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@goblintoad

TikTokを席巻する〈コテージコア〉という美学

平穏に暮らしていきたいと望む十代たちがのめりこむインターネットの新しいトレンド。その本質は「あたたかみと優しさ」にある。

by Sarah Woolley
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06 April 2020, 1:00pm

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@goblintoad

最近、TikTokで「やっほー! コテージコア・チェック!」というセリフから始まる動画を見ることが増えているのではないだろうか。その動画では、イケてるティーンが自分のベッドルームをみせてくれる。その部屋にはキルトのブランケット、ドライフラワー、そしてほとんどの場合、陶器のカエルのオブジェ300個が置いてある。

それが〈コテージコア〉と呼ばれるトレンドだ。もし、暖かい陽射しの中、仔鹿が集う草原に逃避したいと願ったことが一度でもあるのなら、あなたの魂にもコテージコアの精神が流れているということだ。

コテージコアは、〈フェアリーコア〉〈ゴブリンコア〉〈ダークアカデミア〉などと共にTumblrで花開いた美学のひとつ。それらのハッシュタグをクリックすると、そこにはまるで、デジタルの大きな衣装ケースを開いたときのような世界が広がる。2018年以来、コテージコアのファンたちは、ジャンルの美学に沿った画像まとめ、プレイリスト、あるいは二次創作を公開してきた。

「コテージコアは私にとって理想の暮らしかた」と語るのは、ミネソタ在住の16歳のRedditユーザー〈InfamousBees〉だ。「その本質は、あたたかみ、優しさ、思いやり、大事に育てていく関係。これまでの友人関係では得られなかったもの」

彼女より上の世代、あるいはあまりインターネット文化に触れてこなかったひとがコテージコアのアカウントを偶然見かけたら、きっと雑誌の切り抜きでおしゃれに飾られたツリーハウスに入り込んだかのような気分になるだろう。まさにインターネットの〈魂の神殿〉であり(しかも真似するのも簡単)、通底する浮世離れ感、これでもかというほどのスウィートネスには、映画『ヴァージン・スーサイズ』を想起する。

それらは優美かつ牧歌的な少女らしさへの、まっすぐな祝福だ。今の時代において、こういった牧歌的なものへの憧憬は何を意味しているのかというと、広くとれば、資本主義から逃避し、レズビアンの妻といっしょに農場で暮らしたいという願望であることは間違いない。

コテージコアの人気が高まるにつれて、TikTokにおいて〈コテージコア・レズビアン〉と呼ばれるユーザーたちによるコンテンツも増加した。

たとえば「ママに『あんたは彼女といっしょに湿った草と土に還ることはできないんだからね』と言われたとき」という人気動画では、16歳の女の子がドアをピシャリと閉めて、コテージコア・コミュニティで尊敬される唯一の男性、ホージアの曲を聴いていた。

他にもロマンティックな動画や教育的な動画もあり、そこにはやっぱりあのカエルが登場する。

「メディアにおいてレズビアンは、過度にセクシャライズされがち」と説明するのは、Redditユーザーの〈Ralice177〉。それに比べ、「コテージコアにおける〈愛〉は、ふたつの魂のつながり」だという。

アーカンソー州在住、27歳のレイドにとって、コテージコアは故郷に戻るのと同じだという。「残念なことだけど、僕の故郷は、他の田舎町と同様かなりアンチLGBTQ+なんだ」と彼は語る。

「今だって、里帰りするたび常に自分の容姿や服装をジャッジされてる気分になる。そのせいで、たとえば家畜を飼ったり、原っぱでブラックベリーを摘んだり、森で迷子になったりっていう幼い頃に自分が好きだったものが、シスジェンダー/ヘテロセクシュアルのもの、というレッテルを貼られているような気がしちゃうんだ。だからコテージコアは僕にとって、見た目にクィアでいながら田舎の生活ができる理想郷だよ」

いっぽう、コテージコアの美学は、環境ファシストたちを引き寄せる磁石ともなりうる。白人女性が白いレースを纏ったイメージばかりをリポストしている、クリエイティビティが足りていないアカウントは、白人至上主義が喧伝する〈トラッドワイフ(伝統的な奥さん)〉というナンセンスなアイデアとそう遠くないようにも思える。

そう考えると、コテージコアにクィアのファンが付いているのは、予期せぬ幸運だ。だが、22歳のRedditユーザー〈We_could_have_danced〉は、インターネット上のコテージコアの世界で、ネガティブな投稿とよく出会うという。

「料理、ガーデニング、裁縫など、昔から女性のものとされてきたアクティビティを私は楽しんでる。だけど、そういったものを推奨するような場が、同時に女性の権利やLGBT+のコミュニティ、有色人種などを敵視していることもよくあります」

そういう態度とは一線を画すのが「コテージコア」だ。その思想は、ファシスト的な意図とは全く反対の方向に向かっている。

今回取材したコテージコアのクリエイターたちに、〈血と土 ※民族(=血)と祖国(=土)を重んじる民族主義的思想〉を訴えるひとは誰もいなかった。

しかし、Tumblrでコテージコアについての建設的な議論がなされることで、何も考えていなかったティーンエイジャーたちが「そもそも土地は誰のものなのか」「私たちが食べている食物を耕作するさいに搾取されているのは誰なのか」などという疑問を抱くようになっている。

おそらくそれが、TikTokのコテージコア動画において、クロスステッチで刺繍された鎌と槌(※共産主義の標章)が登場する理由だ。

InfamousBeesは、実際に田舎に住みたいと思ったことはないという。「やっぱり根はシティガールだし。コテージコアの理想的な生活は、私を含む大勢のひとにとって現実的ではないと思う。でも、小さなことなら実際にできる。都会の小さなアパートでもパンは焼けるし、窓枠でハーブを育てることだってできる。植木鉢や古いマグカップを使ったり。少ない日光でも育つ植物を大切に育てれば、植物に囲まれて暮らせる」

「ニワトリ数羽とか、大きくてふわふわの犬とかを飼えるくらいに大きな庭は必要ない。彼女とむきだしの関係を築くためにコテージなんて必要ない。でも、コテージコアっていうトレンドを通して、理想的な生活を目にするまではそれに気づかなかった。だからそういう意味でも、コテージコアは私にとってありがたいもの」

しかし、環境問題に関する絶望がコテージコアの未来を覆ってしまっている。オーストラリア在住の27歳の美容師ローラは、まさにその影響を受けた。彼女は2018年からコテージコアに関するブログ記事を執筆しているが、当時と比べて何が変わったかと彼女に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「あのときと比べると、特にオーストラリアの森林火災が原因で私は近隣住民たちといっしょに避難したので(中略)、今の私はコテージコアをもっと美化しているかもしれません。今は現実的、具体的な対策もなくてフラストレーションが溜まってるし、長く続く大気の乾燥や暑さに疲れてる。今はとにかく、植物に水をあげて元気に育てられる場所、暖炉の火種を燃やせる場所に暮らしたい。雨も恋しいです」

コテージコアのファンたちは、自分が安全でいられる場所、快く受け入れてもらえる場所を夢見る。そのとき彼らが尋ねるのは、コテージコアを象徴する小説『秘密の花園』でメアリーがいう「地面を少しいただけますか?」という質問だ。それにイエスで返すことは現在の燃える地球では難しいが、コテージコアの究極的な本質は、現実逃避ではない。

コテージコアとは、それを愛する仲間たちが出会い、自分たちが育てていきたい未来を想像するための、ひとつの機会なのだ。

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