そばかすの美

写真家ブロック・エルバンクが、世界のそばかす顔を収めたポートレート作品について語る。

by Tish Weinstock
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07 October 2016, 8:20am

写真に収める被写体と同じくらい、ブロック・エルバンク(Brock Elbank)のキャリアはバリエーションに富んでいる。90年代には写真スタジオのメトロ・スタジオで、帽子デザイナーで雑誌編集者でもあった故イザベラ・ブロウ(Isabella Blow)について働いた。その後、シドニーにわたり広告業界で修行を積み、2013年にロンドンに戻ると、友人が進めていたメラノーマ(黒色腫)チャリティプロジェクト『Beard Season』のため、ヒゲをたくわえた男たちばかりを撮る『#Project60』に取り組み始めた。体毛の気高い佇まいを捉えた作風で、おしゃれのためではないヒゲの美しさを浮き彫りにした。彼はこのプロジェクトで大きな成功をおさめた。その人気は留まることを知らず、『#Project60』はロンドンのSomerset Houseで個展として開かれるまでになった。

ヒゲを撮る傍ら、ブロックは数年間にわたり、"人々のアイデンティティ"と"素の美しさ"を結びつける表現を探し求めた。シドニーからロンドンまで、世界中を巡り、彼がたどり着いたのは「そばかす」だった。ブロックが撮り貯めていった、そばかす顔のポートレート作品には、レンズに向けられた力強い視線から様々な物語が伝わってくる。驚いたことに、被写体となった人々の多くは自身のそばかすを欠点だと捉えているそうだ。しかし「不完全なものにこそ美は宿る」というではないか。とすれば、このひとたちこそがこの世の究極の美なのではないだろうか。

そばかすへの愛をアートにしようと考えたきっかけは?
ここ何年は人々の顔や個性を追い続けてきた。視覚的に興味深い人たちをね。独特な個性を持ったひとに、これまでずっと惹かれてきたんだ。だから自然とポートレート作品が多くなった。写真を撮るときは、1対1で作り上げる工程がいいんだ。それは静物作品でも同じことが言えるよ。

あなたにとって「美」とはなんですか?
「美」は僕にとって、とても大きな概念だ。最近撮影をした10歳の男の子ジョッシュ(Josh)は様々な人種のミックスで、髪はくせっ毛の赤毛、顔にはそばかすがたくさんあって、目は緑色なんだけど、人混みでもすごく目を引くんだ。「大人になったらとても個性的でかっこいい男になるだろう」と誰もが確信するような魅力があった。彼に出会うまで、そんな子に出会ったことはなかった。そうした独特なものを持った素晴らしい何かに出会えるということ、それが僕にとっての美かな。

被写体はそれぞれ何を語っているのでしょうか?
撮影をするときは、さりげない表情や絶妙なアングルを探すようにしているんだ。撮り始める前には十分にモデルと会話をする。彼らの生活や人生をまずは知りたいんだ。先日、世界一美しい自転車を作る職人、ヘリオ・アスカリ(Helio Ascari)を撮影する機会があってね。彼はブラジル人なんだけど、僕はそれまでInstagramで長いこと彼の作品をチェックしていた。彼がロンドンに来ていたとき、「撮影をさせてくれないか」とメッセージを送ったんだ。撮影では、彼が南ブラジルでいかに過酷な幼少期を過ごし、20代でモデルになったのかを聞いた。モデルだからカメラの前に立つことには慣れていたけど、作品を説明してくれたときはとてもひたむきな若者の表情と佇まいが垣間見えたよ。その存在感を、僕は写真で捉えたいと思ったんだ。

あなたの作品で被写体がみな一様に肩をさらしていることにはどのような意味があるのでしょうか?
そばかすが物語るメッセージを、服が邪魔してしまうからだよ。服があると写真もうるさくなるしね。それから、僕が惹かれる被写体たちはたいていの場合、肩にもそばかすがあるんだ。

人々はそばかすを隠す傾向にありますが、あなたはそばかすを美しいものとして捉えていますね。それによってそばかすを持った多くの人が自身に肯定的な感情を持てたのではないでしょうか。このように肯定的な影響を彼らに与える結果になると予測していましたか?
僕はこれまでずっとそばかすを美しいものと思ってきた。でもモデルたちは、特に子どもだった頃、自分のそばかすが大嫌いだったと口を揃えて言う。例外なく、「自分のことが嫌いだった」、「学校ではいじめられた」、「だからそばかすを隠さなきゃと思った」、って言うんだ。でも皆、年をとる毎に自分の容姿を受け入れられるようになって、ありのままの自分を好きになっている。僕はただ、世界のあちらこちらにいる美しい人を写真に収めているだけ。12月にはアメリカから女の子が来てくれて、撮影をする予定になっているんだ。いろんな人種の血をひいていて、顔には美しいそばかすが沢山ある女の子。撮影のためにわざわざロンドンまで来てくれるなんて、本当にありがたいことだね。

『Beard Season』ではSomerset Houseで展示されるほどの評価を受けました。そばかすシリーズでも同じくらいの成功を期待していますか?
『Beard Season』には18ヶ月を費やしたんだ。あれはスタイルをベースとしたシリーズじゃなく、黒色腫チャリティのための「愛の労働」で、「黒色腫という病気は罹患を防ぐことができる」ということを啓蒙するための活動だった。一方、そばかすシリーズは、色々な文化や背景において「美しくない」とされる人たちを祝福するための作品なんだ。このシリーズをSomerset Houseのステージで展示することができたら、とても光栄だよ。

良い被写体に最も求められるものは?
うぬぼれていなくて、あまり神経質にならない人かな。リラックスしてもらいたいから、撮影の前に必ず彼らと会話の時間を設けるんだ。

「このシリーズは完結した」と自分でわかるのはどんなときですか?
妻が「もう終わりにしなさい」と言うときだね……。

mrelbank.tumblr.com

Credits


Text Tish Weinstock
Photography Brock Elbank

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