「一音で世界が変わる音楽体験を信じている」​DYGL​インタビュー

ザ・ストロークスの名ギタリストAHJらをプロデューサーに据えた1stフルアルバムを2017年4月に発表し、アジアや日本全国のツアーを巡っているDYGL。ツアー後半戦に向かうつかの間のタイミングで、メンバーにインタビューする機会を得た。

by Hiroyoshi Tomite
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27 July 2017, 1:00pm

ザ・ストロークスやザ・ビューなど2000年代に世界で鳴らされたロックの空気を存分に吸い込み、自らの個性として昇華させた1stフルアルバム『Say Goodbye to Memory Den』を2017年4月にリリースしたDYGL(デイグロー)。プロデューサーにザ・ストロークスのギタリスト、アルバート・ハモンドJr.、『ANGLES』以降の作品プロデュースを務めたガス・オバーグの2人を迎えて制作されたことが発表されるや否や音楽ファンに驚きを持って迎えられた。

しかし、DYGLの面々はあくまでフラットにアルバートやガスと向き合いアルバムを完成させたようだ。台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、韓国、そして国内の九州・四国地方へのツアーを飛び回った彼らは、ツアーの充実もあってかリラックスした雰囲気でインタビューに応じてくれた。

10日ほどニューヨークでレコーディングされたそうですが、まずはアルバム制作の経緯について教えてください。
秋山:プロデューサーを誰にしたいかリストをあげていて、そのリストの中にガス・オバーグの名前がありました。たまたまアルバートとガスが「日本のバンドと仕事してみたい」と話していたことを関係者から聞きつけて。その人を介してつないでもらいました。「音源が気に入ったから一緒にやることにしたよ」と言ってくれて、嬉しかったですね。

アルバートやガスとのコミュニケーションのなかで学んだことは何ですか?
下中:彼らから「なるべく余計なことをしないこと」を学びました。大事なエッセンスだけ残して、後は削る。音楽的な装飾すると、彼らは必ず嫌がるんですよ。なぜなら「一番大事なのは曲で、音のトーンに関しては先に立たない」という考え方の持ち主だから。前から音作りにおける引き算の大切さは感じていたのが、今回一緒にやってみてその考えが確信に変わりました。
嘉本:天井が高く、彼らがチューニングしたセットがよくて、最初から鳴りのよさを感じることができましたね。「強く叩き過ぎ」とか「スティックの持つ方向を変えて」「ここを叩くと音がもっとタイトになる」といったアドバイスも参考になることばかりでした。
秋山:サウンド面について向こうは向こうで言いたいことを言ってくれたのですが、僕らも「この音がほしい」「この音がいらない」と主張させてもらって。その意識の擦り合わせを何度も行なっていました。彼らがそれを気に入るか気に入らないかは置いておいて、必ず一度はどんなことでも自分たちに試させてくれましたね。ガスはガスで試してみたものが上手くハマったら、最初に自分が嫌がっていたか否かは抜きにして、フラットな目線で「よかった」と言ってくれました。僕らにリスペクトを持って対等に話をしてくれたのはよかったです。

過去にインタビューで日本の小説家の庄司薫に影響を受けていることを公言していましたが、何か歌詞を作る上でインスピレーションにしていたものはありますか?
秋山:レコーディングの前、ニューヨークで作業をしている時にはルー・リードとビートルズのソングブックの2つを読んでいました。ルー・リードは身の回りの事象を語りのような口調で表現する能力に長けている。だから冷めて俯瞰しているけれど、熱があるのが音楽的だと感じました。ビートルズの歌詞はシンプルな作りで単純に英詩というもののスタイルの基本に立ち返るためによく参考にしました。

言葉で奇をてらうことはできても、スタンダードなものを追い求めてそれが良い音楽であるということは難しいことだと思います。だけどDYGLの言葉にはどんな時代にも通ずる強い意志がある気がします。
秋山:普遍的なものを描きたい気持ちはいつもどこかにありますね。時代のムードや表面的な歴史はいつも変化し続けていると思いますが、人間の感情そのものは何百何千年と変わらずにあり続けたもの。だから自分が創作活動をする上で、イギリスの労働者階級の人以外には伝わらないとか、日本の東京のこの地域の人にしかわからないとかいう風に限定された人にだけ届く表現にならないようにしようと思って。僕らの音楽がいつまで残るものになるかはわかりませんが、仮に百年経って僕らの音楽を誰かが聴いたときに「これはこういうことを歌っている」と分かるものであって欲しいな、と。

アルバム制作を経て、リスナーに自分たちのアルバムが届いて、ライブを続けるなかでバンドとしてのムードはどう変化していきましたか?
秋山:タイトな音作りをする意識はバンド内でさらに芽生えました。それぞれがバラバラに鳴っているのではなく、ひとつのバンドとして音を出したいという意識は以前より強くなったと思います。
下中:アメリカ人の友達と話すと、彼らは誰かの演奏を見ていて「今のはタイトだね」という褒め言葉をよく使うんです。最近バンド自体が音の固まりとして強固になっていると言ってくれる人たちがでてきて、それは嬉しいですね。自分たちもいい演奏ができてきている自信はあるけれど、「もっと良いパフォーマンスができる」という感覚でやっていて。まだまだ発見がありますね。

東京のパフォーマンスを何度か見ていますが、プレイやパフォーマンスもアグレッシブになっていますよね。
秋山:下中は最近たいてい上裸になるよな。

Photo by Bryan Ong Eu Jin

下中:台湾以外は上裸だったかな(笑)。結構盛り上がった会場ではアルバム最後のトラック「I've Got to Say It's True」を皆コーラスしてくれたり、いい雰囲気に感じられる瞬間が多いです。
秋山:アジアは毎回盛り上がっていますね。台湾は今回で4-5回目なのですが、いつもウェルカムな感じで迎え入れてくれる。だんだん規模感が大きくなって。FJUという大学の学生たちが企画した大学の構内で開催されたイベントにも出演させてもらいましたが、お客さんの熱量の高さを感じました。インドネシアはバーとかレストランみたいなライブハウスで、対バンした相手も格好よかったし、知らない文化の中に放り込まれる感覚は楽しいですね。まあ、インドネシアの公演後は海老アレルギーで体調を崩して病院に運ばれたりもしたのですが……(笑)。日本でも地方は東京と全然違った空気感で、毎回ライブごとに発見があります。
加地:今セットリストが大枠決まっていて。それを繰り返しやっている状態なので、1曲1曲はもちろんですが、ブロックごとにこういう反応があったりするなあ、とかセットリストを通して自分たちのライブを考えるようになってきたことが新鮮に感じます。

嘉本さんはツアーを巡ってみての手応えはどうですか?
嘉本:上手くいけば楽しいし、上手くいかないと楽しくない。今のところ、半分以上は楽しいのでいいですね。秋山:面白い言い方だね(笑)。下中:時間があるときは各地のレコード屋さんに行っていて、それも楽しいよね。

バンドとしてこのあと中国でのライブなどが控えていますし、ツアー後半戦に入りますね。
秋山:僕は音楽にのめり込むと、知らない世界がその音の先に広がっていく感覚を受けることがあって。いい意味での一種の現実逃避なのかもしれませんが、音楽が自分の想像の世界を広げてくれる感覚は本当に好きです。一音聴いただけで世の中の見え方がガラッと変わる瞬間。自分たちの音楽が、誰かにとって知らない世界への扉を開くきっかけになれたら嬉しいですね。

バンドとしてこれからどのように進化を遂げていきたいでしょうか。
秋山:音像として今まで自分が影響を受けたもの・血肉化されたものを自分なりに咀嚼してアウトプットすることがひとつの挑戦だった。今作でそれはある程度実現できた気がしています。だから、次は自分が想像できない新しいアプローチをしてみたい気持ちが高まっていますね。その分失敗する可能性も増えるかもしれませんし、まだ思いつきに近いですが。アジアのどこかでしばらくスタジオ兼家を借りて、そこで楽曲制作するのもありかなと思っています。ともかく、当たり前じゃないこと、人が普通やらないようなことがやってみたいですね。

Say Goodbye to Memory Den Release Tour
2017.8.11 (fri) <China> (Shanghai) Mao Livehouse w/mitsume
2017.8.12 (sat) <China> (Beijing) Yugong Yishan w/mitsume
2017.8.13 (sun) <China> (Chengdu) Little Bar Space w/mitsume
2017.8.15 (tue) <China> (Xi'an) Midie Livehouse w/mitsume
2017.8.17 (thu) <China> (Wuhan) Vox Livehouse w/mitsume
2017.8.18 (fri) <China> (Guangzhou) Tuinion w/mitsume
2017.9.6 (wed) <Iwate> the five morioka
2017.9.8 (fri) <Fukushima> Koriyama♯9
2017.9.10 (sun) <Sapporo> DUCE SAPPORO
2017.9.28 (fri) <Nagano> Matsumoto ALECX
東京・大阪ワンマンLIVE
2017.12.8(fri) <Osaka> UMEDA CLUB QUATTRO
2017.12.9(sat) <Tokyo> LIQUIDROOM

オフィシャル先行: 7/25(火)12:00 - 8/6(日)23:59
URL  http://eplus.jp/dygl2017hp/ (PC・携帯・スマホ)
一般発売:8 /19 (土)

Credits


Photography Shusaku Yoshikawa
Text Hiroyoshi Tomite

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