ジョージ・ヘンリー・ロングリー interview:アートよ、大胆に

ジョージ・ヘンリー・ロングリーの世界で跳べ。パレ・ド・トーキョーで展示会を開いて、公立美術館でのデビューを果たしたGHLは止まらない。

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apr 23 2018, 8:32am

This article originally appeared in The Radical Issue, no. 351, Spring 2018.

アートと友達になれるとしたら、ジョージ・ヘンリー・ロングリーがロンドンの〈Hoi Polloi〉に展示した大理石「ポスター」は、僕らの親友になるだろう。その作品は、作者がそうであるように、可笑しくて挑戦的で素晴らしい。評判となったこの「ポスター」シリーズでは、定番の材料、愉快なフォント、遊び心のあるイニシャル、選び抜かれた気の利いた挿入物(発毛剤の容器、YSLのメイク用の筆、笑気ガスの缶)が、型破りな使われ方をしている。

ジョージ・ヘンリー・ロングリーを表す「GHL」の文字と共に、そこには鮮烈な視覚言語が生み出され、完結した世界ができている。しかし、人がそうした作風に慣れ始めると、彼は作品を変化させる。人は戸惑い続け、心落ち着かない。「僕は一種類の視覚言語にこだわれないって気がついたんだ」と彼は語る。「同じ作品をずっと作りたいわけじゃないんだよ。僕のスタイルはわかってもらえると思う。でも僕のアプローチにもいろいろあるんだ。何をする場合でも心の声を聞くことが大事。自分の世界を広げて前に進むには、自分を信じないといけない」

2018年2月、GHLは大きな飛躍を遂げた。これまで以上に大きくアートを展開すべく、公立美術館で初めて大規模な展示会をしたのだ。場所はパリにある「パレ・ド・トーキョー」という美術館らしくない美術館。そこでは、この時代の大胆さとは何かを目撃でき、生まれつつあるあらゆるアートを体験できる。GHLの作品には最高の会場だ。そう、大胆なアートを讃える空間なのだ。

ダルストンのリドリー・ロード・マーケットに彼のスタジオはある。その外では、ハラルの肉屋が店を閉めようとしていて、ダンスホール向けのミックステープの残り1つが買われていった。彼は10年近くこの場所で制作してきた(そこでのアフターパーティは語り草となっている)。その一帯は再開発からほとんど免れているし、近所のアーティストたちは高級フラットの建設を理由に追い出されてもいない。そんな風景を見ると嬉しくなる。GHLはありえないほど緻密な3Dのレプリカを使って、次の展示会を説明してくれた。彼は2017年1年、SketchUpでサクサクとデザインしていたのだ。

展示会のテーマは「テクノロジーによる自我の拡張」。彼は会場を操り、奇妙な「攻め」の空間を作り上げた。「荘厳さもほしいな。神みたいに、なんて言わせないでよ」と彼はニコニコしながら「うまくいくよ」と言った。展示会は自我とテクノロジーを扱いながら、インターネットカルチャーに言及する。だが同時に、「インターネットという爆発が続く領域に、静寂の空間を見つける」。その静けさの一部は、深海を監視した映像で観ることができる(彼は「ノーチラス・ライブ」というストリーミング作品で、海底をワイワイしながら見るのが好きなのだそう)。宇宙空間の探索もある—— 彼は放射能を集めるために宇宙に送られる人工的な人体に注目してきたし、〈The Tissue Equivalen(組織等価)〉という展示会の名はそこからきている。

この展示会は、パレ・ド・トーキョーがGHLをギメ東洋美術館との企画に誘ったことで動き出した。ギメ東洋美術館は日本の大名が身につけていたであろう精巧な鎧を彼に提供し、作品にしてほしいと依頼した。鎧の出自を徹底的にリサーチして面白みのない作品を作る、ということをGHLはしない。単に「オブジェとして鎧に秘められた力を評価する」ことにしたのだ。そして鎧をガラスケースから出して、宙に浮く台座の上に置き、「すべては宙吊りだ、すべては問われている」と提示した。

Artwork: George Henry Longly, Back To Me, 2014.

GHLはその大名の周りにさまざまな構造物を作って鑑賞者の動線に働きかけた。照明は変化し、音は変わり、いくつもの樽が回転し、101本の保安柱が障害となり、湾曲した床がすべてを中心から弾く。「構造物は絶え間なく変化する。すべては変化の中にあるんだ。人間は肉体によってモノと空間を体験するってことだよ」GHLはほかのアーティストの作品を鑑賞するときも、そんな方法をとる。「僕はギャラリーに行くと完璧な体験を求める。全部のメディアでそんな体験ができるわけじゃないけど、絶対何かを感じたい。僕は彫刻にも、人の動きにも関心がある。心を動かしてくれるものをいつも探してる。僕はそうやって物事を理解するんだ」。彼は、ニューヨークの現代美術館ディア・ビーコンでジョン・チェンバレンの彫刻やダン・フレイヴィンの作品の周りを歩くのが好きだ。「そういう体験をしながら、心に訴えるものや、強烈なリアリティを探してるんだ」

こうした渇望は、90年代の若い頃にパーティ三昧だった日々から始まっている。グラストンベリーのフェス、ブリストルのウェアハウスレイヴ、プリマスのクラブとドラッグは、彼をすっかり変えた。「一気にグラストンベリーにハマったよ。サマセットはすごく退屈だけど、フリーパーティとかクラブとかのせいで、間違いなく僕は変わった。こんなわけで、僕は強烈なリアリティに興味があるんだ。16のときにヤラれてからずっとそうだし、自分がなくなる感覚を知ってる人は多いと思う。限界を試してみなきゃね。ギリギリまでいかないと」

GHLが自らパーティを開く理由もそこにある。〈アナル・ハウス・メルトダウン〉。友人にしてアートティスト仲間のプリム・サヒブ(Prem Sahib)とエディ・ピークとやっているパーティだ。「僕たちは解放されたいんだよ。誰だってある環境をどうにかしようとしてて、その環境を変えようとしてるよね。展示会やショーをすることは、それとつながりがあるのかもしれない」。カクテル・ダモール(Cocktail D’Amore)のオマー(Omer)がベルリンから来てDJしたこともあったし、ピークがパフォーマンスをしたこともあった。「ゴミ袋のダークルーム」というイベントもあったし、サヒブのコックリングのフライヤーは最高だ。この3人組はロンドンでまず始めて、ニューヨーク、リオ、ベネチアや、ストロムボリ島の夜も盛り上げてきた。「楽しいよ。みんなをひとつにするからね」とGHLは語る。〈アナル・ハウス・メルトダウン〉の汗ばむパーティの常連には、GHLの友人のジェフリー・ヒントン、プリンセス・ジュリア、ネイサー・メイザーのほか、彼の陽気なボーイ・フレンドであるイラストレーターのジェイムス・ダヴィソンなどがいる。

こうした顔ぶれやパーティや思想は、「イースト・ロンドンはもう古い」という偏見を鎮める。今でもそこは、国じゅうで最も才能がひしめく場所なのだ。「すごいクリシェだけど、みんながごちゃ混ぜだからすごく面白いんだよ」とGHLは語る。「いつもワクワクする。この一角にある創造力は驚異的だよ。誰もが猛烈に突き進んでる。昔ながらの型を疑うし、そんなのはダサいって言い合ってる。そういうことが僕にはすごく大切なんだ。ワクワクすることのそばにいたいね」

George wears shirt Fendi. Trousers Balenciaga.

Credits


Photography Nadine Ijewere
Styling Nicco Torelli

Hair Hirokazu Endo using Bumble and bumble. Make-up Amy Conley at Stella Creative using CHANEL Rouge Coco Lip Blush and Serum Eye. Photography assistance James Gilbert. Styling assistance Pensira Kira Nakan. Production Roberta Arcidiacono.

This article originally appeared on i-D UK.