恒松祐里インタビュー:天真爛漫というたくましさ

妄想力とエゴサーチで切り拓く新世代の女優像!19歳の女優・恒松祐里は邦画界に確かな新風を巻き起こす。

by Naoki Kurozu; as told to TOMOKO OGAWA; photos by KO-TA SHOUJI
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16 April 2018, 10:40am

独特の柔らかさと明るさをまとった笑い声が、耳の奥に心地よく響く。無邪気な表情と相まって“天真爛漫”という言葉が自然と浮かんでくる。「ここ何年か、友達や現場、取材先で出会ういろんな人たちから、その4文字を言われることがメチャクチャ多くて……。確かに、その言葉の通りかもって自分でも思うようになってきました(笑)」

自分で言っちゃう?というツッコミなど意味をなさないほど、ポジティブなパワーにあふれている。この強靭なメンタルこそ、恒松祐里の何よりの持ち味と言える。7歳から子役として活動を始め、以来、幾度となくオーディションに落ちてきた。現場で苦汁をなめた経験も数知れず。結果、この鋼のようなメンタルが作り上げられた。

「強すぎるんです(苦笑)。何があってもめげないし、ひと晩寝れば治っちゃう。逆に、もっと悩みたい! って思うんですけど、私生活でもほとんど泣くこともないし、現場で泣く直前までいくことはあっても、意外と大丈夫だったり…(笑)。子どもの頃からこの仕事をしてると“何でもやります!”という感じでどんどん強くなっちゃって」と悩み(?)を口にする。

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ターニングポイントとなったのは、15歳の頃にオーディションで勝ちとった三木孝浩監督×新垣結衣主演の映画『くちびるに歌を』の合唱部の部長・ナズナ役。等身大の悩める10代を見事に演じ、注目を集めたが、2017年公開の黒沢清監督作品『散歩する侵略者』では、同じ女優とは思えないほど凄まじいまでの変身ぶりを披露!可憐なルックスと声からは想像できない、爽快ささえ感じさせるキレッキレのアクションで人々を殺戮していく“宇宙人”を演じ、称賛を浴びた。華麗な“殺人術”はすべてノースタントだという。

「元々、バレエとダンスはやっていたんですが、アクションは初めてで、3カ月ほど練習して、アザもできまくったんですけど、楽しかったです。なかなか人の首に巻きついたりする経験ってできないじゃないですか(笑)? “あぁ、アクション好きかも”って思いました」
難しかったのはアクションばかりではない。中身は地球を侵略しに来た宇宙人という役どころ。しかも人々の“概念を奪う”という哲学的な侵略者である。

「黒沢監督は独特の雰囲気がある方で、優しいんですけど、役に関してあまり説明はないんです。『宇宙人役ってどうなんですかね?』と聞いても『うーん、僕もわかりませんね』って(笑)。シーンごとに“こうしたい”と導いてくださるんですけど、基本的には役者を信じて、任せてくださるんです。また一緒にお仕事がしたいです」

天真爛漫な性格の一方で、決して感覚だけで芝居をするタイプではなく、自らの芝居に対する研究を惜しまない。「いろんな役をやらせていただくようになって、自分はこういうことができるんだ! というのが少しずつ分かってきました。意識して声のトーンを変えることもありますし、『散歩する侵略者』のときは、宇宙人の声ってどんなだろう? と自分の声を録音して聴いたりもしました」

これという決まった自分なりのメソッドを持っているわけでもなく「役ごとに自分で考えて」最適解を探していくし、現場での出会いによって、積み上げてきたものを捨てる勇気も持つ。「最近では『虹色デイズ』での飯塚(健)監督との出会いですごく変わったというか……より迷いましたね。試行錯誤の時期で、どうしたらいいんだろう? ああしてみようか?こうしてみようか? と考えすぎちゃうところがあるので、本能的にやってみたんです。そうしたら監督に『もっと深く考えて!』と言われ(笑)。役に引っ張られて疲れることもあります。それこそ『虹色デイズ』で演じたまりは、性格のキツイ子だったので、家でも親にあたっちゃったりして……」

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インパクトの強い、個性派揃いの同世代の女優たちの中にあって、決して目立つような派手さはない。どちらかといえば、やや控えめな存在と言える。「自分の個性を活かすというより、役に自分をどんどん近づけていく」タイプであることもその一因と言えるかもしれない。「特別な雰囲気や存在感でお芝居をしている女優さんっているじゃないですか。でも、私はそういう人にはなれないから、違うところで戦っていくしかない。特別なオリジナリティはないから研究したり、どうやって伝わるものにしていくかを模索していくしか術はないと思っています」

そんな彼女が趣味と実用を兼ねて、日々の生活の中で常に行なっているというのが“脳内妄想”と“エゴサーチ”だという。「しょっちゅうしていますね。これは演技にも役立っていると思うんですけど、今日みたいに取材を受けるときは、頭の中で、架空の取材を受けているお芝居をして、いつの間にか声が出ていたり(笑)。隣に人がいたらヤバいですよね」

エゴサーチは「顔を洗うように」というほど習慣化しているという。しかし、彼女は他人からどう思われているかなど気にしてはいない。目にしたいのは、身近にいる人間からはなかなか聞くことができない、自らの芝居に対する忌憚のない意見である。

「イヤになることもあるけど、お芝居の感想を見たいんです。(身内やファンからの)『よかった』とか『かわいい』ばかりじゃなく、周りが本当にどう思っているのかが気になります。悪口を言われても“ここは直そう” “それは無理”という線引きはできていると思います」

ブロードウェイのミュージカルが大好きで、将来は活躍の幅を海外にまで広げていきたいという高い志もある。それに向けて必要なのは「言語力。そして、ぴょんと飛び出す勇気」だという。

「どこかで踏み出さなきゃいけないし、そのための準備が必要。英語とお芝居の技術、どちらも磨かなきゃいけないですよね。でも、私、英語のほうが意外と感情が乗るんです(笑)。妄想英語はしているので」

Credit


Text As Told to Tomoko Ogawa
Text Naoki Kurozu
Photography Ko-Ta Shouji.
Styling Chie Ninomiya.
Hair and Make-up Masaaki Azuumi at EFFECTOR.
Photography assistance Kohei Iizuka.
Styling assistance Chihiro Imahori.

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