デビッド・バーン、カラーガードのドキュメンタリー映画を製作

元トーキング・ヘッズのフロントマン、デビッド・バーンが、トライベッカ映画祭で感動のドキュメンタリー映画をプレミア上映。

by Emily Manning
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27 May 2016, 8:43am

その独創性で知られたニューウェーブバンド、トーキング・ヘッズが解散して25年が経つ。そのフロントマンだった音楽界の異端児、デビッド・バーンがいま何にあのクリエイティブな力を注いでいるのか、不思議に思っている人も少なくないだろう。現在の彼に関する謎は尽きない。どんな音楽を好んで聴くのか?何に夢中になっているのか?そして、1984年に公開されて以来「最高のコンサート・ドキュメンタリー映画」と称される『Stop Making Sense』を超える、ユーモラスかつエモーショナル、そしてアートフルで生き生きとした映画を、いかにして今回作ることができたのか?

彼の最新コンサート・ドキュメンタリー映画『Contemporary Color』がプレミア上映されたトライベッカ映画祭で、彼自身がそれらの謎を明かしてくれた。

これまで数年の間、バーンはカラーガードに夢中になっていたという。カラーガードとは、フラッグやサーベル、ライフルなどの小道具を用いて、マーチングバンドなどとともに、アメリカンフットボールの試合などのハーフタイムに視覚的なショーを見せるパフォーマンスのことだ。世界ではほとんど知られていないが、このカラーガード、実はアメリカではスポーツ競技として大会まで開かれており、活気あるクリエイティブカルチャーとして根付きつつある。しかし、カラーガードのチームに属することは、多くの高校であまり良くないイメージを伴うのだそうだ。よくてチアリーダーの落ちこぼれ、最悪のケースでは変人や負け犬という格付けとなる。バーンは、このカラーガードを生演奏に合わせてスタジアムショーとして見せることにより、世界に広めることにした。それは彼の思いつく一番クールな方法だった。

昨夏、バーンはカラーガードの強豪チーム10組に「ブルックリンのバークレー・センターでコンテスト用ナンバーを披露してくれ」と声をかけた。カラーガードには、1チームにつき一人のミュージシャンがあてがわれた。あてがわれたミュージシャンには、デヴ・ハインズ、セント・ヴィンセント、ネリー・ファータド、チューン・ヤーズ、ゾラ・ジーザス、ハウ・トゥ・ドレス・ウェル、そしてビースティ・ボーイズのマイクDとアドロックなど、錚々たる顔ぶれが揃った。バーンはそれらミュージシャンたちに、ペアとなるチームのナンバーを基にオリジナルの楽曲を制作するよう指示し、それをアリーナでチームとともに生で披露することを命じた。ミュージシャンたちは1週間で楽曲を書き上げ、チームとともに一回のみのリハーサルを経て、アリーナを埋める18,000人の観客を前に、コラボレーション・パフォーマンスを披露した。力を競う対決型リアリティTV番組と、チアリーディングをテーマとしたブロードウェイミュージカルの掛け合わせ。音楽専門誌が選ぶ最高の音楽を取り込んだような内容であるわけだが、それらの要素をすべてあわせても、この映画には劣る。なぜならこの映画の中で描かれているものは、実際に起こったリアルな瞬間の数々だからだ。

この映画の音楽はもちろん素晴らしい、それは誰もが考えうる最高のアイディアなのだから当然だろう。しかし、この映画が単なるコンサート・ドキュメンタリーの枠を超えて素晴らしいのは、それがときに観る者の心を動かし、ときに声をあげて笑わせる、極めて人間的な瞬間の連続だからだ。パフォーマンス自体はもちろん、ウォームアップの様子、登場するステージママたち、キラキラ輝くレオタードに身を包んだ女の子たちがフラッグを振りかざす光景に目が釘付けのバークレー・センター職員など、すべてが温かい視線で捉えられている。この映画を監督したのは、これまでも『Tchoupitoulas』や『Western』などコミュニティをテーマにドキュメンタリー映画を撮り続けてきた名手、ビル&ターナー・ロス兄弟である。ロス兄弟が手掛けただけあって、この映画は最高のコンサートを疑似体験させてくれるだけでなく、カラーガードとその文化を作り上げている個性ひとりひとりを深く覗かせてくれる作品となっている。

映画のプレミア上映に続き開催されたこの映画のメイキングに関するQ&Aセッションで、バーンはロス兄弟と出演するカラーガードのパフォーマー数人を率いて司会を務めた。「僕たちは、映画製作の際にいつも必ず街の調査をするんだ。今回は、街の調査の様子をフィルムに記録して、それを編集でギュッと凝縮した」と、ビルは映画に一貫して漂う"コミュニティ"の感覚について説明した。「そしてそこで、『The Muppet Show』や『WestleMania』といった、僕たちが子供の頃に観たテレビ番組を思い出して、"決められた時間の中で魅せる"ということについて考えた。その構想をもとに"カラーガードをどう映画として見せるか"を明確にして、そこからはデビッドについていったんだ」。

『Contemporary Color』を説明するのに最善の方法として、まずはエリック・ウェアハイム監督によるこの「Beach House」のPVを観てもらいたい。そして、映像にあるボンボンやお尻を強調したダンスに代わり、フラッグをくるくると回し、ライフルを高く突き上げるパフォーマーたちを想像してみてほしい。そんなパフォーマンスを、クリストファー・ゲストとスパイク・ジョーンズがドキュメンタリーに収めたと想像し、パフォーマーたちを、献身的で団結が固く、底抜けに明るい、テレビドラマ『Glee』のキャストに置き換えてみてもらいたい。そしてニコラス・ウィンディング・レフンとウェス・アンダーソンがコラボレーションしてグラフィックデザインを担当したと仮定すると、ほぼこの映画の魅力がわかるはずだ。

それでもなお、この映画最大の魅力は、その比類なき音楽でも、ロス兄弟のビジュアル感覚でもない。この映画が魅せるのは、カラーガードの人生であり、それを当たり前のこととして映し出される多様性だ。バーンが幅広くミュージシャンたちを選んだのには理由がある。それは、カラーガードたちのナンバーがそれぞれ多様性に富んだアート作品であるからだ。その中には、「行方不明の子供たちをテーマにしていて、またある一作はアルフレッド・ヒッチコック監督をテーマにしている」のだとバーンは語る。様々な体型や肌の色、自認する性やジェンダー、そして様々な経済状況の中、様々な人生の使命を背負った子供たちが、みなカラーガードに自らを捧げている。彼らのその情熱を胸に、ラジオパーソナリティのアイラ・グラスと作曲家ニコ・マーリーがコラボレーションをしている。アイラが彼らにそれぞれのナンバーの構成要素やパフォーマンスをしているときに感じるもの、そして彼らの人生についてインタビューをしている間にニコが作曲した音楽が流れるというコラボレーションとなっている。カラーガードのパフォーマーたちは、自分たちが振り付けを解説している声に合わせてナンバーを披露しているわけだ。

「ソウルフルなんだ」とターナー・ロスはプレミア会場で説明した。「そこにはコミュニティというものがあり。外にある世界では評価されないが、彼らの世界の中にあっては大きな意味がある、素晴らしいアート。そこに情熱を注ぐ最高のアスリートたちには、感情に訴えかけるコミュニティの感覚がある」。『Contemporary Color』の制作過程で、ロス兄弟はこう自問したという。「どうやったらこの素晴らしい感覚、浮きたつようなエネルギーと雰囲気を、観客が"体験"できるまでに映画に落とし込めるだろう」と。そこで彼らは、バックステージでカメラを回し、コートでカメラを回し、観客席でもカメラを回し、パフォーマーたちの地元でもカメラを回した。「この素晴らしい出来事の表面的な部分だけを見せるんじゃなく、この素晴らしい人間たちと一緒にその瞬間を生き、一緒に味わってほしかったんだ」。

トライベッカ映画祭の観客を前にライブパフォーマンスを披露したカラーガードのパフォーマーたち。パフォーマンス直前に、バーンはカラーガード・カルチャーの良い点と悪い点を訊いた。答えは、"イヤなこと"が「週末には12時間にもおよぶ練習と、学校の勉強をバランス良くこなさねばならない」ということ、そして"いいこと"は「全国大会で感じる緊張と集中」だそうだ。バーンはまた、あることが気になったという。この映画の発表によって、このスポーツへ向ける世間の目が変わってくれると、彼らが感じたかどうか—映画に登場するある高校の生徒の言葉に、このドキュメンタリーが物語るすべての答えがあった。「カラーガードは、ただ体育館でフラッグを振り回す以上のものを生んでいるんだよ」。

Credits


Text Emily Manning
Images courtesy Tribeca Film Festival
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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