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ジョナサン・アンダーソンが送る白昼夢のようなロマンス:LOEWE 2020SS

2020春夏コレクション、LOEWEのメンズコレクションは70年代に遡り、ロマンティックでみずみずしく妖精のような、夢のなかを漂う遊牧民たちをよみがえらせた。

by Steve Salter; translated by Ai Nakayama
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02 July 2019, 7:54am

Photography @mitchell_sams

「ロマンティックでみずみずしく、ノマド的で、妖精のような。そして夢のなかのようなコレクションにしたかったんです」とパリ・ファッションウィークの最終日前日に行われたLOEWEのショーのあと、ジョナサン・アンダーソンは説明した。

注目の的となったLOEWEの2020年春夏コレクションは、白昼夢のようで、そこにはジョナサンらしさも、予想を裏切る要素もみられた。彼が注目したのは、ロンドンを拠点として活動するアーティスト、ヒラリー・ロイド。ジョナサン御用達のユネスコ本部ビルの大ホールでは、彼女の作品であるビデオ映像計9本が投影されていた。

作品が映し出すのはひとの手が加えられていない自然の世界と人工的な世界。ロイドのインスタレーションは、ショーにエロティックともいえる官能的な感覚をもたらしていた。コレクション自体も、楽しげで流動的、そして自由であると同時に、ロイドの作品と同じテーマや感覚を内包していた。

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ジョナサンは過去10年で、あらゆる規範への挑戦者から、業界を牽引するクリエイティブディレクターへと変貌を遂げた。彼が2013年から指揮しているLOEWEでは、常に私たちのファッションセンスを革新し、世界の異なる見方を提示してきた。

「しっかり地に足をつけ、日常に根を張るファッションであると同時に、私たちはファッションを前進させなければならない。そのバランスです」とジョナサンは語る。「『不思議の国のアリス』の、ちょっと転んだら、子どもの夢のような世界に入り込むかもしれない、という感じ。というのも、僕が非現実というものに夢中だったんです。スクリーンを通した有機性。動くイメージを目にすることの超正常化。それをスクリーンで、そしてルックで表現したかった」

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コレクションはちらちらと点滅するロイドの映像作品と共鳴し、異世界のようであり、白昼夢のよう。ロング丈でシンプルなシルエットに、新鮮かつ意外性のあるボリューム感がインパクトをもたらす。

「会場に、エフォートレスネスを漂わせたかったんです。それこそが、このブランドのあるべき姿ですから。官能的な軽やかさから、この6年間、僕らが築き上げてきたブランドのシグネチャーファブリック、キーとなる記号までが、これを表現しています」6年でLOEWEはすっかりかたちを変えた。

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コレクションに漂う遊牧民族の精神は、世界の職人技を駆使する、LOEWEの姿勢も改めて強調している。今シーズンでは、ブランドを象徴するカシミアのようになめらかな〈オロ〉というスエードと各地で織られた生地を、プラケットとバックル付きのヨークが印象的なチュニックやカフタンに仕上げた。

またバングラデシュで手がけられた、白地に赤の刺繍が施されたコットンや、ブルキナファソの手染め/手織りのインディゴ生地、日本のブルーの極細リネンデニムや、パンチング加工を施したコットンガーゼを使用。

そして今回は、LOEWEが世界的な人気ブランドとして飛躍した1970年代を参照した。「〈パウラズイビザ〉ラインが成功して、僕らの土台となる言語ができました。コットンとリネンが出会う場所です」とジョナサン。「ファッションであると同時に、ブランドの伝統に根付いています。僕らは過去を参照しそれを再解釈してきましたが、僕自身は、未来のファッションのあるべき姿を提示してきた気がしています」

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セーラーシャツやウォッシュドシルクのダンガリーシャツなど、海にまつわるファッションはゆったりとしたシルエットに仕上げられ、モノクロームのショートパンツスーツにはポプリンとボイルがレイヤード。シェブロン柄やストライプ柄の薄手のニットやタンクトップも印象的だ。藁編み風モカシンやスエードのサンダル、デッキシューズがノマド的な雰囲気を高めつつ、夏のアウトドア感を醸し出すいっぽう、エスパドリーユ風ストライプが入ったレースアップブーツにはLOEWEのルーツであるスペインへの目配せも。

ジオメトリックな〈Berlingo〉ショルダーバックはスエード、キャンバス、カーフスキンを使用し大きなサイズに展開。アイコニックなバッグ〈パズル〉は、しなやかかつなめらかなカーフレザーで、脱構築的なシルエットになって再登場。やわらかいナッパカーフレザーを使った新作〈ショッパーバックパック〉は、LOEWEのレザーの技術を参照した。

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過去、現在、未来を混交し、新旧の世界を巡る。それは、今シーズンのパリコレのショーで何度も登場したテーマだったが、ジョナサンが手がけたLOEWEほど、ドリーミーに提示したショーは他になかった。「白昼夢のような情景のなかで、熱狂的な人気を誇るアイテムに疑問を呈しています」とジョナサンは語り、こんな質問をしてファッションジャーナリストたちを沈黙させた。「私たちが今生きる世界の状況をかんがみたとき、ファッションは正常でしょうか?」

そもそもファッションが正常だったことはあったのだろうか?気候変動の問題が深刻化し、国内外の政情が不安定になっている現在の私たちにとって、彼の指摘は身に沁みる。「ファッションは私たちをどこに置き去りにしてしまうのか? 今、私たちはバックステージに集まっていて、ファッションショーに参加する、ということが〈ふつうのこと〉になっている。だからこそ、ここでは全ての速度を落としたいと思ったんです。ジョン・マウスの〈Hey Moon〉でショーのエンディングを飾ったのもそう。この場所でコレクションを披露しているけど、コレクションが実際に着用されるのはストリートです。ファッションは、よりいっそう抽象的になっている。今は、抽象化が価値を持つ時代です」問題を抱えた現代社会において、ジョナサンは私たちに夢を見る必要性を思い出させてくれる。

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Credits

Photography Mitchell Sams.

This article originally appeared on i-D UK.

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