Calvin Klein AW17:ラフ・シモンズ、アメリカを見つめ直す

ベルギーが誇るデザイナー、ラフ・シモンズ。彼が、リボンで飾ったハウス・パーティ空間を彷彿とさせるセット・デザインと、ボウイのサウンドトラック、コーポレート・スーツ、そしてカウボーイ・ブーツを用いて、アメリカを代表するブランドCalvin Kleinのコレクションを作り上げた。

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feb 15 2017, 11:26am

先週初め、ラフ・シモンズ(Raf Simons)は、Calvin Kleinのクリエイティブ・ディレクター就任後初となる同ブランドのキャンペーンをリリースした。長きにわたりコラボレーション関係を続けてきたフォトグラファーのウィリー・ヴァンダピエール(Willy Vanderperre)とスタイリストのオリヴィエ・リッツォ(Olivier Rizzo)をこのキャンペーンでも起用し、デニムとアンダーウェアだけを身につけたモデルたちが、アンディ・ウォーホルやクリストファー・ウール、リチャード・プリンスらのアート作品に見入っている姿を捉えている。Calvin Kleinといえば、初代デザイナーのカルバン・クラインは、消費者概念にある日常着としてのデニムとアンダーウェアを、アメリカン・スタイルとセックスのラグジュアリー的な象徴へと高めることで帝国を築いた。今回のキャンペーンで展開されている写真のひとつに、スターリング・ルビー(Sterling Ruby)によるアメリカ国旗のような巨大彫刻作品の前で、白いフリーフだけを身につけた男性モデル3人が小さく写っているものがある。このキャンペーンは、シモンズによる初のCalvin Kleinコレクションのロードマップだったようだ。シモンズによるCalvin Kleinコレクションは、マンハッタンの39丁目にあるブランド本部にて、先週発表された。メンズとウィメンズのコレクション合同発表の場となったランウェイには、デニムと白ブリーフはもちろんのこと、他にもアメリカン・ファッションのクラシックなコードがふんだんに登場した。大きなレザー・ジャケット(そして全身レザーのルックも後に登場した)やシャープ・スーツ、キルトが入ったジャケット、ウエスタン・ブーツなどが盛り込まれ、そこには、今日の社会を反映した「企業」と「カウボーイ」の要素がともに扱われていた。

キャンペーンにも見られたアート世界の影響が、ランウェイでも感じられた。キャンペーン広告写真にあるクリストファー・ウールのペインティングには、「A guy goes to a psychiatrist wearing only Saran Wrap. The Psychiatrist says to the guy, I can clearly see your nuts, you nut.(ある男が裸の体にサランラップを巻いただけのいでたちで精神科医を訪れた。精神科医は男を見てこう言った。『君のナッツが丸見えだ』)」 Nutは、「気狂い」という意味を持ち、ここでは男性器と掛けてジョークのオチとなっている。スタジャンのようなスリーブが切り返しで用いられたタイトなセーターや、ミニマルを極めたシュミーズ・ドレスなど、コレクションで発表された多くの服には、「透明」要素が盛り込まれていた。ワイド・ショルダー気味にデザインされたスーツ・コートや、デリケートなフェザー・ドレスなどは、透明のプラスチック加工が施されていた。それは、アート作品の保護という意味だったのかもしれないし、ニューヨークのギャラリスタたちの綺麗にドライクリーニングされたパワードレスへの敬意を意味していたのかもしれない。

もしくは、よりパーソナルな何かに根付いたものだったのかもしれない。シモンズはこれまでにも、彼が初めて目にしたファッション・ショー、Martin Margielaの1989年秋冬コレクションが、彼にどれだけ変革的インパクトを与えたかについて多く語ってきた。「モデルがすべて白と透明のプラスチックでできたドレスを着ていた、あの"ホワイト"コレクション」と、シモンズは2008年に語っている。Maison Martin Margielaのミュージック・ディレクターを務めてきたフレデリク・サンチェス(Frédéric Sanchez)は、『The Gentlewoman』とのインタビューで、そのショーのメイクアップはデヴィッド・ボウイの「Life On Mars?」のミュージック・ビデオをインスピレーション源としており、またサウンドトラックはアンディ・ウォーホルの映画からアイデアを得たものだったと明かしている。「トラックを短く切り取り、細かく切り刻んで、レベルをいじってサウンドを歪めたり雑音のようにしたりした上で、コラージュのようにそれらをつなぎ合わせるアイデアだった」と。

Maison Martin Margielaコレクションの記憶ばかりが頭にあったわけではないだろうが、それでも今シーズンのCalvin Kleinコレクションのショーに用いられたサウンドトラックには、その影響が感じられた。ショーのオープニングとクロージングには、ボウイの「This Is Not America」が用いられたが、ロイ・オービソン(Roy Orbison)の「In Dreams」やジョン・バリー(John Barry)の「Midnight Cowboy」、そしてザ・フラミンゴズ(The Flamingos)がビョーク風にカバーしたラモーンズの傑作「I Only Have Eyes for You」などの一部がサンプリングされた2バージョンが用いられた。

シモンズが懇意にするアーティストであり、過去10余年にわたり友情関係を築いてきたルビーが、ショーのセットを担当した。リボンやアメリカ国旗のバナーが天井から垂れ下がり、映画『ヴァージン・スーサイズ(The Virgin Suicides)』から主人公の男の子がリスボン姉妹について語る独白がゆっくりと不気味に流された会場は、映画の劇中にあるハウス・パーティを思わせた。このショーは、アメリカのユース、セクシュアリティ、疎外感、家族、義務感、期待、歴史、そして自由という、映画『ヴァージン・スーサイズ』と原作の『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹(原題:The Virgin Suicides)』が時代に問いかけた複雑な疑問を、同様に扱っていた。『ヴァージン・スーサイズ』を監督したソフィア・コッポラも、会場で最前列に座っていた。彼女もそのように感じていたのだろうか。

Credits


Text Emily Manning 
Photography Mitchell Sams
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.