MIKIO SAKABEの次なる挑戦

これまで東京カルチャーを象徴するような個性あふれる独特なコレクションを展開してきたデザイナー坂部三樹郎。そんな坂部三樹郎が今回のコレクションで表現したこと、そしてMIKIO SAKABEの今後ついて語ってくれた。

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08 november 2016, 11:45am

Amazonが新たにスポンサーとなり、先月初めて行われた東京ファッションウィークで、これまでとはひと味もふた味も違うコレクション展開を見せた「MIKIO SAKABE」2017年春夏コレクション。ブランドの特色は残しつつ、大胆かつ計算され尽くした繊細なデザインが際立っていた。会場には渋谷のみやしたこうえんをチョイスし、モデルのほとんどに西洋人モデルを起用、派手な演出は一切なしと、その変化は一目瞭然だった。ブランドを刷新したデザイナー坂部三樹郎の意図とは?そしてブランド創立10周年という節目を迎え、坂部三樹郎が見据える未来とは?

MIKIO SAKABE 2017春夏コレクションのテーマを教えてください。
テーマは特に決めていませんでしたが、ブランド創立10周年なので大きなイベントをやりたいと思っていました。そこで今回着目したのが各時代を代表するファッションスタイルをミックスさせることでした。世代によって違う、当時の究極のスタイルを混ぜてみたくて。僕にとっての青春時代は1990年代、そのとき僕は10代でした。僕より上の世代の人たちにとっての青春時代は80年代だったり70年代だったり、それぞれの世代によって青春時代や美しい時代は異なります。その各時代に一番流行ったファッションスタイルやメイク、髪型、いわゆる"究極の形"に興味があった。多くのデザイナーは70年代や80年代だったりと世代を設定したコレクション展開をすることが多い。なぜかというと、肩のラインや首のライン、ウエストのシェイプなど、服のシェイプは年代によって形が違って、時代を混ぜたテーマを掲げるのはとても難しいからです。でも各時代を象徴する形を混ぜたら面白いんじゃないかって。目の前に80年代スタイルのモデルがいて、その隣には70年代90年代のモデルが同時に目に入ってくる空間——年代を超えたさまざまな形のスタイルを身にまとったモデルが、同時に同じ空間に存在させたかったんです。

今回のショーの見所は?
さまざまな時代のものがどんどん出てきて、その隣に別の年代のものが見えるというのが大事でした。同じ時代のものを羅列させないように意識したね。時空を超えるというか、時間を超えるような。それぞれの時代の特徴を挙げて、それらの時代の個性溢れるピースを徹底的に作っていき、ファッションの歴史が一気に出てきて消えていく感じを出したいと思いました。モデルには高いヒールの靴をはかせ、フラっとしている感じを演出し、かげろうみたいに見えるよう意識もしました。だから足を細く長く見せたかったんです。

本当にさまざまな世代のトレンドをミックスしていましたよね。具体的なインスピレーション源は?
今回は、90年代のオーバーサイズや80年代の肩パットなど、当時存在していた実際の形をもとにして混ぜていきました。2000年以降はトレンドの形がなくなったので、その前にあたる70-90年代にかけてのファッションに注目しました。

まず真っ白なルックからショーを始めた理由は?
今回は特に形を重視していたので、まずはさまざまなシェイプを見せたかった。色や柄にとらわれず、"形"にフォーカスしてほしかったんです。その時代の洋服の形やメイク、ヘアも年代によって違ったので、そこに目がいくようにあえて白を選びました。そして、それから徐々に色を加えていきたかったんです。

シャツの裾がスカートから見えている新鮮なルックもありましたね。
1ルックのなかでも違う時代のシェイプのピースを混ぜているから、シャツはオーバーサイズの90年代スタイルなのにミニスカートは80年代だったりするので合わない状態が生じる。時代がズレているので自然とそうなりました。

シューズも坂部さんがデザインしたのですか?
はい。友達がインドネシアに靴の工場を持っていたのがきっかけです。日本だとすでに存在しているヒールの型を使いますが、その工場ではヒールの木型からデザインすることができました。ヒールを作るのって大変なんですよ。普通はヒールに皮を貼ったり、ヒール以外の部分をデザインしていくことが多い。それに"歩きやすく軽い"という制限もあったり。夏に一度インドネシアの工場を訪れて、いろいろ考えて一から作ることに決めました。とてもやりやすかったですよ。

すごく高いヒールにした理由を教えてください。
今回のコレクションで最もこだわったのがシェイプです。ヒールを履かせて足をとても長く見せたり、ミニスカートを履かせたり。異様に足が長く見える違和感のあるシェイプを見せたかったんです。それと、肩が落ちていたり、普通のボディバランスを崩すことも重要でした。日本のデザイナーは、テキスタイルは得意でもシェイプが苦手な人が多い。歴史を振り返ってみても、着物の形はひとつだけど、素材や柄を変えていたわけです。一方で、海外に目を向けるとシェイプにも強いデザイナーが多い。グローバルに則って、今回のMIKIO SAKABEでは"シェイプ"で魅せたかったので、さまざまな形を意識的に取り入れました。

トータルで50ルックもありましたよね?
10年の節目ということもあり、ビックメゾンみたいに盛大にやりたかったんです。

日本人のモデルは2人だけでしたよね?
これまでのコレクションでは日本のカルチャーやストリートを意識していましたが、そうじゃないものもやらなきゃと考えていました。今回の変化を明確にするためにも、たくさんの日本人は起用しませんでした。

なぜ2人だけ日本人モデルを起用したのでしょうか?
日本の80年代アイドルも大きな流行のひとつとして入れたかったというのがあって。あの年代の空気感も混ぜたかったんです。だからヘアスタイルのひとつとして当時一世を風靡した聖子ちゃんカットを取り入れました。

MIKIO SAKABEブランド10周年の節目ですが、意識したことはありますか?
今回のショーでは、ストレートに勝負したかった。サブカルに注目したり、変わった人間味を出すというよりも、グローバルで今流行っているものを独自に発展させるというチャレンジをしたかったんです。今まではアイドルを使ったり、アイドルとコラボしたり、男性モデルに女性の服を着せたりなど、分かりやすいズレを見せていました。そういう意味では今回のコレクションは真っ向勝負でした。世界に目を向けて今のファッションのルールに則って誠実に表現をし、今のルールのなかで一番いいものを作れるのかという挑戦でした。

演出もシンプルだったように感じました。
今回はズルをしませんでしたから。今までは、ファッションの可能性を広げていっていました。思い切った演出やコラボすることによって、ファッション界にあるしがらみから抜け出して、"これもアリだよね?"って見る人に問いかけてきました。だけど今回は、今あるルールに則って、そのなかで可能性を最大限に広げたかったんです。

今回野外でショーを開催した理由を教えてください。
みやしたこうえんは渋谷の象徴でもあるし、使えるのが今回で最後だというのもあったのでそこに決めました。公園の方が室内よりも開けていて、普通の場所を突然特別な空間にしたかったので、あえてクレーン車を使って光を当てたりしました。海外のコレクションでは会場って本当に大切なんです。どこで誰がやったのかっていうのも重要だし、今回どこでやるんだろうという楽しみもある。日本は面白い場所もたくさんあるけど、会場の規制が厳しくて簡単に借りられないのが現状です。せっかく世界から多くのインフルエンサーが来ているわけですし、もっと東京の観光名所を使って、世界に発信していけたらいいですよね。

Credits


Text Aya Tsuchii
Photography Takao Iwasawa