儚い彫刻の刺繍:Simone Rocha 2018SSコレクション

シンプルな白いドレスから贅を尽くしたバロック調ドレスまで。シモーネ・ロシャのコレクションにみた、彫刻家ルイーズ・ブルジョワの世界観。

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22 September 2017, 6:45am

This article was originally published by i-D UK.

Simone Rochaの2018年春夏コレクションのショーフィナーレでスピーカーから哀愁漂うスキータ・デイヴィスの「この世の果てまで」が流された。この曲はコレクションを完璧に表現していた。溢れ出す感情と剥き出しの感傷が入り混じる——今季Simone Rochaそのものだった。

Simone Rochaのスタイル、テーマ、そしてモチーフには、彫刻家ルイーズ・ブルジョワらしいところがある。強さと脆さ、不気味さと美しさ、威厳と寛容さといった相反する2つの概念が掛け合わされている——。ドレスやチュール、花柄、刺繍、ヴィクトリア朝、小さな真珠など「フェミニン」さに、新しく破壊的な力を織り込むのがシモーネ・ロシャだ。彼女はそうするだけの手さばきの軽さと賢さを備えている。会場は、肖像画や胸像、ステンドグラスの窓が並ぶ、男性的な作りのミドル・テンプル。この空間はロシャのフェミニンさを際立たせていた。

ルイーズ・ブルジョワのモチーフは刺繍に顕著だった。白いドレスに人の輪郭をほどこされた刺繍には、合わせられた大柄のジュエリーと同じく血のように赤い糸が用いられていた。ロシャはこのドレスにほどこされた赤い刺繍を「赤い人形」と呼んでいる。子どもの頃、ふたつ折りにした紙をハサミで切ってひとの形を作ったことのある読者も多いだろうが、あれにそっくりだ。

ブルジョワはよく知っている。刺繍のもつ温かみは、女性尊重のパワーを与えることを。服作りの基本である刺繍には、ときに象徴として見る人を圧倒する。そのシンプルさはどこか家庭的なものを感じさせるも、緻密で単調な作業が長時間続くものでもある。忍耐力を試されると同時に、癒しをもたらす。刺繍にまつわるすべてをシモーネは物語った——針と糸を生地に通し続け、ドレスに人のフォルムを描いたのだ。

刺繍の他にも、彼女の服には贅沢ながらもピュアでシンプルな美の威力がある。それは相反する要素が共存する瞬間に生まれる——そう、光がなければ影も生まれないのだ。目の前を通り過ぎたドレスは、どれも息をのむほどに美しくパワフルで素晴らしかった。シンプルな白いドレスから贅沢なバロック調ドレスまで、幾重にもレイヤーがほどこされた透明のチュールや深みある赤の刺繍、繊細な黄色の花柄など、シモーネが解釈したアイデアが実に巧みに織り込まれていた。これ以上の説明はやめにしよう。

ルイーズ・ブルジョワはアート作品を通して、フロイト心理学的な悪夢や栄光、二重性、逆説、そして多様性が混在する自分自身を表現した——それこそがシモーネの世界の核をなしているのかもしれない。