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ジュディ・ブレイムのZINE『Riot De-Luxe』と回顧展

ICAでの回顧展がクローズすると共にオリジナルのZINEをリリースした、ファッション界の巨匠ジュディ・ブレイム。勢いの衰えなど無縁のジュディが作る雑誌のアナーキーな中身を、少し覗いてみよう。

by Felix Petty
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27 September 2016, 9:59am

過去35年間、スタイリストとしてもディレクターとしても、インスピレーションとしてもコラージュ・アーティストとしてもデザイナーとしても、i-Dのスピリットを明確に世に示してきたのは、他の誰でもなくこのジュディ・ブレイム(Judy Blame)だと言い切っても差し支えないだろう。本誌で初めてアレキサンダー・マックイーンを撮ったのも、初めてジョーダン・ダンを撮ったのもジュディだった。そして、マーク・ルボン(Mark Lebon)ともタイロン・ルボンとも仕事をするなど、彼は世代を超えて常に第一線でファッションを作り上げてきた。

一般的な視点で見ても、彼の影響はやはり絶大だ。イギリス・ファッションにおいて、ジュディほどインパクトを持つ人物はそういないだろう。Buffalo、そしてThe House of Beauty and Cultureで、ジュディは「恐れることなくファッションの革新を推し進める中心的人物」として、過去20年間、心血を注いできた。ボーイ・ジョージからビョーク、ネナ・チェリー、デュラン・デュランなどのポップスターがファッションとオーバーラップできるような、自由で爆発的で破壊的な空間をジュディは作り出してきた。そして彼のジュエリー作品も忘れてはならない。ジュディはゴミ同然のものも宝石に変えてしまう力を持ち、実に優雅に奇妙な美しさの作品を作り出す。その美しさは、Louis VuittonやGallianoがコラボレーションを熱望したほどだ。

そんなジュディの功績を讃えるべく、ロンドンのICAで彼のエキシビションが開かれた。「このショーの趣旨は、私がどうアイデアを具現化していくかを見せることにあった」とジュディは説明する。彼の作品は、アイデアとフォルムがぶつかり合って生まれる。交わることがなかった線が交わったところ——そこに新たな美しさを生むのがジュディだ。「このエキシビションを見に来るひとたちには、たとえ僕の作品を知らずに来たとしても、僕がどんな風に作品を作り上げていくのかを、感覚的に感じ取って帰ってもらいたいんだ。特に今の若い世代は機械でアイデアを具現化できてしまうわけだけど、彼らには僕が手作りでどうアイデアを具現化しているのかを見てもらいたい」

この回顧展は、ジュディの作品とキャリアを親密な視点で見つめた内容だったが、その中核を成していたのは、ファッションと音楽がオーバーラップするだけではなく、性や人種の多様性とその受け容れを世のなかに促進する場所——政治や通念を問い直してよりフェアな未来を思い描くための場所を作り出す、音楽とファッションの存在だった。この回顧展には通常のカタログではなく、ジュディのコラージュや政治的スローガンなどの作品を収めた雑誌形式の本が用意された。そこには、環境問題から銃規制の問題まで、ジュディが共鳴する善行の訴えが収められている。

「このショーには、カタログを作るほどの予算がなかった」とジュディは説明する。「でも"見に来てくれるキッズに僕の創作の裏側を少しでも感じてもらえるものを"とアーカイブから色々と引っ張り出してきたんだ」。ファンZINEの形式をとったこの雑誌は、そこらのアートカタログよりもずっとジュディらしい。「このフォーマットは僕の起源だからね。これを現代でやってみたいという気持ちはずっとあった」

そうして、この『Riot De-luxe』は出来上がった。ジュディのアーカイブやスクラップブックから切り取られ、寄せ集められた作品には、ユルゲン・テラーやジャン・バプティスト・モンディーノ、サイモン・ファウラー、マーク・ルボンらによる寄稿から、バックにはあのadidasの3本ストライプ、表紙にはエリザベス女王の顔がたくさんの安全ピンで飾られた写真が配されている。adidasの存在なしに、この回顧展開催はありえなかったとジュディは語る。「adidasのゲイリー・アスプデン(Gary Aspden)にこのプロジェクトの話をすると、彼はこのファンZINEのアイデアをとても気に入ってくれて、制作と印刷の部分で大きく手助けしてくれたんだ。僕が25年間adidasのスニーカーを愛用してきたことも、作品のなかで多くadidas商品を使ってきたことも、adidasのグラフィックをこのZINEでも多く使うこともすべて分かって、力添えしてくれたんだと思う」

「ジュディ・ブレイムを象徴する3作品を挙げるとすれば」とジュディは、ZINEについて説明する。「まずはスカーレット・ナポレオン・ボレデッロ(Scarlett Napoleon Boredello)が、僕の初期ジュエリー作品、ブラックビーズのジュエリーを身につけてくれている写真かな。もうひとつはi-Dの表紙で、グレース・ボルの写真。僕がさまざまな要素をミックスして写真を作り上げる手法がよく解る作品だと思う。もうひとつは、僕自身がファッションの犠牲者を体現している写真かな」

「僕のグラフィックのスタイルは強烈。今まで見たこともないような手法で何かをやってみたかった」とジュディは言う。「昔のポラロイドやコンタクトシート、過去に僕が作ったスローガン作品を使ったんだ。思い出は大事。だけど、いつまでも過去の作品で語られるのを好むほど、僕は暇じゃない」

ジュディらしく、今回のエキシビションでの収益金はすべて、「重病を抱えて生まれてくる子供たちとその両親たちに支援を」と聖メアリー病院が立ち上げたMore Smiles Appealへの寄付に充てられる。となれば、このZINEを買わない理由などもはや見当たらないだろう。「ZINEの最後に載せた手紙を読めば、なぜ僕がこのエキシビションの収益をこの団体に寄付しようと考えたか分かってもらえるはず。声を上げるべきときが来たらすぐに次のZINEを出せるように、チャリティやさまざまな抗議のコンセプトを色々と考えているところだよ」

『Riot De-Luxe』を購入するにはこちら、More Smiles Appealに寄付をするにはこちらへどうぞ。

Credits


Text Felix Petty
Images courtesy Judy Blame 
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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