NYに愛された写真家、ビル・カニンガムが死去

青いジャケットに身を包み、自転車で颯爽と街を駆け回ったNYファッションのアイコン、ビル・カニンガムが、87歳で人生の幕を閉じた。

by Blair Cannon
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29 June 2016, 8:20am

40年にわたり、『The New York Times』紙でニューヨークのサイドウォークやアンダーグラウンド、ランウェイを撮り続けた伝説のファッションフォトグラファー、ビル・カニンガム(Bill Cunningham)が、6月25日、87歳でこの世を去った。

いつも自転車にまたがって街を走っていた、写真好きのエキセントリックなビル。ハーバード大学に入学したものの2ヶ月で中退し、ニューヨークでハットデザイナーとなるが、朝鮮戦争が始まり徴兵された。駐屯先のフランスから帰国すると、ビルはファッションフォトグラファーとしての道を歩み始めた。ビルは常に自身の信じるままに写真を撮り、名だたるクライアントからのオファーはことごとく断った。「金を払えばなんでも命令していいと彼らは思っている。そうさせちゃいけない」と訴えていた彼は、その言葉通り、インタビューや授賞式への参加までも丁重に断りつづけた。ビルは、彼を追ったドキュメンタリー映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(2010)すらも観なかったという。『The New York Times』紙に掲載された彼の死亡記事では、撮りたい写真のためなら人の山をよじ登ることも厭わなかったフォトグラファーとして描かれ、追悼された。

ビルが『The New York Times』紙の依頼を引き受けたのは、「健康保険が必要になったから」だったそうだ。同紙にビルが持っていたコーナー「On The Street」に載せる写真を撮るため、ビルは自転車でニューヨーク中を走り回った。そこにはグレタ・ガルボから、大企業で重役補佐を務めながらも四つ袖のコートにサッカーボールハンドバッグをあわせるなど、奇抜な服装でビルを魅了したルイーズ・ドクター(Louise Doktor)まで、ありとあらゆるアイコニックな人物たちが捉えられていた。ビルは、どんなファッションやスタイルも同等に扱った。数々のガラに始まりゴールデン・グローブ授賞式、川久保玲のランウェイショー、アイリス・アプフェルのポートレート、ハーレムのスタイリッシュなキッズに至るまで、彼は分け隔てなく人々の服装に美を見出し、それを写真に収め続けた。アメリカ版『Vogue』編集長アナ・ウィンターが「ビルがいるから私たちは皆ドレスアップするのよ」と言ったのはあまりに有名な話だ。

被写体には、流行のひとや奇抜なひとを好んだビルだが、自身の生活は至ってシンプルだった。毎日、まるで制服のように、フランス労働者ご用達のロイヤルブルーのジャケットとチノに黒いスニーカーを合わせたスタイルで出かけ(皮肉なことに、彼のこのスタイルはアイコニックなコーディネートとして定着した)、毎朝、ミッドタウンにあるデリで同じ朝食を食べた。ビルは、真にオリジナルで個性的なニューヨーカーだった(2009年には、NYに多大な貢献した人物に与えられる「Living Landmark:生ける史跡」にも選出されている)。そして、なによりファッションの歓びを思い出させてくれる偉大な人物だった。ファッションの世界に、そして世界中のクリエイターたちに大きく貢献した唯一無二のフォトグラファー、ビル・カニンガムを、ここに讃えたい。

Credits


Text Blair Cannon
Photography Paul Stein via Flickr

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