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勢いを増すグルジアファッションの今

グルジアの歴史をポジティブな現在へと昇華するデザイナー、ゲオルゲ・ケブリアにインタビューを行った。

by Anastasiia Fedorova
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02 June 2016, 10:19am

美しい山岳と政治的混乱、そしてコーカサス地域の隣国との対立で知られているグルジア。その歴史な背景もあり、保守的な気風がいまだに根強く残っている国だ。しかし、激動の90年代には新世代のクリエイターが数多く生まれ、その状況は変わりはじめている。首都トビリシに巻き起こるレイヴシーンから、新世代の若者たちを捉えたフォトグラファーや映画まで、そこから見えるグルジアは実に興味深い。

数多くのクリエイターのなかでも特に、グルジアのクリエイティブを世界に知らしめたのは、デザイン集団Vetementsのリーダーであり、BALENCIAGAのクリエイティブディレクターにも就任したデムナ・ヴァザリアだろう。20歳でヨーロッパに移住したとはいえ、彼はこれまでに何度も故郷グルジアと、そこにソ連が残したものの影響について語っている。ヨーロッパの端に位置するこの小さな国で何が起こっているのか、誰もが興味をそそられてきた。

トビリシには新世代のグルジア人デザイナーが数多く生まれている。なかでもゲオルゲ・ケブリア(George Keburia)は、今もっとも輝いている若手だろう。大胆で新しく、セクシーなデザイン−−彼のデザインは、世界中の新世代に訴えかける魅力に溢れている。しかし、目を凝らしてよく見ると、そこにはグルジアの歴史と現状が反映されている。2016年秋冬コレクションには、彼が見た90年代内戦の後遺症や、現在国内で巻き起こる同性愛憎悪の流れを見ることができるのだ。

首都トビリシの新たなシーン、ファッションを通して深刻な問題を語ること、そしてグルジアのTumblr世代についてケブリアが語ってくれた。

ファッションと服飾デザインに興味を持った経緯について聞かせてください。
小さい頃、あるゲームをよくしていたんです。その名も"ブランド当てクイズ"。セレブたちの写真を一目見て、誰がどのブランドの服を着ているかを当てるんです。僕はそれがとても得意で、いつも即答していました。ファッショナブルに着飾っているセレブより、面白い着こなしをしているひとに目がいきましたね。学校に通う歳になると、授業中に服のスケッチをノートに描くようになりました。ある時、デザインコンテストが開催されると聞いて、参加しようと決めたんです。ファッション業界での経験も、知識もありませんでしたが、手作りでコレクションを完成させました。それで優勝したんです。

最新コレクションのストーリーとディテール、特に銃のプリントとカラーについて聞かせてください。
このコレクションのディテールは、90年代にグルジアで起こった内戦と、それが引き起こした経済的・政治的後遺症を表現しています。銃のプリントはグルジアの苦しく暗い過去を表現したモチーフで、用いられている虹色は「そんな闇を打ち砕いて明るい未来に向かおうよ」という姿勢を表しているわけです。

グルジアは保守的と言われ、最近では同性愛に対する反感が多く見られます。そんな中、あなたのコレクションには"Gay"というスローガンをプリントしたセーターがあります。これはあなたによる抗議の姿勢と解釈して良いのでしょうか?
それを着ることで、社会に対する抗議の姿勢を示すことになるわけだから、そうですね。これはグルジアの保守的な文化が生んだ反同性愛の流れに対する僕の抗議声明になるんだと思います。でも、そこにはもうひとつの側面があるんですよ。"Gay"という単語には、 "朗らか"、"楽しい"という意味もあって、銃反対や暴力反対というコレクションのテーマを表す言葉でもあります。

戦争や保守主義といった社会問題を、ファッションは反映すべきものだと考えますか?
アートが社会問題を反映するのは必然だと思いますね。私たちは日々、そういった社会問題の影響下で暮らしているわけですから。僕の作品には、深刻な視点が直接的に反映されているものもあれば、遊び心を前面に出したものもある。作るときの気分によって変わりますね。

トビリシでファッションブランドを立ち上げ、続けることの難しさについて聞かせてください。
一番大変なのは、生地の手配ですね。グルジアにはテキスタイル製造という産業がないんですよ。必要な生地が、街の生地屋では見つけられないことが多くて……いつも苦労します。

現在の若いクリエイティブシーンについて教えてください。
シーンを作り出そうとみんな頑張っています。展覧会やファッションショー、レイヴを開催したり。ようやく"何が新しいか"、"グルジアのクリエイティブシーンをよりエキサイティングで魅力的にしていくには何をするべきか"といったことが明確になってきているような気がします。

刺激を受けているグルジアのクリエイターを教えてください。
まず、フォトグラファーで、スタイリストのギオルギ・ワゾウスキ(GIorgi Wazowski)。彼はこれまでいくつかのコレクションでコラボしてきた若き才能です。お互いにインスパイアし合える関係ですね。それから、マリアム・ナトロシュヴィリ(Mariam Natroshvili)のアートワークも好きですね。とてもクールなひとです。

トビリシの若者は、服装に関して自由で独創的なのでしょうか?
"トビリシTumblr世代"ともいうべき世代があります。彼らはクラブやストリートでギャングのようにたむろしているんですが、とんがっていながらも上品で、面白いし、クールなんですよね。

VetementsBALENCIAGAでデムナ・ヴァザリアが作り出している作品をきっかけに、グルジアのデザイナーへの世界的注目が高まっています。彼の作品はあなたの目に"グルジア的"と映るのでしょうか? 世界が彼に注目していることで、グルジアの人々の服装や、ファッションへの考え方に影響はあるのでしょうか?
彼の作品に、グルジア的な要素が見られるとは思いませんね。でも、才能は疑いようのないものです。彼は美しいものを作り、ファッション業界の美意識をガラリと変えましたよね。"だらしない"とか"みっともない"と言われがちだった服装をファッションにまで高めたわけですから。人々が高価な服を捨てて、オーバーサイズのボンバージャケットやセーターを着るようになってきている現状は、彼が作り出したんですもんね。

Credits


Text Anastasiia Fedorova
Photography Giorgi Wazowski
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.