ファンアカウント運営者が語る、芸能人の死に向き合う方法

ネット上にはあなたと同じ想いるひとが何万人もいて、彼らがきっとあなたの力になってくれる。

by Douglas Greenwood; translated by Nozomi Otaki
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26 August 2020, 8:27am

1994年4月5日、世界中のテレビ局が、ワシントン州シアトルのカート・コバーンの家の前に集い、花を供えキャンドルに火を灯すファンたちの姿を報道した。彼らはカートの悲劇的な死に、深い悲しみに暮れていた。

「こんなことになったなんて信じられない」とあるファンは米国のニュース番組に語った。「彼は決して忘れることのできない存在です」

1990年代前半、アーティストとそのファンのレガシーは、テレビ番組、雑誌の記事、そして彼らを崇拝する人びとの寝室で築かれていた。彼らに関する情報は聞き伝えのものが多く、それはオンラインではなく、主に電話や手紙で交わされた。

つまり、コバーンのようなミュージシャンや、薬物の過剰摂取によって23歳でこの世を去ったリヴァー・フェニックスのような俳優をはじめ、早世した有名人のファンが悲しみを表現できる媒体は、かなり限られていたのだ。

2000年代になるとネット上のフォーラムや掲示板が誕生し、それとともにオンラインのファンクラブが結成されていった。何もない場所にいたティーンエイジャーたちが、突如として自分の好きなものを100%理解してくれる人びととつながった。

その後、2000年代後半にかけてTumblr、Twitter、InstagramなどのSNSが登場。セレブたちが自らアカウントを作成し、さらにファンアカウントが誕生したことで、あらゆる物事がより深く、詳細に記録されるようになっていく。

では、もし空いた時間、もしくはほぼすべての時間を好きなアーティストの生活の記録に費やしているとしたら、そのひとが亡くなった場合はどうなるのだろうか。ファンアカウントの運営者のなかには、残念ながらこの悲しい現実に直面するひとも少なくない。

今年7月上旬、俳優/歌手のナヤ・リヴェラが、カリフォルニア州のピルー湖で4歳の息子とともに行方不明になったというニュースが報道されたとき、ネットには悲しみや捜索隊を応援する声が溢れた。

高校を舞台にしたライアン・マーフィーのミュージカルドラマ『glee/グリー』でナヤを観て育ったファンにとって、彼女の命が危ないというニュースは到底受け入れがたかった。世間から高く評価されている有名人は、まるで一般の人びとが恐れるものが存在しない世界に住んでいるかのように神聖視されがちだ。

7月7日、ナヤは息子を抱きしめる写真を、「私たちふたりきり」というキャプションとともにInstagramとTwitterに投稿した。2万人近くのフォロワーを抱えるファンアカウントNaya Rivera Teamがこの投稿をリツイートした2日後、アカウント運営者はナヤが行方不明になったというニュースを知った。その直後には、「いったい何が起こっているの」というツイートが投稿されている。

「10年前のことです」とNaya Rivera Teamを運営するロビーは、初めてナヤを知ったときのことを振り返る。

「ナヤに直接会ったことはありませんが、初めて彼女の存在を知ったのはいろんな新曲を聴いていたときで、そのなかに『glee』の曲があったんです。彼女の声に文字通り恋に落ちました。それ以来ずっと彼女を応援しています。まるで一目惚れでした」

Naya Rivera Teamは2011年3月にTwitterを始め、ロビー自身によると、ナヤや周囲の人びとの発言、彼女が参加している作品についての情報をコンスタントに提供してきたという。

運営者がファンアカウントの更新に注ぐ情熱は、フルタイムの仕事にも匹敵する。そのやる気の源となるのは給料ではなく、誰かのキャリアを支えている、その努力に値する相手を応援している、という想いだ。

その後の数日間、Naya Rivera Teamは、ナヤが遺体で発見されるまで、捜索活動の最新情報や、責任を持って彼女の捜索を支援する方法、彼女と親しい人びとによる愛のこもったメッセージを投稿し続けた。

それ以来、このアカウントはファンが訪れる場となり、追悼式を開き、ナヤの友人たちの言葉を通して彼女を悼む場となった。

「こんなことが起こったなんて信じたくありません」とロビーはいう。「でもファンにはナヤが必要だし、このアカウントはずっとナヤホリック(ナヤのファンの総称)たちにとってとても大切な場所でした。ナヤ本人も気に入ってくれていました」

俳優キャメロン・ボイスのファンたちも、ある日突然、彼らのアイドルを喪った。キャメロンのファンアカウントCameron Boyce Brasilは、2015年4月から、約1万7000人のフォロワーに向けて彼の写真やインタビュー、ニュースを投稿してきた。

しかし2019年7月9日、キャメロンはロサンゼルスの自宅でてんかん発作によって、弱冠20歳でこの世を去った。

「彼の飾り気のなさ、謙虚さ、他人への愛情を尊敬していました」と同アカウントの管理者、ラファエラとナタリアは語る。

「彼はみんなに優しくて、純粋で明るい光を持ったひと。それは今でもここに残っています。彼の周りには魔法、光、愛が満ちていました」

キャメロンの死の知らせはあまりにも唐突で、にわかには信じられなかった。彼は忙しい毎日を送り、1日中仕事をしたその翌日に帰らぬ人となってしまった。彼の家族、友人、ファンが、悲しみに打ちひしがれたのは無理もない。

「ちょうどその前日に、彼がInstagramに写真を投稿したという通知が来て、それをリポストしました」とラファエラは回想する。「それが彼自身の最後の投稿になるなんて思いもしなかった。とても現実とは思えませんでした」

「自分の周りの世界が止まってしまったような感じ」とナタリアも語る。「つらすぎて涙が止まらなかった。彼はあんなに若くて才能に恵まれていたのに、世の中は不公平だと思わずにはいられませんでした」

ラファエラ、ナタリア、ロビーの反応は、過去に自らのヒーローを喪ったファンと同じだ。ファンアカウントは、ファンたちの非公式な出会いの場としての役割を果たしている。また、ファンにとっては、SNSのフィード上で好きなアーティストの目に留まる可能性が高い場でもある。そういう意味では、ファンアカウントのレガシーが消えることはない。

「ナヤがここのツイートを見てくれたり、私たちにとって彼女がどれほど大きな存在かを知ってもらえることはもう二度とないと思うと、投稿するのはつらいですが、これからも投稿を続けていこうと決めました」とロビーは言明する。

「彼女が愛してくれたアカウントを続けることで、彼女の想い出を残し、このコミュニティは今、みんながつらい状況にあるんだということを示したい。誰もひとりじゃない、みんな一緒だ、って」

ラファエラとナタリアは、ファンアカウントを運営しているおかげで、少しだけ悲しみが和らいだという。何千人ものファンが彼の死を悼んでいるという事実が、ふたりの心を癒してくれた。

「たくさん応援してもらっていますし、たくさんのひとから愛をもらっています。(アカウントを運営することで)彼の一部を留めておけるような気がする。そう思うと少し気持ちが軽くなります」

現在、このアカウントには新たな目的ができた。それはキャメロンの信念のために闘うことだ。「これからも彼の作品に関する情報や、彼の信念を広めていくつもりです。それでもっとファンが増えてくれたら、私たちの励みにもなります」

キャメロンの誕生日には、ファンたちが集い、銃による暴力を終わらせ、あらゆるひとに清潔な水を届けることを目的とする団体〈Cameron Boyce Foundation〉への寄付を募った。

「これが私たちがキャメロンとともに歩み、彼の記憶を留めておくための最善の方法なんです」

愛するひとを喪うというのは個人的な体験だが、それを乗り越えるためには多くの愛と支えが必要だ。その孤独は想像を絶するが、ネット上にはあなたとまったく同じ体験をしているひとが何万人もいて、彼らがきっとあなたの力になってくれる、ということを忘れないでほしい。

ファンアカウントはネット依存の悪循環の象徴とされることもあるが、亡くなったアーティストに慰めを見出すファンにとっては、必要不可欠な情報源にもなりうる。SNSのフィードは、まるでスクラップブックのように、そのひとの人生に喜びをもたらした瞬間を集め、大切な出来事を思い出させてくれる。

ファンアカウントを運営する若きファンたちは、愛するアーティストのレガシーを守ることに、自らの使命を見出している。きっと彼らのヒーローも、ファンの活動に感謝しているはずだ。

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