「途中でやめる」に注文したオーダー三文字Tシャツ(さけび、と書いてもらいました)と同封されていた手作りのマスク(大前粟生)

小説家・大前粟生「きれいごとだからと反射的に冷笑せずに」【離れても連帯Q&A】

「こんな状況だからこそ、言いたいことを言って、書きたいことを書く」。そう語るのは短編集『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が話題の小説家・大前粟生。〈離れても連帯〉シリーズ第11弾は、冷笑と自愛について。

by Ao Omae
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18 April 2020, 12:00am

「途中でやめる」に注文したオーダー三文字Tシャツ(さけび、と書いてもらいました)と同封されていた手作りのマスク(大前粟生)

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、日本ではいま、多くの文化施設が休業を強いられ、感染防止対策として、あるいは政府による“自粛の要請”によって。また「ステイ・ホーム」や「ソーシャル・ディスタンシング(距離をとること)」が求められ、人と人とのコミュニケーションはいまだかつてなく制限されています。

こうした中でわたしたちには何ができるのでしょうか。文化を維持するために、好きな人や場所を守るためには何が? 離ればなれであっても連帯するには? この"非日常"を忘れないためには? さまざまなジャンルの第一線で活躍している方々にアンケートを実施し、そのヒントを探ります。

今回は最新短編集『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が話題の小説家・大前粟生が登場。冷笑に陥らないで、手洗いと自愛を続けよう。

離れても連帯, KEEP-DISTANCE-IN-SOLODARITY

──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今あなたが属している業界や産業はどんな打撃を受けていますか? 応援・支援するにはわたしたちに何ができるでしょう?

大前:アンケートに回答している4/15現在、多くの書店さんが営業を自粛し、雑誌も休刊や発売延期といった措置を取らざるを得ません。応援のかたちとしては、終わってほしくない書店さんや出版社の通販ページ、または「e-hon」などで、読みたい本、応援したいものを買う、というのが効果的かと思います。しかし、個人で応援するのは限りがあるし、応援する側の余裕も減っていく一方でしょう。業界問わず補償が必要です。でもそれがなされないから、どうしたらいいんだ、と途方に暮れてしまいます。

書き手としては、たとえば一週間前のことがずいぶん昔のことに感じられ、そして記憶も長く保てないほど目まぐるしい日々のなかで、いったいなにが有効なのか(このアンケートへの回答も公開時にはもうズレてしまっている気はするし)、やっぱり途方に暮れながら、着実にものを書いていくしかないです。丁寧でいること、物事を見つめること、忘れない、怒る、っていう、当たり前のこと、それはきれいごとではあるんだろうけど、きれいごとだからと反射的に冷笑せずに、自分にできる真っ当なことを進めていきたいです。

そしてこれは業界や職業にかかわらず多くのひとが生業としている言葉についての問題なのですが、このような悲惨な状況で発される言葉はどうしても大きな出来事と直結してしまいます。最大公約数的なことしかいえなくなっていきます。事態が長引くほどに、言葉に導かれる想像力や自由は減っていきます。こんな状況だからこそ、言いたいことを言って、書きたいことを書く。怒りたいように怒って悲しみたいように悲しむ。個人としてひとりひとりスペシャルであろうとする、そういった気の持ちようは、抽象的ですが確実に未来のための応援になると思います。

──自宅待機以降に新しく始めたこと、もしくはポジティブな影響・変化がありますか?

大前:自宅でおしゃれをして、お花を飾るようになりました。生活のささいなことを大事にできるようになってうれしいと思うし、うれしさの規模がちっちゃくなっているみたいで悔しいな、とも思います。どんな状況になっても、しあわせが小さいことを「仕方ない」とみなすような心理に陥らないでいたいです。

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方や、社会への認識があれば教えてください。

大前:それまで持っていた憂鬱が加速しています。一か月後に自分が生きてるかわからないっていう不安がいまは具体的過ぎてびっくりします。コロナ以後はそこに、国に対しての怒りが混ざるようになりました。怒りという感情は今まであまり自分の身体に馴染んでこなかったので、どうやってつきあっていこうかと模索中です。

──自分の今の気持ち・気分を音楽で表すとしたら?

大前:崎山蒼志「国」

──自宅隔離中の人に試してほしい、オススメの行動やコンテンツを教えてください。

大前:講談社文庫から出ているムーミンの翻訳シリーズがおすすめです。ムーミンの話はけっこう暗かったりこわかったりするのですが、描かれる不安や不安と生活していく姿に触れると落ち着いてきます。

あと、詩集を読むのもおすすめです。一見わかりにくかったとしても、たとえば音読して、自分の舌にその詩の言葉らをのせてみるとずいぶん距離感がちがってきます。詩は現実に対しての批評だと思うのですが、それだけではなく、小説や他の表現よりももろに身体や意識が拡張していくので、読んでいると直近のストレスが抜けてさっぱりします。個人的には暁方ミセイさんの詩集にメンタルを助けてもらっています。

──コロナ禍で人間の「良い面」も「悪い面」も浮き彫りになりました。あなたが見聞きしたなかで、忘れたくないと思う、印象的な出来事やエピソードがあれば教えてください。

大前:(宣伝っぽくて申し訳ないのですが)こんな状況でも自分の本を買って読んでくれている人がいるっていうこと、扱ってくれる書店さんや届けてくださるひとがいるっていうこと、いつまでも覚えていたいです。

──2020年2月の自分に伝えたい・教えてあげたいことは?

大前:生きようとするしかなくて死にたいって自分にいう余裕もなくなっていくからいまのうちに心を暴れさせておくといいかも、みたいなことを。

──コロナ禍が落ち着いた後、日本の社会にはどう変わっていってほしいですか?

大前:なんというか、行動するひとを馬鹿にする気持ち、冷笑をやめていきたいです。それとコロナ禍が落ち着いても手洗いと自愛は続けていけたらいいよねって思います。はあみなさんご自愛ください。

@okomeinusame

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