スケート少女から写真家へ

女性スケートシーンの物語とスタイル、そしてトリックをハンナ・ベイリーが語る。

by Tish Weinstock
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06 September 2016, 4:49am

Stefani Nurding, Copenhagen

エディンバラに生まれ育ったハンナ・ベイリー(Hannah Bailey)は、周囲の子供たちとなんら変わらない普通の子供だった。しかし、20歳を迎えたベイリーは、そんな自分を捨て、フレンチアルプスへと向かった。そこでスノーボードの世界にのめり込んだ彼女はイギリスへと戻り、アクションスポーツの世界でキャリアを築くべく、アドベンチャーに特化したコミュニケーションとクリエイティブのコンサルタント会社Neonstashを立ち上げた。この仕事を通じ、ベイリーはアンダーグラウンドシーンとの衝撃的な出会いを果たし、それらをカメラに収めはじめた。しかし彼女が写真に捉えたのはスポーツそのものというよりも、スケートやスノーボード、サーフィンの世界を彩る自由奔放な選手たち、特に女性の選手たちだった。ベイリーの最新プロジェクト『The Free Life; Skate Stories』は、女性スケーターたちを集めた素晴らしいアナログ写真のシリーズ。このプロジェクトは彼女にとって大きな意味を持っている。そこには、社会がもつ"女性であること"についてのゆがんだ概念も、メディアが褒めそやす非現実的な美の理想像も一切ない。ベイリーは、女性性を真に表現し、そこに捉えたスケーターの女性たちを女の子たちの新しいロールモデルにまで押し上げている。このシリーズが公開されたロンドンのLomography Gallery Storeで、彼女に話をきいた。

Lois Pendlebury, Stockwell

フォトグラフィーの世界に足を踏み入れた経緯について教えてください。
アクションスポーツの世界で働いていたとき、そういう写真を撮る機会がいくつかあって、そこからです。自然、そして限りない自由という感覚が重要な意味を持つカルチャーにどっぷりと浸かって、常に魅力的なアスリートや冒険家に囲まれていましたから。最初はただ楽しくて撮っていたんです。プロの写真家になろうなんて思わず、ただストーリーを伝えたいという思いで撮っていました。そこに2012年、Lomographyから「Go Stake Day(スケボーの日)企画で写真を撮ってみないか」というオファーをもらったんです。6部構成で、クルー、父、女の子、ビギナーという全く違う視点からスケボーをドキュメントするという企画でした。今回の新しいシリーズ『Skate Stories』は、ルーシー・アダムズ(Lucy Adams)からレイシー・ベイカー(Lacey Baker)まで、私が過去4年にわたって撮り収めてきたスケート界の女性たちの写真を集めたものです。

ご自身が打ち出す美をどのように説明しますか?
チャンスを捉えるというのが私の手法です。まず、イギリスの女性スケートシーンのパイオニア、ルーシー・アダムズがスウェーデンのマルメに私を誘ってくれて、それを機にスケボー写真を撮ることになったんです。フィルムで写真を撮ると、仕上がりは現像するまでわからないし、だからこそそこには"スケートボーディングとは何か"が如実に捉えられることになるわけです。キメの粗いフィルム写真だと、コンクリートの凹凸やスケーターの動きが全て捉えられるので好きですね。

Helena Long, London

スポーツ界の女性への興味はどこから湧いてくるのでしょうか?
常に目指しているのは、アクションスポーツ界の女性に、アスリートとして、そして人々にインスピレーションを与えるロールモデルとして、スポットライトを当てることです。スケボーやサーフィン、スノーボードは人生を変えてくれる。"今を生きる"ということを教えてくれるし、自分を誇りに思ったり、自分を笑うことも教えてくれる。それに帰属する先を与えてくれるカルチャーでもある。だから、自分に自信がない女の子の手助けにもなると思うんです。

Lois Pendlebury, Stockwell

写真に捉えられている女性たちについて、何をもっと伝えたいですか?
写真を通して、女性スケートボーディングのスタイルを前面に出したいと思っているんです。女性スケートボーディングのシーンはここ4年でかなり大きくなったけど、今は"ウィメンズ・スケートボーディング"、"女性版スケボー"って言われたりしているんです。あたかも、そんな風に単純な括りでその世界を表現できてしまうかのようにね。ヘレナ・ロング(Helena Long)からステファニ・ナーディング(Stefani Nurding)に至るまで、このシリーズに収められた女性スケーターたちは、それぞれが違った動機にスタイル、トリックを持った、独立した個人なんです。

Lacey Barker, LA

スポーツ界の女性たちに関する1番の誤解とはなんでしょうか?
社会もメディアもステレオタイプを描き出したがる傾向にありますよね。スポーツ界の女性たちを、例えば"おてんば娘"とか"男役のレズっぽい"とか、"女性にしては上出来"とか、そんなイメージで描きたがるでしょう?スケボーはまさにそんなステレオタイプのレッテルが貼られている世界なんです。でも、本当は男だろうが女だろうが関係なく、スケーターはスケーターで、要は個人の集まりなんです。スケートパークにはさまざまな能力を持った幅広い年齢のスケーターがいる。ここまで多様性に富んだスポーツはないと私は思いますね。だからこそ、スケートはスポーツ界の女性に関するステレオタイプや誤解を打ち崩すパワーを持っていると信じています。どう見えるかではなく、スケボーはあくまでも"何をやるか"なんです。

Samaria Brevard, LA

2016年、女の子であることの最高の魅力とはなんでしょう?
今、女性であるということは本当にエキサイティングなことだと思います。世界的に見ればまだまだ不公平はたくさんあるけれど、女性への尊重に関する認識はこれまでになく高まってきていますから。若い世代には"女性としての成功"像が幅広く示されるようになってきたし、彼女たちは社会からの期待に萎縮する必要もないように思えます。ここ数年で、女性同士の支え合いには変化が見られるようになってきましたね。皆で団結したことの結果だと思います。私には、私をサポートしてインスパイアしてくれる女友達がたくさんいます。その多くは、The Free Lifeというアドベンチャークルーのメンバーです。女性をサポートするイベントや集団もどんどん増えているから、今ほど女性としてパワーを感じたことはありません。

Lucy Adams, Sussex Crawley

今後の希望や夢について聞かせてください。
作品には常に目的を持って取り組んでいて、個人的には、自分に自信が持てない女の子たちのためになりたいという思いが強いです。アクションスポーツに限らずスポーツ全般に言えることですが、容姿など関係なく、今という瞬間を完全に生きるということが大切とされています。スポーツに取り組むというのは精神的にも身体的にも健康的なこと。スポーツはバランスと幸福感をもたらしてくれるんですよね。だからこれからも、スポーツを通して世界中の女の子たちに働きかけていきたいです。フォトグラフィーは、ポジティブなロールモデルを打ち出して女の子たちをインスパイアするひとつの手段で、またそういったメッセージを伝えていくコミュニケーションの手段でもあります。加工修正されたモデルじゃなく、リアルな女性をもっと世の中に示していきたい。女性スケートボーディングへの興味は高まってきていて、2020年のオリンピックでは競技として開催されることにもなっているから、チャンスは大きくなっていくばかりです。女性スケートボーディングやアクションスポーツが浴びるべき脚光を浴びることに、私が少しでも貢献できていたら嬉しいです。

Lacey Baker, LA

Samaria, LA

Stefani Nurding, Copenhagen

@NeonStash

Credits


Text Tish Weinstock
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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