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「偉大なる都市・東京」:東京ファッションウィーク2020年春夏

楽天による第1回目の東京ファッションウィークと、いくつかのオフスケジュールショーをスローバック。TOMO KOIZUMIからKOZABUROとLANDLORDの合同ショー、Children of the discordanceまで。

by Tatsuya Yamaguchi
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07 November 2019, 11:05am

LANDLORD Photography Ryo Suzuki

10月14日、台風19号が過ぎ去ったあとの東京は快晴だった。しかし、日本各地の被災に関する報道が、日を追うごとに耳に入ってくる。楽天が冠スポンサーとなった新生、東京ファッションウィーク(Rakuten Fashion Week TOKYO)に期待感を弾ませても、胸を痛めるニュースがなかなか頭から離れなかった。それでも悲観的になりすぎず、ファッションの力を肌で感じることは幸運な瞬間だといっていいはずだ。

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MISTERGENTLEMAN
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MISTERGENTLEMAN

ショー演出を急きょ変更したというMISTERGENTLEMANのオオスミタケシと吉井雄一も、きっと似た心持ちだったのかもしれない。スタンダードなメンズ服のコードを差し替えながら違和感をもたらすデザインは鋭さを増し、トランスペアレントな素材使い、スリットが入ったジャケット、スリーブレスのブレザー、腕や太ももに装着するミニバッグのスタイルが続く。そして、フィナーレは10色のタイダイコレクションで構成された壮観な20ルック。ショーノートには、「ファッションでしか表現することができないポジティブなパワーを」と記されていた。

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Anyango Maphinga / FACE.A-J

アフリカと日本のファッションをつなぐ新プロジェクト「FACE.A-J」。参加した6組のブランドの中でも、LVMHプライズ2019のグランプリ、Thebe Maguguがアフリカ伝統の柄をのせたエレガントなドレス、2016年にイエールモード写真フェスティバルのファション部門でグランプリ獲得したWataru Tominagaのチアフルなテキスタイルとグラフィックには心が躍った。

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Wataru Tominaga / FACE.A-J
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Thebe Magugu / FACE.A-J

いま、ファッション特有の楽観主義的な多幸感を表現するデザイナーにTOMO KOIZUMIの右に出るものはいない。「自分のアティチュードを持っている表現者と自分の洋服がどう共鳴していくかに興味があるんです」とかつてi-Dに語ったトモ。これを体現するかのようなストーリー調の凱旋ショーは、美しい高揚感に満ちていた。

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TOMO KOIZUMI

出演者は、冨永愛、美佳、Kōki,、福士リナら総勢10名。あふれんばかりのフリルとリボンでつくられたルックごとに、音と光の演出がガラリと変わる円形劇場に、日本を代表するモデルと耽美的なドレスの調和、何よりもインディビジュアリティを賛美する夢のような時間が流れていた。

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HYKE Photography Taro Mizutani (bNm)

比類ないモダニティを掲げて東京のエレガンスを牽引するのは、HYKEだ。ヘリテージやミリタリーユニフォームが持つ男性的な様式美の細部をすくい上げるように解体し、凛としたフェミニニティに変換する手法は健在。そこに、軽やかで淡いピンクやブルー、ストライプパターンを加えたことでより幅広い女性に向けたコレクションを披露した。adidasとの新しいコラボも発表され、確実に、次なるフィールドに向かっている。

悲惨な爪痕を残す強力な台風となった原因のひとつに、温暖化の影響が少なからずあると聞いた。地球規模の課題に東京で発表するデザイナーはどんなリアクションをするのか。例えば、リサイクル素材を活用するNON TOKYOによるアップサイクリングなリメイクシューズもそのひとつだった。

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Non Tokyo Photography Sio Yoshida
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Non Tokyo Photography Sio Yoshida

台風の関東上陸直前にショーを行ったmalamuteは、布地のカットロスがでない無縫製技術にフォーカスをあてた。国内の職人と高度なニットウェアを作り続けてきた小高真理らしい手法。大切なことは、目には見えにくいところにあるのかもしれない。

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malamute Photography Shun Komiyama

「(倫理的に)無茶なことはやらない」と断言する志鎌英明によるChildren of the discordanceのショーは、まぎれもなく東コレのハイライトのひとつだった。デザインの中核であるバンダナやシルクスカーフなどのヴィンテージを、量産性が担保できるまで時間をかけて集め続け、パッチワークなどのリメイク手法で新品と織り交ぜていく。ミリタリーや民族衣装とのつながりが、今季のトーンセットだ。

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Children of the discordance

素材のフェアトレードを継続しながら、半年間のサイクルでなく中長期的な視野でコレクションを構築していくアティチュードは、国内外で存在感を放っている。ブランド名が示す通り、「他人と調和しない」さまざまなタイプの33人の男たちが白熱灯に照らされながら飄々と歩く姿が忘れがたいほどクールだった。

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Children of the discordance

「水鏡」をテーマにしたNobuyuki Matsuiは、買い物客が行き交うヒカリエのオープンスペースに刺激的なインスタレーション空間をつくりあげた(誰でも足を踏み入れることができた)。廃棄処分予定だった衣類を回収し、藍に染め、手作業で縫製したカーペットを床一面に広げ、無数のベルを天井から吊るした。

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Nobuyuki Matsui Photography Tetsuya Maehara
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Nobuyuki Matsui Photography Tetsuya Maehara

「一着を長く大切に着てほしい」と願う松井信之は、一点物のガラスボタンを含む、テーラリングを基本にしたコレクションを発表。服を買い、着る、あるいは捨てることについての問題提起が内包したスペースは、ゲストの中にたしかなざわめきを生み出していた。

2年ぶりのショーを終えたMIKIO SAKABEの坂部三樹郎が口にした「ファッションの解釈の仕方を変えなければ、新しいファッションは生まれてこない」というコメントは、多くの業界人にとってクリティカルな問いかけでもあった。

16名のモデルが同じルートを繰り返し歩き続け、なんども視界を通り過ぎる。いやが応にもインプット(印象)の濃度は高まっていく。「地球と人間の接点である足元を起点にしたファッションをつくった」と話を続けた。

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MIKIO SAKABE

尖った耳、特殊な眼の色が異星人的な風貌もいれば、街を歩いていそうな一見普通のモデルもいる。「LEAP GRAVITY」がコンセプトの立体的なアウトソールが特徴のフットウェアgroundsを履く彼女たちが共生する世界が、ぼんやりと脳裏に描かれていく。シリコンの人工肌にも見える半透明の極薄ナイロンをメインマテリアルにしたシンプルな服。このショーは、「地球で生きている」という人類の本質を、「解釈」の俎上に引き上げるものだったのかもしれないと夢想した。「表現」と同じく、解釈は自由でひらかれている。

スタイリストのロッタ・ヴォルコヴァとつくり上げたJenny Faxのショーは、高田馬場にあるゲームセンター・ミカドが舞台。80、90年代のビデオゲームが稼働しているゲーマーの聖地のような場所だ。ノスタルジックな、人間の痕跡がいたるところから匂ってくる。

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Jenny Fax

ファーストルックは意外にも、フォーマルでシックなダブルブレストジャケットとドロワーズの黒いセットアップ。背中にはフリルでトリミングしたようなカットアウトで、肌がのぞく。この少しく抑制されたテンションが、今シーズンの“甘さ(ガーリー)”への招待だった。

下着のディテール、大げさなラッフル、懐かしげな花柄のプリントやレース、重厚なカーテンのヒダのようなフリルやケープ。ずり落ちたようにみえるスカートや、トイレットペーパードレス。さらに、ケーキを頬張ったあとの口元についたクリーム、可愛らしく装飾されたギブスには「生」の感触が残っている。ちょっとクレイジーな可愛らしさ。あなたの内面にも顔を出すかもしれない少女の表情だ。

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BODYSONG.

インプロビゼーション(即興)をキーワードに〈ずっと真夜中でいいのに。〉のライブパフォーマンスと不可分の関係にあったBODYSONG.のショーは躍動し、BALMUNGのハチが、自身の生まれ年である「1985」をタイトルに開いたセルフイントロダクション的なショー会場には、彼自身の少年時代の記憶が影を落としていた。両者のクリエーションは、これからの東京のスタイルを牽引していく気がしてならない。

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BALMUNG Photography kon

「ステレオタイプな日本的要素をそれぞれの手法で解体、再構築することで創り上げられたショーを偉大なる都市・東京に捧げます」。このステイトメントを打ち出した赤坂公三郎(KOZABURO)と川西遼平(LANDLORD)は、東京ファッションウィーク中、もっとも事件的な一夜を創造した。

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KOZABURO
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KOZABURO

掲げたタイトルは「The Great City Tokyo」。場所は渋谷・SOUND MUSEUM VISION。ステージには枯山水。センセーショナルな合同ショーは、和太鼓集団・鬼太鼓座のパフォーマンスで幕を上げた。

『Land of the Setting Sun(夕日出ずる国)』と題されたKOZABUROのコレクションには、シグネチャである3Dブーツカットのデニムをはじめ、シャープなセットアップに身を包んだ勇壮な男たちがいた。漢字の刺繍、太極図を配したロングコートなどには、このブランドにしかないオリエンタリズムがある。

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KOZABURO

LANDLORDのコレクションピースには血飛沫を思わせる山口歴によるアクティブなペイント。可愛らしいがおどろおどろしくもあるアクセサリー。デザイナーにとって「最もカオティックに映っていた」という90年代の原宿——雑誌『FRUiTS』のページに残る狂気的なファッションのうねりが目の前を疾走していく。

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LANDLORD Photography Hikaru Yoshida

ともにニューヨークを拠点とするふたりの日本人デザイナーが「日本の外側」から「日本」をみる試みは、忘却されがちなものごとを発掘しているようでもあった。まるで考古学のようなアプローチだが、アンチノスタルジー。自分たちが足をついている場所の真価を再確認するなら、「東京」の眼を覚ますくらい過剰なくらいがちょうどいい。

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