日本語×テクノ ニュージャンルに切り込むアーティスト:ゴリン Interview

福岡生まれ、アムステルダム在住のトラックメーカー/シンガーの〈ゴリン〉にインタビュー。

by MAKOTO KIKUCHI; photos by Regine David
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17 July 2019, 9:26am

ゴリン〉は1988年、福岡県田川市生まれ。現在オランダ・アムステルダムを拠点に活動するトラックメーカー/シンガーだ。本名はリン・スエミツ、日本人の父とアメリカ人の母を両親に持つ。彼女の音楽の特徴は、ヘビーなテクノサウンドとそれと対照的なハイトーンボイス、そしてほとんどが日本語で構成された歌詞にある。

7月12日にcircus tokyoで行われたイベントのメインアクトを務めるべく、来日していたゴリン。ライブを前日に控えた彼女に、i-Dは独自にインタビューを行った。

ーーまず、あなたのバックグラウンドから聞かせてください。ヨーロッパに住むようになった経緯は?

10歳で日本を離れ、アメリカのミネアポリスに引越しました。その後、カリフォルニアの大学に進学。ダンスを学んでいました。そこで奨学金を得て、卒業するとすぐにアムステルダムに渡ったんです。そこでたまたまダンサーとしての職を手にして、それからずっとビザを更新しつづけています。当初は3ヶ月だけ滞在して帰国する予定だったのだけれど、あっという間に6年が経ってしまいました。

ーー福岡にいた幼少期についても、教えてください。

インターナショナルスクールではなく地元の公立校に通っていました。当時の私はいろんな面において、ものすごく日本人的でしたね。最近は忘れてきてしまっているけれど、日本語も普通に話していたし……。小さい頃の写真を見ると不思議な気持ちになるんです。他の子たちとは明らかに違って見えるのに、当時の私はそのことに気付いていない。でもすこし大きくなってからは、後ろ指をさされることもあったかな。

ーー他と違うということに対して?

はい。とくに田舎街だったから、うちみたいな家族が他にいなかったので、目立っていたんでしょうね。当時のことは正直、そんなにはっきりとは覚えていないんだけど。

ーーちょっと話はそれますが、カラコンつけてますか?

つけてます。もとの目の色はダークブラウン。

ーー西洋ではカラコンをつけることを「アイデンティティへの否定」として捉える人も多いから、ネガティブなイメージなのかなと思っていました。

確かに、それについて考えたことはあります。髪をブロンドにしたときも、同じ理由でで少し悩みました。でもこれをつけてパフォーマンスしているとね、視界がぼやけてあまりよく見えないんです。私はそれが気に入っていて。宇宙にいるようなかんじ(笑)。

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ーー音楽家として活動する以外にダンサーとしても活動されているんですよね。

学校ではダンスと振り付けを学んでいて、卒業してからは仲間たちと一緒にツアーで各地をまわったり、アーティストの舞台で踊ったりしながら、ダンサーの仕事をしてきました。踊りじゃなくても、〈ゴリン〉の活動だけで食べていくことはできないから、今でも他のアーティストとコラボレーションして、サウンドデザインをしたり、たまにダンサーとしてパフォーマンスに参加することもあります。

ーーダンスのジャンルは?

コンテンポラリー。でもこれも意味の広い単語ですよね。アメリカのダンスシーンはかなり保守的で、それが移住した理由のひとつでもあります。アメリカでは「これがダンスだ」っていう定義がかなりはっきりしていて、ジャンルは「コンテンポラリー(現代)」だけど「オールド(古い)」なままでアップデートされていない。でもヨーロッパに行ってみたら、ダンスも音楽もパフォーマンスそのものも、なにもかもがミックスされていたんです。

ーーつぎは音楽家としての活動について聞かせてください。以前は〈RIN〉という名前で活動されていましたよね。〈ゴリン〉という名前に変えたのはなぜ?

RINのプロジェクトは私と〈GarageBand〉だけのものだったから(笑)。ライブパフォーマンスに注力していて、あまり曲のリリースはしていなかったんです。でもブリュッセルに住んでいた時期に、〈Midlife〉っていういまの私のクルーと出会って。みんなは「曲を出すべきだよ」って言ってくれた。それで彼らと一緒にアルバム『Momo』を出しました。そのタイミングで名前を変えて……。まるで生まれ変わったようでした。

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ーーあなたの音楽の日本語詞は間の取り方が独特ですよね。日本語だと気付くまでにすこし時間がかかるというか……。

私の曲作りではいつもプロダクションが先。そこに言葉になってもないような歌を即興でつけて、メロディをつくっていきます。メロディに合うように歌詞を入れていくのですが、そのときに単語の尺を自由に伸ばすんです。たとえば「会いたいよ」っていう歌詞だとしたら「あいー/たいー/よ」っていう区切りするとか。

ーーはじめてあなたの曲を聞いたとき、ヴォーカロイドが歌っているものかと思ったんです。そういうリアクションはこれまでにもありましたか?

ありました。Nahshiっていうイタリア人の友人がいるのですが、まだ私たちが知り合う前に彼が音楽プロデューサーとして受けたインタビューで、私のトラックをピックアップしてくれていたんです。そこで「このトラックは素晴らしいよ。このプロデューサーのボーカロイドの使い方は〜」って説明していて驚きましたね(笑)。

ーー意図的にそういう歌い方にしているというわけではないんですね。

わたしは音階をすっ飛ばしてメロディをつくることが多いから、〈Auto Tune〉(音程補正用ソフトウェア)を使って調整するんだけど、結果的に言葉をぶつ切りにするかんじになるんです。単語をぶっ壊す、と言うか……。でもこのぶつ切り感は、日本語詞でしか出せない。英語で歌うときはどうしても、流れるような感じになるんです。

ーー明日(7月12日)のライブが、日本ではじめてのステージと伺いました。いまの心境は?

ヨーロッパでのオーディエンスのほとんどは歌詞の意味を理解できないから、そのかわりに体で表現する必要があったんです。身体表現を通じて、オーディエンスと対話するイメージ。でも明日のライブでは、私が歌っていることをダイレクトに理解してくれる。それがすごく楽しみです。もちろん、緊張もしているけれど。

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Credits


Photography Regine David
Text Makoto Kikuchi

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