LAミュージシャンたちが集う、小さな隠れ家

ブラッド・エルターマンが最新の写真集で、自宅「Villa Le Reve」へとわたしたちを誘なう。

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okt 11 2016, 8:35am

あなたもきっと、ブラッド・エルターマン(Brad Elterman)が撮った写真をこれまでどこかで目にしたことがあるはずだ。キスをするジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンや年代物のベンツに乗るデヴィッド・ボウイ、フライドポテトを食べるジョーン・ジェットなど、彼の写真はカリフォルニアの空のもとロックンロールのアイコンたちが見せるナチュラルな一面を鮮烈に捉えた作品ばかりだ。LAに生まれ16歳で有名人を撮りはじめたエルターマンは、ひとびとの遊び心が覗く瞬間を捉えるたぐい稀なるその才能で、広く"伝説的写真家"と讃えられてきた。

今回の写真集で、エルターマンは彼の有名な自宅へと私たちを招待してくれている。彼の邸宅はマティスが暮らした南フランスの邸宅、Villa le Reveを彷彿とさせる造りで、発売された最新写真集も『Villa La Reve』と名付けられている。ランジェリー姿でロゼのボトルを手に持ったキャロライン・ヴリーランドや服を着たままプールに入るジェレミー・スコットなど有名人が次から次へと登場する『Villa La Reve』は、マティスのVilla la Reveに負けず劣らず魅惑的な世界だ。

"Villa le Reve"を見つけた経緯を教えてください。
1989年に「俺のご近所さんが家を売りに出すらしい」と、いとこが教えてくれたんだ。そして「買って貸そうぜ」って提案してきた。サンセット大通りから少し丘を上がったところにある小さなバンガローだから、ヴィラと呼ぶのもおこがましいんだけどね。だけど見たらすぐに魅了されて、いとこの提案もいけるかもしれないと思った。それでほんの少額の前金を支払って、あとは人生をかける勢いで銀行から金を借りた。その直後に不動産市場が崩壊したんだ。そのタイミングでこの家を買って、いとこと僕がここに引っ越した。それ以前は何年も同じアパートに暮らしてたから、感情的にも大きな変化だった。この家に暮らすのも一時的なものと考えて引っ越したけど、結局はずっとここに住むことになった。10年後には隣の土地を買ってヨーロッパ調の庭園を作り、プールも作った。庭はまだ完璧じゃなくて、作って15年経った今ようやく木が大きくなりつつある。十数年前、手をつけた当初はその後ここにどんなものが生まれるのか何もわからない状態だった。起こるべくしてすべてが起こったんだと思う。

名前はどうやって決めたのでしょう?
サントロペにあるホテル Hotel Le Yacaに影響されたのと、そしてもちろん名前はヴァンスにあるマティスの家からとったよ。昔からマティスは好きなんだ。彼の作品の美しさも、彼の家に出入りする裸の女神たちの美しさもね。以前、ヴァンスでマティスのヴィラを見て回ったことがあるんだ。全体的に修繕が必要な状態ではあったけど、それでも南フランスの優しい光が注ぐあの庭にはやはり素晴らしい何かがあった。その記憶は、自分が庭を作る段になったときいつも心にあった。そして10年後、ウェブサイト「PURPLE」のDiaryコーナーで作品を発表するようになって、そこでここをVilla le Reveと呼ぶようになったんだ。大きな家ではないから正確にはヴィラじゃないけどね。静かで平和でプライベートな空間——僕にとってはこれがヴィラなんだ。

なぜあなたの家を訪れると皆そろって服を脱ぎたくなるほどの開放感を感じるのでしょう?
ヨーロッパ調の空間にいると、みんな落ち着くんじゃないかな。

訪れた人たちが淫らに盛り上がったりしてしまったことは?
1度か2度くらいはあったかな。でも最近じゃ僕ももうだいぶ大人になった。20代の頃にこの家とプールを手に入れてたら!って思うよ。

女優チェルシー・シュックマンのキャリアはあなたの写真から始まったそうですね?
あれはタイミングが良かったんだ。プールの工事をする男たちのなかにトップレスのチェルシーがいるっていうキュートなストーリーがあった。チェルシーはハッとするほど綺麗で、カリフォルニアのイメージそのもの。それに純真無垢な雰囲気があって、あの写真はそのすべてが捉えられていたんだ。男たちには何が起こるかを事前にちゃんと説明して「ジロジロ見るんじゃないぞ!」ってさんざん言って聞かせなきゃならなかったよ。「PURPLE」であの写真とストーリーを発表したら電話がなりやまなくなった。それから彼女のキャリアが始まったんだ。

本を作る原動力となったものは?
Villa Le Reveは僕の人生においてとても大きな意味を持っているんだ。そして僕はこの小さな家に大きな誇りを持ってる。ロサンゼルスは「more is better」つまり"多くを持っていることこそ豊かさ"という価値観の街だ。大きくてもセンスがなくて下品な家がたくさんある。でも、僕にとっては小ぶりで落ち着けるほうがベターなんだ。この写真集は、Villa Le Reveとそこに来てくれて写真を撮らせてくれた素晴らしい友人たちを讃える作品。彼らとの思い出は僕にとってかけがえのないものだよ。

Credits


Text Paige Silveria
Photography Brad Elterman
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.