acne studiosの最新ヴィジュアルを製作したアーティストはプロサーファー

Nina Utashiro

カルフォルニア出身のプロサーファー アレックス・ノストがウェストサイドのサーフカルチャーを語る。

プロサーファーの中でも一際エキセントリックな男、米カルフォルニアのオレンジ郡出身のアレックス・ノスト(Alex Knost)。"サーファー"という肩書きに収まらず、多方面に羽を広げ活躍している彼は、カメラや絵、楽器など、様々なフォーマットを通して1つのカルチャーを創りあげている。"表現者"と言った方が適切であろうアレックス。アクネ ストゥディオズのデニムライン「ブロ コンスト」のAW2017コレクションのヴィジュアル作品の公開に合わせて来日した彼に、自身の活動や今回のコラボレーションについて訊いた。


プロサーファーに写真家、画家、ミュージシャンとしても活動されていますが、どのような経緯ではじめたのですか?

小学生のときから学校の前と放課後にサーフィンをしていました。それが発展して今こうして続けられているという、ただシンプルなことなのです。サーフィンはアクションスポーツではなく、抒情的でカルチャー要素が強いものなので、必然的に音楽や写真も絡んできました。サーフィンをしたり、絵を描いたり、仲間とバンドを組んで練習したりという生活が僕にとってはごく自然のことでした。趣味を育てるにはそれなりの資金がいるので、17歳のときにバイトを始め、それが"モダン アミューズメント"というブランドになったんです。オーナーのジェフ・ヨコヤマが服をデザインさせてくれ、それが大きなターニングポイントになりましたね。様々なサーファーやスケーターたちが牽引するアートシーンに身を置いたことにより「お金のために行動するのではなく、行動するために行動する」という考えを持つようになりました。感覚を顕在化させるのが好きなので、その形式は言ってしまえばたまたま手先にあった道具だったんです。

幼少期はどのような環境で育ちましたか?

いたって平凡な中流家庭でしたよ。南カルフォルニアで育つと毎日の生活に「ビーチ」がある。特に親の世代から海の近くに根を張っている家庭は、その精神が色濃く継承されると思います。父親がサーフィンを趣味とする塗装業者、いわば1960~70年代の反体制文化を生きた典型的な労働者階級のカルフォルニア民なので、その影響は大きいですね。自分の手で何かを作り上げ、時間があれば海に飛び込む、という肉体労働者たちに囲まれた地域で育った普遍的な環境が結果的に今の自分の根底にあります。その上、祖母が抽象表現主義のアーティストだったので、放課後に祖母の家に行くと描くものを渡され「とりあえず絵でも描いてて!」と言われてました。今思えば恵まれた環境だったと思います。


1960~1970年代の度外視されがちなサーフカルチャーの引用が多いように思います。 古色蒼然と化したもの を再解釈するということは意識していますか?

どんなアートムーブメントにも黄金期はありますが、父が生きた60年代のサーフカルチャーに見られる、どこか挑発的で実験的な感覚は、今も強いパワーを持っているように思います。ただ、歳を重ねるにつれ、ポップカルチャーや外の世界を目の当たりにして視野が開けてくると、他のことに感化されることも必然的なことです。60年代のサーファーたちはジャズを聴いていたことに対し、僕はビーチ・ボーイズやトーキング・ヘッズを聴いていたし、あの時代のサーフカルチャーをまるごと崇拝しているわけではない。音楽に手を出し始め、ブライアン・ウィルソンの影響を受けた音をつくっていた僕が、ポストパンクやノイズミュージックをひとつのムーブメントとしてリスペクトしていたのと同じような感覚です。僕が創造するものは、60年代~70年代の文化に気鋭なスポットライトを当てたオマージュではなく、あの時代に着火して進化した"アート"の無限さ、そしてそこに伏在するロマンティズムを浮き彫りにするものです。

今回のブロ コンストとのコラボレーションは、どのようにしてカタチ なったのでしょうか?

2年ほど前に、LAでアートキューレーションを手がけているダニエラ・マーフィーと「コスタメサ・コンセプチュアル・アートセンター」というプロジェクトを始めました。その少し前に「Sweater Sculptures(セーター彫刻)」という作品のシリーズを製作していたんです。2016年の5月に、それをみたアクネ ストゥディオズのクリエイティブ・ディレクターであるジョニーから連絡が来たところから始まりました。彼はサーフボードを集めたり、西海岸のサーフ文化やアートが好きだったみたいで「Sweater Sculptures」を見てくれていたんです。ジョニーが家族旅行でカルフォルニアに来て僕のアートセンターに遊びに来たんですが、その時ちょうど展覧会の合間で空間がスタジオ化していて、過去の作品や製作途中の作品で溢れかえっている状態でした。彼がいくつか作品を購入してくれて、その数ヶ月後に僕がストックホルムに遊びに行ったりと友情が徐々に育まれていきました。そうしているうちに、ある日ジョニーに今回のコラボレーションの話をもらったので、びっくりしました。「今回のコレクションの服を使って自由に好きなことをしてくれ」という依頼でした。クライアントがアーティストに完全なる自由を与えるというのはすごく稀なことだし、僕に信頼を置いてもらえたことに感謝しています。このコレクションのカラーパレットは僕が普段使う色とすごく近かったし、商業的なことやビジネス的なことを考えずに、もらった素材で素直に心赴くまま製作できたように思います。今回のコレクション自体も僕から影響を受けてくれたみたいでサーフィンや僕がやっているローファイなロックバンドの感性、僕の作品のDIY感というか手作り感も反映されていて嬉しいです。

現在、ブロ コンストとアレックスのコラボレーションヴィジュアルは東京・渋谷のフラッグシップショップのビルボードにて公開されている。

http://www.acnestudios.com/

Credits


Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.