なぜダヴィデ・ソレンティの写真は今でもユースに支持されるのか?

〈ヘロイン・シック〉の生みの親であり、夭折した写真家ダヴィデ・ソレンティの生涯を記録したドキュメンタリー『See Know Evil』が公開された。監督のチャーリー・カーランが、ダヴィデの姪であるグレイ・ソレンティと、彼の写真と生き方を語りあった。ダヴィデの未発表作品と合わせてご覧あれ。

by Ryan White; translated by Ai Nakayama
|
07 January 2020, 9:18am

写真家ダヴィデ・ソレンティについての説明など、不要なひともいるだろう。彼の作品は、ルールが常に移り変わっていた時代のファッション業界に大きな影響を与えた。いっぽう、彼が生きた時代は、より華やかで健全な現代のファッション業界からは隔絶していると考える向きもあるだろう。

1976年、ファッションフォトグラファーの家系に生まれたダヴィデはニューヨークで育ち、そのカルチャーに深く関わっているひとにだけ与えられた洞察力で、マンハッタンのヒリヒリするような荒削りのユースカルチャー、そこで起きる衝突や緊張を仔細に記録した。不鮮明で理性をかなぐり捨てたような、虚無的なダヴィデの作品は、1990年代中頃のファッション業界を揺るがす震源地となり、ダヴィデはポートレイトやキャンペーン撮影に抜擢されるようになる。彼は血液の希少疾患とヘロイン使用の合併症で20歳で亡くなったが、それは〈ヘロイン・シック〉スタイルの危険性にメディアや政治家が気づき始めたタイミングと重なり、彼の死はヘロイン・シックがもたらす悲惨な末路の象徴となった。

1571912290875-BOX_37_170219_D1_0023

2019年の夏、ニューヨークで、短いキャリアのなかで撮影されたダヴィデの膨大な作品を収集した初の回顧展が開催された。また、ドキュメンタリー映画『See Know Evil』では、彼の人生がかつてないほど深掘りされている。

数多くの彼の未公開作品は、20年経った今見ても、独特のスタイルが表れていて、当時と変わらず実に刺激的で美しい。彼の母フランチェスカ・ソレンティと友人ジェイド・ベローがキュレーションし〈Our Beutyfull Future〉と題された本展は、ダヴィデを持病やドラッグがもたらした環境の犠牲者としてではなく、90年代に活躍した、才能ある若き写真家のひとりとして提示する。

ダヴィデの兄弟マリオの娘、すなわちダヴィデにとって姪に当たるグレイ・ソレンティとダヴィデには、明確な共通点がある。彼らはふたりとも、ニューヨークという街の鼓動を打つ〈心臓〉と呼ぶべき若者たちをとらえる作品を撮っているのだ。スタイルやアプローチはそれぞれ異なるが、そのエネルギーと活気は、20年という時を超える。結局、「それって全部、たむろしてるNYCのキッズがやってること。これからも変わらない」とグレイはいう。

『See Know Evil』の監督チャーリー・カーランと、今は亡きおじの才能を誰よりも強く信じ、愛するグレイが、ダヴィデのレガシーを語る。

1571912364629-Black_Polaroid_Binder-DS162

チャーリー:やあグレイ、元気だった?

グレイ:元気だったよ。今日、父と初めてコラボレーションしたドゥ・ラ・メールのキャンペーンが公開されたの。コラボは楽しかった。このプロジェクトには1年半取り組んでたから、ようやく公開されてうれしい。

チャーリー:見たよ、素晴らしかったね。

グレイ:ありがとう。それ以外だと今はニューヨークに帰ってきて、ドキュメンタリーに取りかかってるところ。でも割とまったりしてる。

チャーリー:ダヴィデのドキュメンタリー『See Know Evil』が昨日iTunesで公開されたんだ。このタイミングで君と話せてうれしいよ。ダヴィデの作品について、新しい世代のクリエイターたちにとって、彼の作品に触れることがどんな意味をもつかを話したい。僕たちが最後に会ったのは、ダヴィデの初のギャラリー展〈Our Beutyfull Future〉だったよね。会場には、おなじみのニューヨークの重鎮たちだけじゃなく、若い子たちがたくさんいて僕はすごく驚いたんだけど、君や君の友人たちにとって、あの展覧会はどうだった?

グレイ:私や私の家族にとっては、すごく特別な瞬間だった。だって、ダヴィデの作品が展示されるなんて、20年で初めてだったから。友人たちも、ダヴィデの作品を観ていろんなことを感じたみたい。ダヴィデの作品って、観るひと全員に何かを訴えかけるよね。あなたのドキュメンタリーが公開されたときも、友人全員呼んで観てもらったの。きっとみんなダヴィデに、あるいは彼の写真への情熱や、チームのメンバー、生活、アート、成長における苦しみに共感するだろうと思ったから。NYCのキッズにとっては、すべてが光の速さで進む。もちろん今は、90年代のときとは様変わりしたけど、NYCに生きるキッズは全然変わってない。映像に映っているのは私たちであり、今起きていることと同じ。みんなにあの頃の時代、あの頃のNYCの景色、グラフィティを描く様子、写真を撮る様子、友達とつるむ様子を観て、感じてほしかった。みんなには、「ねえウソでしょ、あなたのおじさんってArgueSKEなの?」っていわれたよ。「最高にシックなスタイルだよね」って。私の友達はみんなグラフィティやアートに囲まれて育ってるし、いろんな面で似てる。

ダヴィデの写真や今回のドキュメンタリーを観て、現代の、私たちのユースカルチャーを映しているなと私は思った。写真でもドキュメンタリーでも、ダヴィデは、自らの人生や友人を記録し、アートや音楽をつくり、みんなといっしょに笑ってる。それって全部、たむろしてるNYCのキッズがやってること。これからも変わらない。ずっと同じ。単なる進化なんだと思う。時代は移り変わり、世界はどんどん進歩して、テクノロジーは私たちのコミュニケーション方法を変えた。街も変わって、昔ほどヒリヒリしてない。いろんな物事が失われたし、街の気概みたいなものも失われたのかも。でもやっぱり今でも、ドロドロした部分は残ってる。

1571912451807-BOX_20-PRINT_1OF2
1571912488466-BOX_20-PRINT_2OF2

私も友達も、この街に忠実であり続けてる。いっしょにつるんで、写真を撮って、アート作品をつくって、ロウアーイーストサイドの小さなギャラリーで展覧会を開いてる。誰かの家で料理したり、踊ったりしてる。私たちは立ち止まらない。規範には従わず、アートを支え、お互いを支え合ってる。NYCは私たちの遊び場。ここで育つことができた私たちは、すごくラッキーだと思う。だから、ドキュメンタリーを観に来て、と私が誘ったとき、みんなすごく喜んでた。みんな、ダヴィデの作品からはインスパイアされてきたし、90年代っていう時代にも関心があったし。でももちろん、時代も環境も、今とは違うことも理解してる。社会的にも経済的にも、政治や人種も。

ダヴィデの展覧会は本当に素晴らしかった。みんな来てくれて、会場は満員だった。家族、友達、オールドスクールなニューヨーカーたち。ダヴィデについて話を聞いたことのあるひとたちや、彼の作品のファン。道にまでひとが溢れてた。誰かと連れ立ってきたり、あるいは初対面のひとと話したり、昔の知り合いと再会したり。まさにニューヨークらしい場だった。みんながダヴィデの話を語り合ってて、愛を感じた。ダヴィデがいたらきっとよろこんでただろうな。彼の心はあの場にいたと思う。こんなチャンスを逃すはずないもん。あの夜の空気には、何か特別なものがあった。ダヴィデの魔法かも。

チャーリー:アートを制作するということは、何か特別だと思う? 昔と今と、変わらないことは?

グレイ:アートはむき出しで、純粋。私たちはただ、真実を伝えようとしているだけ。つまりアート作品というのは、絵画であろうと、写真であろうと、音楽、ヴィジュアルアート、政治であろうと、その伝えようとしている真実を反映している。私たちは真実を知る時代に生きていると思う。みんな、強欲やネガティブな在り方にうんざりしているから、とにかく今は、変化と、それに対するコミットメントが必要。保守派に欠けているのはそれ。i-Dと仕事をするのが素晴らしいのは、i-Dは私たちといっしょに変化しているから。前進することに積極的で、こんなどしゃ降りの世の中に生きる若者に、プラットフォームと発信の場を与えてくれている。i-D編集長のアラステア(・マッキム)が〈The Post Truth Truth Issue〉のオファーをくれたときは、すごくうれしかった。参加したいと思ってたから。私の父もその重要性を認識してくれてる。現状をわかってるし、いっしょに闘ってくれてる。今の時代は、すべての世代が協働しないと。それこそ変化を起こすための唯一の手段だから。歴史的にみても、今は特別な時代だと思う。私たちの世代には限界はないし、無駄にしている時間もないし、恐れもない。私たちは断絶をぶち壊そうとしてる。もちろん思いやりは必須だけど、私たちはみんな、恐怖におののくのも、非力を嘆くのも、不平等を放置するのももうウンザリだから。

1571912533399-BOX_38_Journal_01_0024

チャーリー:ダヴィデの物語から、次の世代は何を学べると思う? あるいは、何を学んでほしいと君は思う?

グレイ:ダヴィデはすごく希少で美しいものをもっていた。言葉にするのは難しいんだけど、彼の笑顔、作品、映像を観たり、あるいは直接会ったらすぐにわかると思う。彼の周りは光り輝いていたし、彼は天使たちに見守られていた。サラセミアっていう持病を抱えていた彼は、毎日を全力で生きていた。いつ人生最期の日が訪れるかもわからずに。彼は〈今〉を生きてた。きっと、私やあなたよりも速く。無駄にする時間なんてなかったから。彼は、物事の道理を信じるほかなかった。そして、常に自分に、自分の心に正直にいることが重要だ、と考えてた。私がそうやって生きたいと思うようになったのは、ダヴィデのおかげ。もっと遠くを目指して、自分の作品に真実を込める。ダヴィデは今も私をみていてくれる。前進するため、勇気をもつための力を与えてくれてる。私がダヴィデを思うとき、思い浮かぶのはその笑顔と、言葉と、生きること、平和、アートへの情熱。私は守られてる。私の友達も同じように感じててくれればうれしいな。

'See Know Evil' is available to watch online now

1571912620395-BOX_18-PRINT_03
1571912666772-BINDER_1-OCT_DAVIDS_ROOM-15
1571912713469-BOX_21-PRINT_03
1571912755208-f_box14_3
1571912791972-BINDER_4-UNMARKED_SLIDEK
1571912834758-BINDER_2-UNMARKED_SLIDEJ
1571912877304-BOX_28_Contact_30789_0017
1571912934511-BOX_16-PRINT_FRIENDSandFAMILY_68

This article originally appeared on i-D UK.

Tagged:
Culture
Mario Sorrenti
gray sorrenti
davide sorrenti