doubletが主宰するデジタルハロウィンパーティーへの招待状

LVMH Prize 2018のグランプリとしても知られるdoubletの井野将之は、東京ファッションウィークの初日に、誰も経験したことのないハロウィンパーティーを開催した。

by Tatsuya Yamaguchi
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13 October 2020, 9:24am

重厚な扉に手をかけて洋館に入り、よせば良いものの、不穏な気配を感じながら奥へと進んでいく。ゾンビやお化けとエンカウントしては、息を上げながら館内を逃げまわり、なんとか入り口の扉にたどり着く。だが、その先に救いはなかった……。

一人称の視点で活写されたその映像は、新しく公開されるJホラー映画でも、ゾンビに追いかけ回されるゲームの画面でもない。LVMH Prize 2018のウィナーとしても知られるdoubletが、楽天ファッションウィーク東京の初日に発表した二部構成のファッションショーの“本編”のことだ。東京にも、ファッションウィークが戻ってきた!

3年半ぶりとなるdoubletの参加は、タイトルスポンサーである楽天が始動した日本発のファッションブランドを支援するプロジェクト「by R」のサポートのもと実現。デザイナーの井野将之は、プロジェクトの発表と同時に、「東京発のわたしたちだからこそ表現できるデジタルの可能性とファッションのエンターテイメントを少しでも多くの方にご覧いただき、感じてもらえたら嬉しい」とコメントを発表していた。

ショー終了後、「コロナの影響で、渋谷のハロウィンパーティーやイベントができなくなった。それを楽しみにしていた人たちのある種のフラストレーションが、少しでも晴れればいいなと思ったんです」と、特殊メイクを自分にも施した井野は語った。わたしたちは、ひと足早い〈ハロウィンパーティー〉に招かれたのだ。

このパーティーに招待されたのは映像配信を観ることのできるすべての人たちだが、20名に満たない一部のゲストは、DIYのオリジナルマスク(ブランドの公式インスタグラムに作り方を掲載)が同封された招待状を手に、東京・青山にあるアール・デコ調の邸宅に集っていた。

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一定の距離がとられた各テーブルの上には、カトラリーにワイングラス、それから半球型のクローシュの中にVRゴーグルがあった。オンラインでの発表時刻に合わせてゴーグルとイヤホンを装着し、視覚と聴覚のすべてを委ねて本編映像に一気に没入していく。そして、ムービーのエンディングとともにゴーグルを外すと、暗転した会場内に、たった今まで追いかけまわしてきていた不気味なゾンビたち(特殊メイクを施した25人のモデルたち)が勢揃いしていた。デジタルとリアルがなだらかにつながった、サプライズな演出だ。「今朝から映像を撮影、編集し、そのままショー。今回は、パリではなく東京だからこそできた発表の手法だったと思っています」。この映像は、VRやサウンドテクノロジーを駆使するホラー分野に特化したプロダクションと組んでシナリオから作られ、すべてのキャストに、ばっちり演技指導も入ったそうだ。

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シーズンタイトルは、『不思議の国のアリス』のワンシーンで流れる楽曲名でもある「A VERY MERRY UNBIRTHDAY FOR YOU(なんでもない日おめでとう)」。ギフトボックスのラッピングはシルクのパジャマになったり、リボンを解くことでジャケットやコートに姿を変えたり、メッセージが隠されていたりとdoubletらしいアイデアが詰まっている。二人羽織からインスパイアされたビックサイズのテーラードジャケットや、京都の職人がスプレーペイントを施すフェイクファーコート、フラッシュによってイメージ(今季はテディベア)が浮かび上がるポラロイド風の装飾といった象徴的なアイテムも揃う。

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ルックは、すでに6月のパリ・メンズファッションウィークで発表された2021年春夏コレクションに加え、アトリエに保管されていたアーカイブのサンプルも全体の30%ほどミックスされた。「服はしまっていても新しいものと組み合わされば“新鮮”になっていく。その感覚を、ゾンビやアンデッドとかけた」のだという。

「スタイリングは、ブッチャーマンなど個々のキャラクターをイメージはしていますが、それがコスプレになるとファッションではなくなってしまう。個性的なモデルの力を借りたファッション仮装パーティですね(笑)」

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自粛期間を経たとしても「自分が新鮮に思えるものだけをつくる」とたびたび口にするデザイナーにとって重要なことは、デザインにも、ショーにも、プロモーションにおいても、自分たちが面白いと思えるユーモアを惜しげもなく内包させることにある。そして、ブランドにリーチしたすべての人たちが“楽しむ”ことに、デザイナーとしての喜びを感じているように思えてならない。

それは、ことさら日本人の記憶や思い出をくすぐるショートムービー(ぜひ公式ホームページでチェック)、LVMHプライズのプレビューではカール・ラガーフェルドが声をあげて笑ったというカップラーメンの容器に入った水を入れると膨らむ高圧縮Tシャツなど、全てに一貫していることだ。そして、どんな状況であろうとも枯渇することのない彼の最高のウィットは、わたしたちを、2020年の困難な現実とはどこか違うところに誘ってくれるのだ。

今からでもdoublet主催のハロウィンパーティーには参加することができる。方法は映像の再生ボタンをクリックするだけ。イヤホンを装着し、部屋を暗くして、キャンドルをたいて観るのもいいかもしれない。背後にはお気をつけて。

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All images courtesy of doublet

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