Courtesy of Sony Pictures Classic

『君の名前で僕を呼んで』ファンに捧ぐ、i-Dが選ぶ27のオススメ作品

『君の名前で僕を呼んで』好きならハマること間違いなしのテレビ番組、書籍、ブランド、映画、アート、音楽を紹介。

by André-Naquian Wheeler; translated by Ai Nakayama
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16 April 2019, 2:34am

Courtesy of Sony Pictures Classic

君の名前で僕を呼んで』は恋愛映画であり、ある種のムードボードでもある。アンドレ・アシマンによる2007年の小説を原作とし、ルカ・グァダニーノ監督が手がけた本作のいかにもミニシアター映画的なヴィジュアルや長回し、80年代を象徴するポップソングに偏向したサウンドトラックに触れた私たちを満たすのは〈生の歓び〉だ。上映終了し映画館を出る頃には、本作が描く愛、恋のかけひき、茶目っ気をまた味わいたいと願わずにはいられない。ここまで人生のすばらしさを思い出させてくれ、もういちど愛を信じてみたくなる映画に出会う機会はなかなかない。

きっとあなたも、エリオとオリヴァーの恋の続きをもっと観たいと望んでいることだろう。グァダニーノ監督は『君の名前で僕を呼んで』の続編について何度も期待させるようなことを述べているが、それがいつになるかはわからない。そこでi-Dは『君の名前で僕を呼んで』を彷彿とさせるような音楽、映画、テレビ番組、書籍、ファッションブランドを集めてみた。そのムードボードに登場するのは、ジェームズ・ボールドウィンやアラン・ホリングハーストによるクィア文学の重要作品や、 自らのラブストーリーを語るPalomo SpainやJacquemusのデザイン、トロイ・シヴァンSZAによるやさしい音楽。ぜひ、桃を用意して楽しんでほしい。

〈テレビ番組〉
『LOOKING/ルッキング』の主人公、パトリックの波乱万丈な恋愛模様は未来のエリオの姿かもしれない。孤独な故郷の町を出て、ゲイのメッカで暮らし始め、クィアの友人たちをつくりコミュニティを形成する。本作の舞台は『君の名前で僕を呼んで』の北イタリアに負けずとも劣らず牧歌的だ。空まで伸びるようなオークの木、年中輝く太陽、サンフランシスコのにぎやかな街並みは、美しい背景として機能している。甘やかなキスや温かいハグもたっぷりだ。

『プリーズ・ライク・ミー』や『SKAM』など、クィアのアイデンティティの形成期に焦点を当てた作品も。この2作はどちらも、非米国製(前者はオーストラリア、後者はノルウェー)で知るひとぞ知る作品だ。『プリーズ・ライク・ミー』の原作を書いたのは、主人公ジョシュを演じているキュートな変わり者、俳優ジョシュ・トーマス。彼は青春時代の厄介な部分にフォーカスし、鬱、自殺、双極性障害などのシリアスなテーマに真っ向から取り組みながら、『君の名前で僕を呼んで』のどこか軽やかな雰囲気をも取り入れている。若者たちはメルボルンのナイトライフ・シーンを行き交い、友人同士でしょうもないいたずらをしかけあう。シーズンごとに主人公が変わる『SKAM』のシーズン3では、自分がゲイであることを認めようとしないイーサックと小悪魔男子エヴンの、ファンの想像力を刺激する恋愛模様が描かれた。ふたりのラブストーリーは、1996年のバズ・ラーマン監督による『ロミオ+ジュリエット』のヴィジュアルを元ネタにした場面もあり、エリオとオリヴァーの恋のようにドラマティックかつ儚い。

〈書籍〉
1988年に発表されたアラン・ホリングハーストの小説『スイミングプール・ライブラリー』は、『君の名前で僕を呼んで』の雰囲気に似た、けだるい日々の記録だ。舞台は80年代初頭、エイズがLGBTコミュニティを永遠に変えてしまう直前。上流階級の白人男性で、25歳のウィルが主人公で、彼はあてもなく次々と関係を結んでいく。『君の名前で僕を呼んで』同様、セックス、動揺する心、アイデンティティの赤裸々な描写が光る。ジェームズ・ボールドウィンの『ジョヴァンニの部屋』では、クィアの恋愛関係があぶり出す、登場人物たちの美点と欠点が描かれている。エリオとオリヴァーのように、実に魅力的なジョヴァンニを暴きたい、自分のものにしたい、と望んだ米国人のデヴィッドは、当然のごとくジョヴァンニに溺れていく。2012年に刊行されたアンバー・ダーモントの『The Starboard Sea』にも、『君の名前で僕を呼んで』と近い要素が見い出せる。自分がクィアだという事実と向き合うバイセクシュアルのティーンエイジャーを抽象的な表現で描いた作品だ。しかし本作の主人公ジェイソン・プロスパーを、親友でありセーリングのパートナーであるカルを自殺で喪うという悲劇が早々にして襲う。私たちが目にするのは、恋をしていた相手の喪失を乗り越えようと奮闘するジェイソンの姿。幸せの絶頂にあるエリオとは正反対だ。

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From left to right: Palomo Spain, Jacquemus, Saint Laurent

〈ファッション〉
大胆なシルエットのビーチウェアが、『君の名前で僕を呼んで』の舞台となった海辺の町を想起させるJacquemus。赤いバラが施されたジェンダーフルイド的なドレスでロマンティシズムやクィアネスの幸せを享受するかのようなPalomo Spain。いっぽう、Tom Fordのスーツの男性的なシルエットやクラシックな雰囲気は、オリヴァーのカジュアルで自然体な清潔感を彷彿とさせる。エディ・スリマン期のSaint Laurentで発表された80年代インスパイアのスキニータイ、レザージャケット、アイライナーをまとったスリムな男性モデルたちは、映画のクライマックスに登場するパンク風のエリオにどこか似ている。

〈映画〉
ルカ・グァダニーノ監督は『君の名前で僕を呼んで』において、いろいろと視覚的な遊びを取り入れているが、そのなかでも衝撃的なのは、濃いオレンジとブラックの、写真のネガ風の回想シーンだろう。そういう意味で、グザヴィエ・ドラン監督の『胸騒ぎの恋人』、エリザ・ヒットマン監督の『ブルックリンの片隅で』、ギャスパー・ノエ監督の『エンター・ザ・ボイド』などは類似作といえる。また、男性同士の強い結びつきが性欲として発露するさまを描いたアルフォンソ・キュアロン監督による『天国の口、終りの楽園。』、1960年の『太陽がいっぱい』の色調整がされた深い青色の海とビーチを映したシーンも、『君の名前で僕を呼んで』を想起させる。

〈アート〉
若いクィア男性の日常を切り取る写真家のライカー・アレンやセルジュ・ル・イダルゴのポートレートは、優しい光が印象的で、優しさや親密感を醸し出す。肉体的な特徴に偏執的にこだわる彼らは、エリオ同様、望みのない恋愛感情を持て余しているかのようだ。鎖骨、髪、腕など男性モデルたちの見落とされがちなパーツにズームインするセルジュ・ル・イダルゴ。ほろ苦い感情を映し出すレンズで愛を見い出そうとするライカー・アレン。ライカーは、恋人と別れたあと、元恋人とともに行ったモントリオール旅行を記録した写真集も出版した。

〈音楽〉

This article originally appeared on i-D US.