ゾーイ・クラヴィッツ、お墨付きの女の子

シンガー、女優、ファッションアイコンと多様な顔を持つゾーイ・クラヴィッツ。著名な両親のもとに生まれた彼女は、今ようやくそのイメージから脱し、自らの力で羽ばたこうとしている。そんな彼女が、ハリウッドでの政治的名声や人種差別について、心の内を明かす。そして、様々な経験を経た彼女がたどり着いた心の境地とは。

by Tish Weinstock
|
03 August 2016, 5:45am

Bra Alexander Wang. Rings Repossi

Zoë wears T-shirt Off-White c/o Virgil Abloh. Briefs Araks. 

Bra Alexander Wang. Shorts Calvin Klein Jeans (customised by stylist). Earrings Delfina Delettrez. Necklaces Jennifer Fisher. Rings Repossi.

Bra Yeezy. Jeans vintage Levi's from What Goes Around Comes Around NYC. Earrings Delfina Delettrez. Necklaces Jennifer Fisher. Rings Repossi.

Top Model's own.

Jacket and dress Saint Laurent by Hedi Slimane.

「誰でも一度は悩むことよね」。電話口から聞こえるLAからの彼女の声には清々しささえ感じられる。「自分の身体に不満があるのは当たり前のこと。でも、完璧でなきゃいけないっていうプレッシャーを与えられるのは不自然だと思うの」。ゾーイ・クラヴィッツ(Zoë Kravitz)は小さな頃から、自分は他の子と違うと感じていた。彼女が5歳の時、両親のリサ・ボネットとレニー・クラヴィッツが離婚。11歳までLAで母親のボネットと暮らし、その後マイアミにいる父のもとへ移った。「パパはいつも、スポーツカーで学校まで迎えに来てくれたんだけど、みんな駆け寄ってきて大騒ぎになってたの。すごく変な気分だった」と彼女は言う。有名人の両親は、人格形成の途上にあった彼女に圧迫感を与えた。「子供の時って、その環境に溶け込もうとするでしょう?」。少し考え込んだ後、「新しい学校に行くと、私が転校してくることをみんながすでに知ってるの。私のパパが誰かってことも」と彼女は続けた。両親が有名人だというだけで友達になろうと彼女に寄って来る子もいれば、それを理由に避けられることもあった。周りは、ゾーイの印象を彼女の両親をベースに築き上げていったのだ。それは、まだ幼く自分が何者かわからない彼女にとってはつらいことだった。

ゾーイが目立っていたのは両親が有名だからというだけではない。白人が大半の学校で、アフリカ系とユダヤ系の血筋を持つ彼女は珍しかったのだ。「自分の身体と折り合いをつけようとしていたの。思春期ってみんな自分の身体が気になりだすでしょ。背が高くないとか、ブロンドじゃないとか、痩せていないとか」と彼女は話す。この"欠如"の感覚が、10代の彼女を拒食症に陥らせたのかもしれない。

彼女に転機が訪れたのは、NYに移り住んだ15歳の時だった。舞台の世界に魅了された彼女は、1年後には事務所に所属し、オーディションを受けるまでになっていた。ここでも、両親の影が顔を覗かせる。「親の存在が影響していたのは確かだと思うわ。でもだからこそ、一生懸命努力したの」と彼女は自覚的だ。親のおかげでチャンスが広がったことを認めるタレントも珍しいが、それが彼女の決断だった。そして、生まれ持った才能によってゾーイはそのチャンスをさらに広げていく。

彼女は16歳の時、ニール・ジョーダン監督の映画『ブレイブ ワン』(2007)でデビューし、ジョディ・フォスターと共演を果たした。そして現在26歳の彼女は、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(2011)や『ダイバージェント』(2014)、『ドープ』(2015)など、超大作からインディーズ映画まで幅広い活躍を見せ、今をときめく女優へと成長した。なかでも印象的なのは、ジョージ・ミラー監督が手掛けた『マッド・マックス: 怒りのデス・ロード』(2015)だろう。彼女はイモータン・ジョーに仕える5人の妻のうちのひとりを演じている。終末的な世界観を持つこの大作の撮影について「ジョージには私たちに『こう演じてほしい』っていう明確なヴィジョンがあった」と、ゾーイは語る。「何カ月も人がいない場所で過ごすの。映画の世界にどっぷり入り込んだわ。あれは、経験してみないと絶対にわからない世界だと思う」。彼女は、もう親のひいき目で見られるレベルではなくなっていた。「監督にとって私が何者かなんてどうでもいいことなの」。彼女は言い切った。「レニー・クラヴィッツの娘を採用したところで、彼にはなんの利点もないでしょ。私がどんなに頑張ったか、演技を観ればわかってくれるはず」。その若さにもかかわらず、ゾーイはハリウッドの作法も冷静にとらえている。「ハリウッドは、高校よりずっとファンシーよ」と笑いながら話す。様々な役を演じる彼女だが、どんなオファーも無差別に引き受けているわけではない。例えば、いわゆる"主役の親友役"や象徴的に配される黒人の女の子といった、"人種"が求められるような役回りは受けない。そういった姿勢は『ブレイブ ワン』でロシア人女性という設定だったクロエの役を演じたことにも顕著にあらわれている。しかし、初めから順調だったわけではない。『ダークナイト ライジング』(2012)では、"洗練"されすぎているという理由で、小さな脇役すらもらえなかった。「気が滅入るくらい、世界には本当にたくさんの人種差別がある。ある意味、興味深いことだけど。面接までは通るのに、そこで落とされる若い黒人女性が大勢いると思うわ。落とされた理由も知らされないの。特にエンターテインメント業界の人は、残酷なほど露骨よ」と彼女は話す。

彼女の次なる挑戦は、ハリウッドを代表する女性になることだ。2016年アメリカで公開された映画『Vincent N Roxxy』ではヒロインのロキシーを演じ、エミール・ハーシュと共演した。「ロキシーはこれまで見たことがないくらい、強さを持った黒人だったから、この役を演じたいと思ったの。映画のなかの女性はたいてい、男性のアクセサリーみたいな扱いでしょ? 男の人が監督する場合は特に。性的な対象じゃない、生き生きとした女性のキャラクターは本当に少ないの」。『The Road Within』(2015)では、また異なる役を演じてみせる。自身の体験にも似た、拒食症のマリー役を演るために、ゾーイは体重を40 kgまで落とした。肋骨がはっきり見えるほど痩せて、免疫力は落ち、帯状疱疹が出たという。その時から、彼女のなかで何かが変わった。「ありのままの私を受け入れることにしたわ。自分で自分を憎むことに疲れたし、他人や憧れてもいない人と自分を比べるのはもううんざりよ」と彼女は言う。

本格的に音楽活動を始めたのはその頃だ。本業の合間をぬって、親友のジェームス・レビーとジミー・ギアノプーロスとともにレコーディングを行い、バンド「Lolawolf(ローラウルフ)」を結成した。「音楽はいつでも私を救ってくれた」。ゾーイは懐かしげに語る。「小さい時、共感できる曲を聴いて、ひとりじゃないって思えたの。数年前、音楽を作るようになって、私の人生は変わったわ」。異母兄弟の名前に由来したこのバンドは、2014年にR&BとエレクトロポップをミックスさせたEPをリリース。これが瞬く間にヒットし、その後すぐにアルバム『Calm Down』を発売した。「反響はすごかった。素晴らしいファンに恵まれているの。彼らは、ライブに欠かさず来てくれるし、何より私たちの歌を理解してくれる」と彼女は興奮気味に語る。その年、Lolawolfはリリー・アレンやマイリー・サイラスとともにツアーも行った。マイリーはその後、このバンドの「Bitch」のプロモーションビデオに出演したが、それがゾーイと現在のボーイフレンド、ツイン・シャドウとが出会うきっかけとなった。「人としてもアーティストとしても、ゾーイは成長し続けている」とバンドメンバーのジャンノポロスは語る。「スタジオでは完成度を高めるためのやりあいがあるんだ。いつも彼女が勝つんだけどね」

大人になるにつれて、彼女は音楽以外でも自分を表現するようになっていった。今や、スタイルセッターとしても注目されている。「ファッションは表現の媒体なのよ」と彼女は言う。「何を考えているか、何を表に打ち出していきたいかを映す面白い手段だと思うわ」。母親にそっくりなクラヴィッツだが、彼女のスタイルは、父のロックンロールスタイル譲りだ。髪は腰に届くほど長く、編み込みをしている。バイカーブーツにルーズなロングワンピース、引き裂いたデニムショートパンツとそれに合わせたタンクトップ、90年代のチョーカー、そして黒々とした瞳……。クールそのものだ。彼女は、NY ファッションウィークの常連でもある。交遊があるアレキサンダー・ワンが、ゾーイをBALENCIAGA2016年春夏のモデルとキャンペーン広告に起用したのを機に、ファッションアイコンとしての評判も高まっていった。「モデルじゃないんだけどね!」と、彼女はすかさずクギを刺す。

長身、スリム、白人、ブロンドといった業界の支配的な"美の基準"に当てはまらないゾーイのような女性たちが、ファッション界に登場することの意義にも意識的だ。「これが私を動かすモチベーション。今まで注目されてこなかった女の子たち全員を代表する存在になりたいの」。私たちも自らの価値観を見直すべきなのかもしれない。人種やセクシュアリティ、そして美についての既成概念に対する挑戦なのだ。モデル業としてだけではない。彼女はその全人生を通じてそれに立ち向かっているのだ。「彼女たちが広告キャンペーンや映画、音楽のステージで活躍しているところを見てみたい。それがモチベーションになっているわ。みんなが人種に関係なく、活躍しているとは言えない状況だから」と話す。

現在、バンドとしての2枚目のアルバムを作っている彼女は、ニコール・キッドマンやローラ・ダーンなども出演している人気テレビシリーズ『Big Little Lies』にも出演中だ(「毎日、最高の演技を学べるのよ!」)。両親のイメージを完璧に払拭したゾーイは、より一層輝きを放っている。さらに有名になる準備はできている? と聞いてみると、「有名になることの不条理さってあるでしょ。プライバシーがなくなったり、社会から疎外されているように思ったり。無名だった頃の生活を失うのよ。コーヒーを買いに行くだけでも前とは違う。店の隅で私の噂をしているのが聞こえても、平静を装ったりね」と彼女は話す。世間と同様、ソーシャルメディアは彼女の悩みの種になっているようだ。「前に私の投稿が、人々の気に障ったことがあって。何か言い返すか、説明をしたかったの。だけど、忘れちゃいけないのは、みんなは私のことじゃなくて、それぞれが思い描いた"イメージ上の私"について喋っていたってこと」と彼女は言う。本当の彼女は、もっと素直だ。「完璧で、1番クールで、1番可愛くなるためにやっているんじゃない。私はこれまでも、そしてこれからも私だから」

Credits


Photography Matt Jones 
Styling Carlos Nazario 
Text Tish Weinstock
Hair Leslie Bennett using Tara Smith Haircare
Make-up Kara Yoshimoto Bua at Starworks using CHANEL S/S 2016 and Rouge Coco Style
Styling assistance Julian Dartois
Tailor Hasmik Kourinian
Shot on location at The Chateau Marmont, Los Angeles
Translation Aya Tsuchii