、マリファナ関連のグッズをInstagramを通じて販売する自分の会社を持っていた(マリファナ・マークが刻印されたメダル型アクセサリーの購入に興味があれば @chronicflowers をチェック)。とはいえ、ほとんどの時間をひたすら退屈して過ごしていた。「近くに友だちがほとんどいなくて、人と接するのはインスタがメイン。女の子と一緒に住んでたんだけど、その子とハッパを吸ったり、下着姿で踊る動画を投稿したりしてばっかりいた」。当然、 @chronicflowers は数千人のフォロワーを集めた。映画監督のショーン・ベイカーもその一人。高く評価された2015年のデビュー作『タンジェリン』の続編に取りかっているところだった。

Coat and top Landlord

ブラジャー姿でハイになるブリアを目にしたショーン・ベイカーは、新作『フロリダ・プロジェクト(原題The Florida Project)』の主人公を、ワイルドでちょっと変わったこの魅力的な女性をイメージした人物にしようと決めた。ハレーと名づけられたその役のために、一流の女優が何人もオーディションを受けたが、これぞと思える候補は現れなかった。「いっそのこと、実物の彼女に役をやりたいか聞いてみたら?」と、映画の出資者の一人が提案。すぐにブリアのアカウントにベイカーからメッセージが届く。女優業に興味はないか、という内容だった。「フォロワーには変な人もたくさんいたから、なりすましだと思った。それかポルノとか何か怪しげなものを撮ってるキモい奴かな、とか」。そう言って、ニューヨークのアパートいるブリアは電話口で笑う。Google検索して彼がまともな監督とわかると、演技経験ゼロにもかかわらず、彼女はオーディションを受けるためフロリダに戻った。「二日かけて、あらゆるシナリオを即興で演じたの。帰る前、ショーンに『私が役に決まったか、いつわかるの?』って聞いた。そしたら『もう決まってるよ!』って」

2016年の『アメリカン・ハニー/American Honey』や『ムーンライト』のように、『フロリダ・プロジェクト』もまた、勝ち目なしの状況からドンデン返しを起こしうる映画だ。シャープで美しい映像、観察的な視点で綴られる小さなエピソードの重なりが、強烈なクライマックスへと連なっていく。ユーモアにあふれていて、同時に静かに挑戦的。子どもの目線から世界を見ることで、アメリカでますます厳しさを増す住宅危機をめぐる、深刻な問題を浮かび上がらせる。「この映画が描いているのは、現実にある貧困。そして、どんな環境で育っても子どもはそこに何か楽しみを見出す、ということ」とブリアは語る。「実際にあった話を元にしているの。こういう状況で助けを必要としている人たちが、あそこには本当にいる」。映画の舞台はフロリダ州オーランド。ディズニー・ワールド「マジック・キングダム」がのしかかかるような影を落とす中に密集して立つ安モーテルの一つ。住居を追われた家族たちがその日暮らしの生活を送る。通りの向かい側では、金持ちが数千ドルを費やして、プルートと握手する。

映画はカンヌで何度ものスタンディング・オーベーションを浴び、インスタではドレイクが絶賛した(「今年で一番の映画になる」と宣言)。『アメリカン・ハニー』のサーシャ・レーンや『ムーンライト』のアシュトン・サンダースのように、『フロリダ・プロジェクト』のほぼ無名の出演者もスターになりつつある。この映画のブリアは素晴らしい。ムーニーというやんちゃな6歳の娘を持つ、元ストリッパーの若い母親ハレーに完全になり切っている。「ハレーは、親としてはもう少しなんとかしたら、って思わせる人。せめて子どもの前で一日中マリファナを吸うのはやめるとかね。でも彼女もがんばってる」。自分の演じた役柄についてブリアは言う。「何にせよ家賃を払って暮らしてるし、娘には食べる物を与えてるし、生きていくためにやらなくちゃいけないことは、ちゃんとやってる」

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ムーニーを演じたブルックリン・プリンスは、役柄と同じく驚くほどの世慣れた賢さを身につけた6歳だ。「オーマイゴッド」。ブリアは強いニューヨーク・アクセントを帯びた叫び声をあげる。「ブルックリンはものすごく才能のある女優。本当の子どもだってことを時々忘れちゃうくらい」。この二人と、ムーニーの親友ジャンシーを演じたヴァレリア・コットーは撮影中いつもつるんでいた。最終日には三人ともかなり感情が高ぶっていた、とブリアは思い出す。「『カット』の声がかかった途端に、二人が泣きじゃくり始めたの、ほんとなんだってば。めいっぱい声を張り上げて『家に帰りたくないよー!』って。私も泣かずにはいられなかった、私も帰りたくなかったから! みんなで作り上げてきた絆や関係性はすごく特別なもの。家に帰る飛行機でもずっと泣き通しだった」。スクリーンの外でのつながりが作品にも現れている。ほとんどの俳優がそれまで演技は全くの未経験だったが(ブリアは撮影開始の二週間前に現地入りして演技レッスンを受けた)、二度もオスカー候補になった俳優ウィレム・デフォーがいたおかげで、彼にちょっとしたアドバイスをもらうことができた。「彼に会うのはすごく緊張した。でも素晴らしい人だった、とても控えめで。たくさん助けてくれたし、役を演じる自信をくれたの」

ブリアは現在、撮影と取材で大忙し。そんな生活を「すごくシュール」と言う。リトアニア生まれブルックリン育ちのこの新人は、名声にどう対処していくつもりなのだろうか。「クレイジーよね。時々少し場違いな気分になる。私はタトゥーだらけだし、この業界によくいるタイプの女の子たちとはちょっと違うから。居心地のいい場所を見つけていけたらと、本当に願ってる」

さまざまな役のオファーが来るのを待ちながら、ブリアは自身で脚本の執筆も始める予定だ。新しくできた友人、『プリティ・リトル・ライアーズ』のアシュレイ・ベンソンと共同で書くテーマは「現実社会で起きるクソみたいなこと、この街で女性が経験することについて」。『フロリダ・プロジェクト』はブリアにとって初めての映画だが、彼女には自分がどんな仕事をしていきたいか、またはしたくないかが、はっきりわかっている。「最初の映画が自分にとってすごく意味深いもので本当にラッキーだった。これから参加するどんな企画でも、同じくらい深い関わりを感じていけたら」と彼女は言う。「ただ演じるだけじゃなくて、描こうとしているテーマや人々に対して、自分が情熱を持てるような映画に出演していきたい」

Jacket and top (worn backwards) Song Seoyoon.
Dress Libertine, bra Deborah Marquit

Credits


Photography Chad Moore
Styling John Colver
Hair Blake Erik at Statement Artists using Bumble and Bumble
Make-up Asami at Frank Reps using Glossier
Styling assistance Stella Evans