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東京ファッションウィーク19awで見逃せないブランド10選

令和ってまだ変換で出てこない。平成最後に知っておくべき10のこと。

by Tatsuya Yamaguchi
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19 April 2019, 9:00am

tiit tokyo.

ベスト・メッセージ アンド コラボレーション – KOCHÉ

ことさらフィナーレが素晴らしかった。坂本九の「上を向いて歩こう」が流れ、頭上にある足場にはダイバーシティをさらりと表現するKOCHÉを体現するさまざまなモデルが勢ぞろい。楽しそうに談笑したり、手を繋いで、肩を組んだりしている。愛や寛容にまつわるド直球のメッセージを放つピースフルな光景が、渋谷——あるいは東京——の中心地に生まれた夜だった。Merci!

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KOCHÉ. Photography Wakaba Noda.

AFWTのためのコラボ、その1。KOCHÉが映画『名探偵ピカチュウ』とコラボレーションするという心踊るアナウンスがあってから、本編にも登場するSHIBUYA TSUTAYAの屋上でのランウェイショーの全貌が気になって仕方がなかった。「カルチャーの垣根を超えて人が集う場所」とクリステル・コシェール。今年2月にパリのベルシーアリーナで発表されたフットボールウェアをクチュール的テクニックでリミックスしたコレクションに加え、ピカチュウの色(黄色・黒・赤!)やフォルムを繊細なレースなどを使ったラグジュリアスなミックスでアブストラクトに表現したエクスクルーシブなドレスがあった。どれだけ抽象化されてもピカチュウをピカチュウたらしめるものの強靭さよ!「ピカチュウには世界共通のイメージがあるよね」とクリステルが話す理由も納得。

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KOCHÉ. Photography Wakaba Noda.
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KOCHÉ. Photography Wakaba Noda.

コラボその2も、東京で発表する理由に直結している。KOCHÉのクリエーションを形作るものの抜きがたいひとつが、日本のハイクオリティなファブリックの数々であるということだ。中伝毛織のウール、日本産のサテンやレースに加え、岡山の「241CO」のデニム、東京の「江戸ヴァンス」による縫製など。彼女の審美眼が、日本の産地が抱えるいくつかの課題の光明になりますように。

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KOCHÉ. Photography Wakaba Noda.
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KOCHÉ. Photography Wakaba Noda.
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KOCHÉ. Photography Wakaba Noda.

未来に関するパースペクティブ - SALDARINI CASHMERE FLAKES BY UJOH

イタリアの老舗ファブリックメーカーであるSALDARINIが開発した動物に優しい〈カシミアフレークス〉をダウンの中に使用。Ujohはこのマテリアルのアンバサダー的存在だ。綺麗な見た目にはわからないから、話を聞かなくては——耳を傾けなければ——いけない。そんなサスティナブルに関する示唆を受け取って、今一度、洋服について考えるとても大事な視点を反芻しよう

ストリートアップサイクル - Children of the discordance

刺繍とペイズリーが駆け巡るコレクションの一部には、ヴィンテージアイテムの服地のリメイクが含まれている。一着の服を大切にする愛情とブランドのオリジナリティが一体化した、かなりクールなショーだ。

五感を澄ませば - tiit tokyo

AFWTの1日目の夜、会場にはレースでできた虹色のランウェイがあった。夜に現れるムーンボウ(月虹)は、昼間の虹よりも色彩が淡くて、いわゆる七色には見えないことがあるらしいが原理は同じ。目を凝らせば見つけられるかもしれないが、よほどの幸運を引きつけないと遭遇できないかも。多様な男女のモデル。テーマは「Voice」。耳を澄まさないと聞けない声のことを指しているのだとすれば、このショーには、私たちの個性(インディビジュアリティ)と多様性に関する優しいメッセージがあった。

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tiit tokyo.
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Nobuyuki Matsui. Photography Tetsuya Maehara.

アイロニカルな、クリエイティブ・スペース - Nobuyuki Matsui

Nobuyuki Matsuiの軽妙なインテリジェンスは、眠たい眼をこする暇を与えてくれなかった(AFWT最終日の朝だった)。ロンドンでテーラリングを学んだ彼は、アマゾンの宅配物内のビニール製のエアクッション(緩衝材)に着想。モノを保護するものとして重宝されるが、役目を果たされたら即座に廃棄物と化するもの。記憶に残るでもなく、リサイクルする術もほとんどない、単に捨てられるものである。

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Nobuyuki Matsui. Photography Tetsuya Maehara.

裏舞台が表舞台へ。本来ならばランウェイでなくバックステージに位置したショー会場の床が、エアクッション(なかには羽毛入りも)が埋め尽くされている。どこかアルテポーヴェラを思わせる空間には、過剰化した消費社会や上っ面でしか語られない昨今のサステイナブルというワードに対するアイロニーが充満してみえた。フォルムも自在な布製のクッションを出し入れできるポケット付きのダウンジャケット、ステッチがおもてに露わになったジャケットなどを着たモデルが地を踏みしめるように歩くと、クッションが「パンッ」と破裂する音が鳴る。見事な仕立てに見入っていると、胸を打つ銃声に近い音が唐突に耳に入ってくるのだ。眼を覚ませ?

裏舞台から表舞台へ。フィナーレも捻りが効いている。ショーが終わるとカーテンの奥に一着のスペシャルピースがあって、私たちはそれに導かれるように移動を始める。足で潰したり、熱を加えたりと色々な手法を用いて平面化した無数の緩衝材を、テーラードスーツに縫い付けたアーティスティックな一点ものである。皆が皆、熱心に写真を撮っている。しかし、これは、あまりにも美しき廃棄物の結晶である。

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Nobuyuki Matsui. Photography Tetsuya Maehara.

ベスト・ヌードル – NEGLECT ADULT PATiENTS

渡辺潤之介が披露した2シーズン目は「偽物」がテーマ。前撮りした、新作をまとって動く床を歩くモデルが巨大スクリーンに映し出されている。ランウェイにはその新作を着せたトルソーをひいて歩くモデルやら何やら……。逆転の発想は、時に、常識をゆさゆさと揺さぶるものだ(ニヤニヤが止まらない)。そうそう。前シーズン「ランウェイでカップ焼きそばを食べる女の子」でバズった彼女は、カップ・ナポリタンをすすっていました。

もっとも美しいディテール - POSTELEGANT

TFA受賞者のひとり。服を語るための服だった。

東京にようこそ! - SHUSHU/TONG

薔薇や彼岸花、血のメタファー、あるいは母国の国旗だろうか。上海を拠点にするライ・リュウジュとショウ・ウトウによるSHUSHU/TONGの赤色は強烈だった。フィナーレのBGMであり、招待状に書かれた「愛してるって言わなきゃ殺す」という分かりやすい反語は、1985年に発表された戸川純の曲「好き好き大好き」から(歌詞を検索してほしい)。矛盾した感情や、人の欲は、今も昔も変わらない普遍的なところがきっとあって、そもそも借り物の常識では予測できないことがある。つまり、彼らにとって、フェミニンなフリルやリボンはよく言う“甘さ”や可愛さを賛美するものではなくて、過剰な愛の表現なのかもしれない。

エモの再考 - THE Dallas

二児の母でもあるデザイナーの田中文江は、オリジナルの香水の匂いが空間のプライベート感をもたらした青山にある西洋館〈ロアラブッシュ〉でショーを開いた。「EMO」と名付けたコレクションには、まるでデザイナーの心の秘密の領域を覗き込むような緊張感があった。可視化された肩パットと、流れるような服地の流れ。強烈なレオパードと繊細な花柄……。大局的に見える要素が組み合わさっているが、リアリティのあるスタイルの上で、それらが見事に一体化した多面性を賛美するルックの数々だ。女性の葛藤のようなものに勇ましく向き合う姿と、それさえも愛しく思うライフストーリーの断片があった。美しき戦闘服。

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THE Dallas.
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THE Dallas.
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kotohayokozawa. Photography Nao Kitamura.
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kotohayokozawa. Photography Nao Kitamura.
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kotohayokozawa. Photography Nao Kitamura.

パーティが終わったら明日がやってくる - kotohayokozawa

軽やかに、まるで呼吸するように親しみのある自分の「外側(日常)」を組み込んだのがkotohayokozawaだ。シルバーのテープとバルーンが床に散乱した会場は“パーティの幕引き”を思わせるのに十分だった。例えば、楽しい時間が終わったあとは思い出し笑いが止まらなかったりする一方で、「何やってんだろ」っていう損失感と、「明日も来るんだな」って現実に戻されるちょっとした絶望感に襲われたりする(例えば、週末、朝5時の渋谷とか)。否、そのパーティ、そもそも本当に楽しかった? おもむくままに、しかし計算づくで組み合わされたプリーツの動きに、古着のクラッシュ、継続する身の回りのモチーフを装飾に反映させるアプローチで生み出されたプレイフルなコレクションは、そんなアンビバレントな人間のメンタリティが溢れている。

Credit


Text and Edit Tatsuya Yamaguchi