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      fashion i-D Staff 19 June, 2017

      「敏感であるだけじゃ不十分─イキイキと生をまっとうせよ」ロンドン・ファッション・ウィーク メンズ day2

      底抜けに明るく放蕩の世界を描くチャールズ・ジェフリーのLOVERBOYから、黒人のクィア文化を詩的に描いたウェールズ・ボナーまで、ロンドン・ファッション・ウィークの2日目は、性と自由、そして政治への楽観視を祝福した1日となった。

      「敏感であるだけじゃ不十分─イキイキと生をまっとうせよ」ロンドン・ファッション・ウィーク メンズ day2 「敏感であるだけじゃ不十分─イキイキと生をまっとうせよ」ロンドン・ファッション・ウィーク メンズ day2 「敏感であるだけじゃ不十分─イキイキと生をまっとうせよ」ロンドン・ファッション・ウィーク メンズ day2
      Charles Jeffrey LOVERBOY spring/summer 18

      チャールズ・ジェフリー LOVERBOY

      チャールズ・ジェフリー(Charles Jeffrey)によるLOVERBOYの単独ショーは、「素晴らしい」のひと言に尽きた。ショーはエネルギーと衝撃のアイデアに溢れていた。それこそは、不穏な政治情勢にある今のような状況において、若手デザイナーたちに期待されるものだ。

      バロック調のショルダーやウエストのディテールに、ハイウエストのパンツを合わせ、ほかにもなで肩を描くショルダーラインとプラットフォーム・シューズが権力を主張し、アンリ・マティスのプリントが描かれたラッパ袖や、カラフルなジャンパーも登場するなど、コレクションに見られたデザインの多くは、「チャールズ・ジェフリーならでは」と表現するしかない独自の世界観に溢れていた。そして、ストライプを配したロングのジャンパーが、茶色の大きなレザーベルトでまとめられるなど、スタイリングも完璧だった。

      Charles Jeffrey LOVERBOY spring/summer 18

      ランウェイ・ショーは、プレスにみせるだけでなく、バイヤーたちにコレクションピースを披露する場でもある。そこには商売がからんでくる。フディやトップスにはスポーツウェアの要素が取り入れられ、そこに商業デザイナーとしてのジェフリーの成長がうかがえた。コレクションには、LOVERBOYの歯に衣着せぬ主張の姿勢がうかがえるTシャツが多く登場した。ジェフリーはこれまでも一貫して、現代社会を讃えつつも批判する姿勢を大切にしてきた。Tシャツには、「KIDS HIGH ON DRINK AND GRUGS(アルコールとドラッグでハイになった子どもたち)」などと書かれていた。

      ジェフリーのそんな服が、ゲイリー・カード(Gary Card)の舞台美術とテオ・アダムズ・カンパニーによる振り付けと相まって、素晴らしいショーを作り出していた。踊りありパフォーマンスあり、そして最後には雄叫びあり——コラボ精神と才能、そして明確なヴィジョンが会場にいたもの全員を鼓舞してくれた。

      文:ボヤーナ・コザレウィッチ(Bojana Kozarevic)

      Wales Bonner spring/summer 18

      ウェールズ・ボナー

      LVMHプライズを受賞して一躍注目を集めるようになったウェールズ・ボナー。ファッション・ウィークにおいて男たちの姿は、現れては瞬く間に消えていき、記憶にも残りにくい。しかし、ボナーは時空と文化を自由に行き来し、そこに男たちを描く。そして、観客はボナーが描くその世界に酔いしれる。アーティスト、民族学者、詩人、夢想家、そして学者としての視点と表現力を持ったファッション・デザイナーであるボナー。彼女はその知識と技術、そしてセンスと表現力をもって、各々の文化にある独自のバックグラウンドと表現を祝福し、真相を暴き、そして問う。彼女が作り出すコレクションは、どれも「既存のものの可能性を広げる」というテーマをベースにしている。彼女はこれまで、ファッションの世界がもってきたありふれた"黒人男性像"を覆し、彼女が知る本当の黒人男性アイデンティティを讃えてきた。「男性間の関係とセクシュアリティについて、あらゆる観点から考えてきた」と、ボナーは2018年春夏コレクションが行われたショー会場で話してくれた。「作家ヒルトン・アルス(Hilton Als)が書いたエッセイ『James Baldwin/Jim Brown and the Children』を読んで、わたしの視点は定まった。アルスの視点から世界を見る——それが今回のコレクションのテーマとなりました」。著作のなかで、アルスは主人公ボールドウィンを取り巻くクィアの世界を描いていた。ショーのプレス用資料には、この本からの引用が大々的に用いられていた。ショーは、MJ・ハーパー(MJ Harper)によって振り付けがなされ、会場の小ささはランウェイをすれ違うモデルの肌が触れ合うほどの親密さを生んでいた。客席が用意されていない観客スペースも、モデルたちに手が届くほどの距離にあった。めまぐるしく繰り広げられるファッション・ウィークにあって、ボナーが招き入れてくれた世界と物語は、束の間の静かなひと時となった。

      Wales Bonner spring/summer 18

      「この世界における1日というものについて考えました。功利主義的デイウェアの制服に始まり、そこへ、もうひとりの自分、もうひとつの時間軸を示唆する世界を描き、ドレスアップして出かける夜が訪れ、最後に、眠らなかった夜の終わりに『何かを得たような気がする』と感じる悟りを表現したルックを配しました」。官能性ではなく、性そのものを探求したウェールズ・ボナーのコレクションからは宝飾や装飾がそぎ落とされ、かつてないほどの厳格さが見られた。「世の中では知られていないけれど、わたしはよく知っている——そういう類いの"男性らしさ"がある。それを見せたかった。ショーの振り付けを担当してくれたMJは、その世界観にとても共鳴してくれました。このコレクションは、わたしを触発し続けてくれる実在の男性たちをテーマにしています」。そこに描かれた物語は魅惑的で、人物像はどれも期待通りの奥行きを持っていた。そして、勇敢なまでに削ぎ落とされたミニマリズムの向こうには、徹底したテーラリングがあった。ウェールズ・ボナーは過去と現在に触発されてものづくりをするデザイナーだ。しかし、彼女が作り出すコレクションは、明日のラグジュアリーへと急激な進化を遂げている。

      文:スティーヴ・ソルター(Steve Salter)

      Matthew Miller spring/summer 18

      マシュー・ミラー

      前倒し総選挙に揺れるイギリスで若者たちが立ち上がるなか、メンズのロンドン・ファッション・ウィークにはその余波が如実に感じられた。デザイナーのマシュー・ミラー(Matthew Miller)は、自身の最新コレクションで、これまでに引き続き"ジェネレーションZ"世代を讃えていた。「僕はとても敏感なデザイナーで、現在の情勢に大きく揺り動かされてきた。影響されないなんて無理だよ」とミラーは話す。数シーズンにわたり、ミラーはロンドンきっての政治的デザイナーとして、卑下され、忘れられ、疎外された若者世代のための服を作り続けてきた。しかし、時代は変わったようだ。2018年春夏コレクションとしてミラーが作り出したのは、戦いのための軍服のようものだった。

      Matthew Miller spring/summer 18

      「今回のコレクションは、政治に関わっていく若者世代をテーマにしている。僕が見るかぎり、現代の若者は傷つくことも恐れず、愛を恐れてもいない。彼らが求めるのは混じり気のない真の自由。社会に傷つけられてきた彼らは、自分のあるべき真の姿を主張し、求めて然るべきものを求めて、声高に叫んでいる」。ファッション界はストリートウェアへと変動してきたが、ミラーはそこであえてテーラリングの追及へと突き進んできた。その理由を、ミラーは「テーラリングという贅沢な伝統を、若者らしく解釈して形に落とし込むほうが、よほど難しく、楽しいから」と語った。若者たちが立ち上がり、意思を声高に叫ぶ一方で、ミラーもまた成熟したデザイナーへと成長を遂げている。

      文:スティーヴ・ソルター

      Per Göttesson spring/summer 18

      MAN

      イーストエンド地区の賑やかなブリックレーン通りにある<Truman Brewery>。その上階にて、デザイナー育成の権威となっているFashion Eastが、メンズウェアのグループ展MANを開催した。まずは、今回の2018年春夏シーズンで3季目となるPer Gottessonのショーが披露された。昨シーズンは、汗に濡れた胸や、体にぴったりと張り付くフリル付きトップス、オーバーサイズのデニム、タータンチェック柄のパジャマなど、夢遊病の世界を描き、我々を魅了してくれた。今季の彼はロマンチックな世界を追及し、ショーに登場した爽やかな男性モデルたちは、シャーベットレモンやパウダーブルー、ピーチ、ホットピンクなど夏らしいカラーに身を包んでランウェイを歩いた。インディゴやピンクのデニムで作られたロングコートの下には、メッシュのタンクトップや、極太のプリーツパンツなどが合わせられていた。プリーツパンツは、オーバーウエストを長いベルトでまとめ、そこに余った生地が腰から垂れ下がり、スニーカーをはいた足元で大きく折り返されてドレープを作るという、マルタン・マルジェラがかつて見せたような世界観の作品となった。オーバーサイズのシャツはボタンが開けられて胸をあらわにし、スリムなジョガーパンツや、表裏が逆になってジッパーや白いポケットのライニングがプリントされている様があらわになったジーンズと合わせられた。ジュエリー・デザイナーのHusam El Odehとのコラボレーションにより、タバコの吸殻やライター、陶器の欠片など、なんの変哲もない物体が金色のケースに収められてブローチとして用いられ、またモデルたちの首には貝殻のネックレスが、上腕にはデリケートなチェーンが配されていた。

      Art School spring/summer 18

      次に披露されたのは、Art Schoolのコレクションだった。歓びにおどる世界観のなか、モデルたちはそれぞれの個性が見事に体現された"クィアのクチュール"をまとって登場、そこにはあらゆる体型やサイズ、肌の色、ジェンダーが美しく世界の調和を奏でていた。レースアップが軽やかで、装飾たっぷりなドレスの数々や、シルキーなブラウス、宝石で装飾されたブラウスと合わせられたテーラードスーツ、絹やベルベットで作られたストラップドレスなど、ロマンチックな雰囲気が溢れるコレクションとなった。ピンクのコーデュロイで作られたフリル付きチューブトップには、タイとそれにマッチしたアームレットが合わせられ、下にはエメラルドグリーンのカーゴパンツが配されていた。そして、パフォーマンス・アーティストのジャック・パワーズ(Jack Powers)は、ボタンアップが配されたフレアパンツにライダースジャケットをまとってランウェイを歩いた。

      Rottingdean Bazaar spring/summer 18

      2018年春夏シーズンのFashion East MANを締めくくったのは、デザイナーのジェイムズ・テーセウス・バックとルーク・ブルックスによるRottingdean Bazaarだった。ふたりは、レーベル立ち上げから一貫して打ち出してきたシュールなユーモアをもって、今季Fashion Eastに初参加した。果てなき独創性をいかんなく発揮するふたりは、これまでもTシャツにタイツやソックスを熱接着するなどしてきたが、今回はそんな"アイテム・オン・アイテム"のアイデアでさらなる世界観を見せつけた。また、DIYの感性を大切にしている彼ららしく、工具までをも服に取り付けていた。ショーは、つい先日、雑誌『Man About Town』で表紙を飾ったばかりのハリー・フリーガード(Harry Freegard)が、ホワイトジーンズをかたどった超軽量ポリウレタンを前面に貼り付けた、オフショルダーの黒のガウン姿でランウェイに登場し、オープニングを飾った。そしてクロージングには、アーティストのデヴィッド・ホイル(David Hoyle)が、農具のピッチフォークをポリウレタンで実寸大に再現したものを熱接着した、長い着丈のチュニックTシャツを着て登場。ショーには風船で作った胸、ペンス硬貨、金色の額縁(その中には裸の胸が見えるという仕掛け)、潰された缶、かなづちが熱接着されたシンプルな黒Tシャツやスウェットシャツ、スウェットパンツ、ショーツなどが見られた。

      Credits

      Photography Mitchell Sams

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      Topics:fashion, fashion week, london fashion week mens, spring/summer 18, charles jeffrey loverboy, matthew miller, wales bonner, man

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