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【インタビュー】K-POPに自分だけのジャンルを確立したソンミ

2017年にソロ活動をはじめ、今年3月には最新シングル「Noir」をリリースした元Wonder Girlsのソンミ。軽妙な言葉遊び、愛らしい演技、率直な感情表現で、オーディエンスを魅了してやまない彼女が、自分だけの色を表現することについて語る。

by Lavanya Singh ; translated by Nozomi Otaki
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23 May 2019, 2:43am

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ソンミについて語るには、まず色について語らなければならない。色を愛してやまない彼女は、作品に豊かな色彩を取り入れ、特にひとそれぞれのパーソナリティを表現するものとして、色に抽象的な意味を見出している。彼女にとって、自分だけの色を探ることは、己を知るうえでもっとも大切なテーマであり、常に創作プロセスの大部分を占めている。「自分がもつ様々な色をどのようにひも解いて表現するべきか、まだ迷っています。でも、とにかくいろんな色を見せたい、という想いはあります」

しかし、この言葉をそのまま受け取るべきではない。ソンミのソロ曲のMVをひと目見れば、それぞれの〈色〉が感情を生々しく、凝縮して表現していることがすぐにわかる。作中に散りばめられた色によって、彼女の音楽は複雑さを増す。彼女は色を通して自らと対話することで、自分の心をより深く理解するのだ。

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たとえば、今年3月にリリースされた「Noir」。本作のMVには、〈ノワール(黒)〉というタイトルには矛盾するような、ビビッドな赤や黄色のハート型キャンディが登場する。ソンミ自身も月光のようなシルバーのドレスを身にまとい、ネットでの人気が高まるにつれて自分を演出することに囚われていく主人公を演じている。この作品が描くのは、曖昧だが確かに存在する、ネットの潜在的な恐怖だ。濃いイエローやネオングリーンの背景の前で、彼女は棘だらけのマットレスに飛びこみ、ゲームで指を切り落とし、ずぶ濡れになって送電線を掲げてみせる。〈いいね〉の数が増えるにつれて正気を失っていく姿を、ソンミは〈現代の闇〉と称した。

「〈いいね〉ほしさに、とんでもなく危険な写真を撮ろうとして命を落とすひとが年々増えている、という記事を読みました」と彼女は言う。「それにもかかわらず、SNSの影響力はどんどん大きくなっていく。これはまさに〈闇〉だと思います」

彼女の言葉どおり、このMVには孤独が満ちている。画面のなかのソンミは、しきりに〈いいね〉〈シェア〉〈チャンネル登録〉の文字を指さす。彼女以外の誰かの存在を示すのは、画面に浮かぶハートの数だけ。現代のネット体験は、コミュニティとは名ばかりの底なしの虚無に話しかけるようなものだ。

「真っ暗で、不吉で、憂鬱な気分になる。ノワールは暗闇です。でもSNSの世界はすごくカラフルで、多様性に満ちています」とソンミ。「この対比について考えれば考えるほど、SNSの皮肉を感じます」

もちろん、ソンミは自分が韓国を代表するポップスターであることを忘れてはいない。「現実を批判するつもりはまったくありません」と彼女は断言する。「エンターテイナーは、オーディエンスからの注目があってこその存在。この曲には、それを自嘲するような意味合いもあります」

彼女が今、このタイミングで「Noir」をリリースしたのには理由がある。12年にわたる芸能生活を送ってきたソンミは、K-POP業界の内情を知り尽くしている。2007年、彼女はJYPエンターテインメント所属の5人組アイドルグループ、Wonder Girlsのメンバーとしてデビュー。レトロなサウンドやファッションをトレードマークとする彼女たちは、2000年代後半にもっとも成功したK-POPガールズグループのひとつだ。2009年には、シングル「Nobody」の英語バージョンで、ビルボード・ホット100へのランクインというK-POP史上初の快挙を果たす。

グループ活動のかたわら、ソロデビューを果たしたソンミは、ダンスホールやエレクトロニックミュージック的な路線へと移行するが、その後も80年代のシンセポップからインスパイアされた楽曲をつくり続けている。これはWonder Girlsの音楽やパフォーマンスから受けた影響だ、と彼女はいう。「Wonder Girlsで活動していたころ、1970〜90年代の曲をよく聴いていました。特に魅力を感じたのが、80年代のサウンドです」

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その後、ソンミは大学進学のためしばらく芸能界を離れるが、2014年、ソロアルバムをリリース。2017年のWonder Girls解散後、彼女は事務所を移籍し、本格的にソロ活動を始める。ソンミが新たに手にした自由は、諸刃の剣だった。制作プロセスに専念できる愉しみもあるいっぽう、活動を始める前にアーティストとしての方向性を定めなければ、というプレッシャーもあった。2018年、『High Cut』誌のインタビューで、彼女は事務所移籍後初となるソロシングル「Gashina」の構想を練っていた時期を振り返り、本当の自分を見つけられたのはソロ活動を始めてからだった、と明かしている。

「自分がどんな人間かを知るのはとても大切なこと。以前は、自分の感情を抑えこんでいました」と彼女は、自分だけの色を探るプロセスについて語った。「自分に正直になることにしたんです。カメラの前で自分の感情を自由に表現する。私がオーディエンスに観せたいもの、表現したいものをはっきりと示す。顔をしかめたり、笑ったり、泣いたり、怒ったり、悪態をついたり、変顔をしたり。それを全部ひっくるめたのがソンミなんです」

「Gashina」は、彼女の長年にわたる自省の集大成だった。力強く、大胆で、ワイルドな自分を発見したことで、彼女は自らを縛る鎖から解放されたのだ。ソンミは自らを咲き誇る花にたとえ、まったく別のアーティストとして生まれ変わったことを明示すると同時に、K-POP界でもっとも多作な若い女性アーティストの仲間入りを果たした。彼女は当時を振り返り、「Gashina」で自身の色を大胆に表現することに「まったく不安はなかった」という。「誰かの二番煎じにはなりたくなかった。〈ソンミ〉という新たなジャンルを確立したかったんです」

2018年、彼女の移籍後初となるミニアルバム『WARNING』がリリースされた。恋人と別れたあと、失恋から立ち直るまでを綴ったパーソナルな日記のような作品だ。恋い焦がれる想いを歌う「Secret Tape」、本当の自分を勝ちとった歓びを歌う「Gashina」を通して、ソンミは自身のジャンルを確立し、軽妙な言葉遊び、愛らしい演技、率直な感情表現というトレードマークを築きあげた。

現在、欧米を含むワールドツアー真っ只中の彼女によると、今ツアーを敢行した主な理由は「オーディエンスの好奇心を掻き立てるため」だという。つまり、彼女が異なる感情を行き来して表現し続けるのには、目的がある。それは内なる自己の様々な面、彼女自身の言葉を借りれば「ソンミというアーティストのアイデンティティ」と向き合うことだ。

「内なる自分と向き合うというテーマについて考えたとき、それは自分が常にやろうとしてきたことだ、と気づきました。『Gashina』をリリースして以来、ずっと大切にしてきたことです」と彼女は明言する。「この曲は、〈あなたは誰?〉という問いに対する、私のひとつの答えなんです」

This article originally appeared on i-D US.