「女性であること」についての覚書:マリア・グラツィア・キウリ

Diorのアーティスティック・ディレクター、マリア・グラツィア・キウリが〈女性にまつわる12の質問〉に答える。「ふだん男性だけで会議をしていて、女性の意見を聞くこともない。だから女性から意見が出ると思わぬ反応が生じるのでしょう」

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dec 5 2017, 10:51am

自分ははたして女性らしい振舞いができているのかしら?ほかの女性はどうやって「女性」として生きているの?そもそも「女性である」とはどういうこと?——女性なら誰しも「女性」であることの意味がわからなくなる瞬間がある。『Notes on Being A Woman』は「女性である」ということにまつわる神話や意味について考えるシリーズ。

マリア・グラツィア・キウリがDiorのアーティスティック・ディレクターに起用されたとき、パリはもとより、ファッション界全体に衝撃が走った。元はValentinoでアクセサリーをデザインしていたキウリだが、服のデザインは、Valentino時代にピエールパオロ・ピッチョーリと共同で行った経験しかなく、単独でキウリを起用することに対して業界内外から疑問視されていた。ファッション業界は、彼女がどのようなビジョンを打ち出すのかよりも彼女がDior史上初の女性デザイナーになったことが話題となった。周りがあれこれと議論を繰り広げるのを脇目にキウリは「女性」に焦点を当てたコレクションを発表した。そしてこれがファッション史の新たなページを開く歴史的瞬間となった。

「フェンシングの美」をテーマにキウリはDiorデビュー・コレクションを作りあげた。フェンシングは「ジェンダーの垣根などない平等な世界を目指して闘う姿」のメタファーだった。Diorの精神に大胆なフェミニズムを流し込み、白く繊細なロング・チュールスカートに「WeShouldAllBeFeminists(みんなフェミニストでなきゃ)」とプリントされたシンプルなTシャツを合わせたルックを完成させた。

フェミニズムと芸術へのアプローチはそのままに、キウリは2018春夏コレクションで二人の女性が残した作品へのトリビュートを表現した。ひとりは、アーティストであり、Diorのモデルを務めた経験もあるニキ・ド・サンファル。そしてもうひとりが美術史研究家のリンダ・ノックリンだ。ノックリンが1971年に書いた論文『なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか?』はタイトルがそのままブレトンストライプTシャツにプリントされていた。キウリはDiorで新たな女性のあり方を構築しようとしている。ロングドレスも着るが、リラックスしたフラットシューズと黒いベレー帽を合わせ、パワフルなメッセージがプリントされたTシャツを着る。そんな女性のあり方を。

マリア・グラツィア・キウリが「女性であること」について自身の考えを語ってくれた。

毎日困難に直面できて、本当に女性でよかったなと思う。なぜなら「困難があるから女性であることの本当の意味、そして女性が秘めている可能性について考えることができるから」

女性として生きる上でもっとも難しいことは「感情の起伏を受け入れること。自分の弱さを認めて強みに変えること」

身体についてのアドバイスでもっとも身になったのは「“体型やサイズ、身体的な欠点は大した問題じゃないということ。身体の違いが多様なデザインを生む。身体と服の関係性について考えるきっかけを与えてくれるのです」

過去に戻れるとしたら、16歳の自分に「あなたは“反逆”の意味を知らない」と教えてあげたい。「当時は反抗することでしか何かを成し遂げることはできないと思い込んでいました。その衝動こそ唯一耳を傾けるべきものだと。ですが、今ならわかります。耳を傾けるべきなのは心と頭(感情と理性)の混ざったものだって。世界を変えるアイデアはそこから生まれるのです」

いまあるわたしはこれまで見てきたもの、読んできたものできあがっている。「映画や本だけではなく、芸術やオブジェ、そして人生で起こったさまざまな出来事が今のわたしを作っています。わたしにとって、「女性らしさ」とは経験と感情が曖昧に重なりあってできあがったもの。連続した成長のプロセスなのです」

女性として生きてきた中でもっとも驚いたのは「女性から上がった声が男性社会に揺さぶりをかけるということ。ふだん男性だけで会議をしていて、女性の意見を聞くことも(ほとんど)ない。だから女性から意見が出ると思わぬ反応が生じるのでしょう」

わたしがもっとも幸せなのは「創作意欲を刺激し、好奇心が満たされることをしているとき。そういうときに新しいことを知れるから」

女性を歌った曲で好きなのは「ミーナ(Mina)の“AncheunUomo”。ミーナは一度聞いたら忘れられない声で女性について歌うイタリアの歌手です。1979年の曲だけれど、わたしにとっては永遠の名曲ですね。悲しい曲調だけど、とても意味深い曲で『女性は自分を大切にしなくてはいけない。特に恋をしているときは』と教えてくれました。アレサ・フランクリンがパワフルに歌う”Respect”も女性に対する敬意をお願いしないで要求していてとても好きです。

わたしが尊敬しているのは「大胆で好戦的な女性。そして、自分の脆さを見せながらも誇り高い女性たちです」

歳を重ねることについての最大の嘘は「遊ぶこと、興味に対する探求をやめなければならないということ」

成長したなと感じるのは「他人の目を気にせず、また異なる意見を変えようとすることなく、毎日自分で自分のあり方を決められるとき」

次にこの連載「〈女性であること〉についての覚書」を担当する人への質問
「女性にとって次なるステップとは?結束したグループとして、女性たちはどんな挑戦に挑んでいくべきだと思いますか?」