Original images courtesy of (L-R): Richard Malone, Patou, Collina Strada and Kenneth Ize. Collage by Douglas Greenwood

サステイナブルファッションとは? 15人の若手デザイナーにインタビュー

年々曖昧になっていく〈サステイナビリティ〉という言葉。今をときめく若手デザイナー15人に、その本当の意味を訊いた。

by Mahoro Seward; translated by Nozomi Otaki
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28 July 2021, 7:48am

Original images courtesy of (L-R): Richard Malone, Patou, Collina Strada and Kenneth Ize. Collage by Douglas Greenwood

ファッションにおけるサステイナビリティ(持続可能性)は、もちろん年中話し合われるべきテーマだが、毎年アースデイになると、当然ながら話題に上る機会が増える。このような対話では多くの重要な疑問が提起されるが、私たちの頭を悩ませ続ける問題がひとつ残っている。それは〈ファッションにおけるサステイナビリティ〉とは実際に何を意味するのか、ということだ。 

そもそもサステイナブル・ファッションという言葉自体が矛盾を孕んでいる。新しい商品を大量に製造するため、長年にわたり天然資源の搾取に頼ってきた業界が、どうして〈持続可能〉になれるだろうか。何がサステイナブルで何がサステイナブルではないのかという明確な基準もなく、この言葉に内在する曖昧さは、搾取の問題を未解決のままにしている。

 例えば、グリーンウォッシュ(※うわべだけ環境に配慮しているように装うこと)は今やマーケティング戦略としてすっかり定着し、ブランドは持続可能にはほど遠いサプライチェーンや労働環境で生産されるにもかかわらず、〈サステイナブル〉を謳うファブリックを使用した服を誇らしげに売り込んでいる。

このような理由から、サステイナブルなブランドに期待される本来の価値観を体現するデザイナーたちが、この言葉から距離を置きたがるのも無理はない。彼らは、本来の意味が失われた言葉ではなく、行動で示すことを選んだ。ここで再び疑問が浮かぶ。サステイナビリティを実践するとは、一体どういうことなのか? 

この答えのヒントを得るべく、私たちは環境的、社会的な問題に責任を持って向き合う15人のデザイナーに、彼らにとってのサステイナビリティの定義や意味、それが自身の活動にどのように反映されているかを訊いた。

彼らの回答は、大企業のニーズを満たすために歪められたシステムの中で働くことの大変さや、サステイナビリティと植民地主義をめぐる議論の明らかな結びつきなど、非常に重要なポイントや見落とされがちな社会的要因をいくつも突いていた。サステイナビリティがいかに広範で複雑な議題なのか、彼らの答えからも見当がつくはずだ。

同時に、デザイナーたちが向き合う問題はひとつではなく多面的であるのと同様に、解決策もひとつではない。ロンドンからラゴス、マニラからモントリオールまで、世界中のデザイナーがサステイナビリティの可能性について語ってくれた。

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Photography Isabel Garrett. Image courtesy of Richard Malone.

Richard Malone 創設者リチャード・マローン ロンドン

──ファッションの世界で使われる〈サステイナビリティ〉という言葉は、非常に曖昧です。この言葉をどのように定義しますか?

今という時代に、この言葉を定義するのはとても難しいです。意味を気にすることなく多用されてきた言葉なので。単刀直入に言ってしまえば、現代の奴隷制を支えるものをブランドが〈サステイナブル〉と呼んできたのは明らかです。本当の意味で持続可能な試みというものは、そのほとんどが女性主導の空間で発展し、その後資本主義と家父長制のふたつによって失われていきました。その結果、高度な技術を持つ労働者が給与等級のせいで技能が低いとみなされ、CEOは生まれながらの特権や給与のおかげで技能が高いと考えられています。

サステイナビリティを隠れみのにした資本主義は、サステイナビリティとはいえません。それは今なお続く天然資源の搾取であり、既存の問題に加えてさらなる問題を生み出している。しかし、本来のサステイナビリティとは、再生し、教育し、持続する可能性を秘めているものです。

 ──あなたが共に仕事をするコミュニティにおいて、サステイナビリティにまつわる対話が重要な理由は?

アイルランドの郊外で子ども時代を過ごし、リネン業界が崩壊し、海外へ移るのを目の当たりにしました。祖母は長年病院の裁縫室で診察着を作っていましたが、その仕事も国外に移され、不要になりました。家族は木工や金属加工、塗装や装飾など、全員職人や製造業者で、工場や工事現場で働いていました。このような仕事への敬意の欠如はとても深刻で、さらにコストを下げようという動きが続くなか、彼らは社会的にも経済的にも恵まれないままです。

──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

いくつかあります。アトリエを出る商品にはすべて番号が振られ、エディションが登録されます。商品がなくなれば、そのふたつも消去されます。僕たちはさまざまな職人と仕事をし、すべてのコレクションをひとつのプロジェクトと捉えています。新しい製造方法やシルエットを取り入れることもありますが、絶対に急いで仕上げたりはしません。

コレクションはすべて完成した日付をもとに名前を付けられ、ワンシーズンで完結するものではありません。ビジネスの70%は受注生産で、その割合は増え続けています。シグネチャーアイテムにはウールマーク認証のウールを使い、フェアトレード、適正な賃金の支払い、動物の適正な扱いを行なっています。ここにはデッドストックのファブリックの使用も含まれていて、根本的な解決策ではありませんが、これも技術の喪失と過剰生産の証です。さらにEconylと協力し、海に捨てられ続けている漁網を再利用して、再生ポリエステル繊維をつくっています。最近ローンチしたレザーアイテムには、焼却予定の余剰レザーを使っています。また、インド、タミル・ナドゥ州のOshadi Collectiveとタッグを組み、染色したオーガニックコットンで美しい手織りのジャカード生地をつくって、その収益を再生農業を行なう農場の支援に充てています。地元のアイリッシュリネンのメーカーとは、フリルのついたメッシュアイテム用の特注のリネンのベース生地を作っています。すべてロンドンで手縫いで作られる認証済みのニットウェアには、植物由来の染料で染めた糸を使っています。僕たちのテーラリングはすべてフィンズベリーパークから生まれます。全部のプロダクトがM25(※ロンドンを囲む環状高速道路)の中で作られているんです。

──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

お互いの声に耳を傾け、よく聞くこと。忘れてはいけないのは、情報は知識ではないということ。知識とは情報を消化することであり、それについて疑問を提起することです。自分の思考体系や信念を問い直し、発見したことを他者と共有すること。自分をよく見せるためではなく、本当に関心のあることをしてください。

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Photography Laurence Ellis. Image courtesy of Ahluwalia

Ahluwalia創設者 プリヤ・アルワリア ロンドン

 ──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

 僕の家族はインド系とナイジェリア系で、今はロンドンで暮らしています。まず、ロンドンでのライフスタイルがインドとナイジェリア系のコミュニティに与える影響を目にしてきました。サステイナビリティは常に植民地主義をめぐる議論と結びついています。西側諸国がいかにゴミを捨て、生態系を汚染し、アフリカとアジア大陸の人びとから搾取してきたかは、本当に想像を絶します。このことに焦点を当て、たとえほんの少しでも、そのバランスを変える方法を探ることが重要だと思います。

 ──ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

たいていの場合、話題はファブリックやその素材に偏りがちです。でも、考えるべきは生態全体のこと。みんながある生地を〈サステイナブルでない〉と決めたら、その原料をつくっている人たちはどうなってしまうでしょうか? 繰り返しになりますが、これらの人びとは〈遥か遠く〉にいるために、みんなの眼中や脳内にいないことが多い。サステイナビリティで忘れられがちなのは、人的要素です。

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

実際に変化を起こすためには、小規模な自営業にかかる負担に注目するべきです。重要なのは、大企業がサステイナブルな取り組みに投資し、環境にも〈規模の経済(※事業規模が大きくなればなるほど製品ひとつ当たりのコストが小さくなること)〉にも大きな影響をもたらすこと。大企業がサステイナブルな選択肢にコストをかければかけるほど価格は下がり、他の企業も取り入れやすくなります。

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Image courtesy of Ganni

GANNI共同創設者 ディッテ・レフストラップ コペンハーゲン

 

──ファッションの世界で使われる〈サステイナビリティ〉という言葉は、非常に曖昧です。この言葉をどのように定義しますか?

 

ファッション、新しさ、サステイナビリティの間には齟齬があると認識しているので、私たちはサステイナブルなブランドを自称してはいません。ただし、このアプローチは責任を持って行動しない、という言い訳ではありません。私たちは毎日事業のあらゆる面でより良い選択をすることを心がけ、社会や環境に与える影響を最小限に抑える努力をしています。これが私たちの倫理的な義務だと考えています。

 ───ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

プロダクトが生まれるいちばん最初、デザインの段階におけるサステイナビリティが見過ごされがちだと思います。私たちはよく過去のシーズンのファブリックを別の用途で使いますが、主な目的はサプライチェーンを100%追跡できる、認証済みのファブリックを使ったコレクションをつくること。良い面も悪い面も共有することが重要で、私たちは毎日のようにInstagramアカウント@ganni.labでそれを実践しています。

 ──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

2020年にローンチした〈Responsibility Gameplan〉では、人、地球、プロダクト、繁栄の4つの大きな柱から成る、2023年までに達成すべき44の具体的な目標を掲げました。この計画を立てたおかげで、サプライチェーンにおける100%の追跡可能性などの大きなトピックについても、順調に進めることができています。私たちにとって、サステイナビリティとは口先だけでなく実際に行動することでもあります。より責任ある行動をとるためには、ブランドとしてお金をかける必要がある。例えば、炭素マッピングやカーボンオフセットなど、具体的かつ定量化可能なプロジェクトに取り組んだり、変化を起こすための人材を雇ったり、革新的なソリューションや生地に投資したり。このような取り組みは単に価値観を表明するだけでなく、コミュニティに対して透明性の高いものでなくてはなりません。私たちが毎年〈サステイナビリティ報告〉を公開しているのも、その理由のひとつです。自ら責任を問うことが重要なのです

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Photography Joshua Woods. Image courtesy of Kenneth Ize

Kenneth Ize創設者 ケネス・イゼ ウィーン/ラゴス

──ファッションの世界で使われる〈サステイナビリティ〉という言葉は、非常に曖昧です。この言葉をどのように定義しますか?

誰も非人道的な扱いを受けない方法を編み出すこと。エンパワメントとリスペクトを大切にすること。

──あなたが共に仕事をするコミュニティにおいて、サステイナビリティにまつわる対話が重要な理由は?

ナイジェリアの故郷の町にはいろんなコミュニティがあって、その中には勤勉さや職人の技術の上に成り立つものもある。つまり、仕事が価値を生み出すんです。電気も水道もなくても、手だけで生地を作れるひとがいる。それこそが職人技の極意です。それを世界中に伝え、文化の価値や、これらの場所で生み出される知識が尊重されることがとても大切です。

 ───ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

透明性です。アフリカを訪れて何かを作り、その商品を売ることでアフリカの人びとの支援をしている、と主張するデザイナーもいますが、彼らは本当に彼らの生活に良い影響を与えているといえるでしょうか? お金の行き先は? 僕に言えるのは、こういう商品をつくる人びとはずっと同じ場所にいる、ということ。つまり、彼らの生活は何も変わっていません。こういう透明性の欠如は、結局のところ白人至上主義に根ざしていて、誰もそれに疑問を持たないんです。

──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

僕は生地がどこで作られているかも、どの職人がどの生地を手がけたのかも、その人が毎月どれくらい生地を作っているのかも、すべて説明することができます。職人たちの仕事の大切さを理解し、彼らにもそれを伝え、彼らが何不自由なく暮らせるような関係性を築くことが重要です。そんなふうにビジネスをすれば、誰も非人道的な扱いを受けることはありません。

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Image courtesy of RE/DONE

RE/DONE CEO/共同創設者 ショーン・バロン ロサンゼルス

 ──ファッションの世界で使われる〈サステイナビリティ〉という言葉は、非常に曖昧です。この言葉をどのように定義しますか?

 サステイナビリティには、僕たちが有害な影響なしに制作するためのさまざまな努力も含まれます。現代にも通用する伝統的なスタイルを提供し、同時に従業員、多様なコミュニティ、地球を尊重する。責任を持ってつくられた循環型の服と社会的サステイナビリティが、僕たちが重点的に取り組んでいるふたつです。

 ──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

 僕たちのサステイナビリティのための努力は、商品に限らず、それに貢献している人や場所のためのものです。環境への影響を最小限に抑えるために有意義な試みをしている工場としかパートナーにはなりません。メキシコを拠点とするデニム工場は、Cradle to Cradle®認証済みの200の工場のひとつで、循環型経済のためのより安全で持続可能な製品として世界的に認められています。〈Alliance for Responsible Denim(直訳:レスポンシブル・デニム同盟)〉にも所属しています。

さらに、5月にはブランドのサイトで〈RE/SELL〉というピアツーピアの再販売プラットフォームを立ち上げ、着なくなったRE/DONEのアイテムの次のもらい手を探せるようにしました。RE/SELLの売り上げの80%は、店で使えるクレジットとして購入者に還元されます。ローンチのために〈Sheltersuit〉と提携し、売り上げの5%をシェルターやアップサイクル素材を使ったアウターをホームレスの人びとに提供している系列の非営利団体に寄付しています。

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

 サステイナビリティと循環を目指すブランドがすぐに実行できる支援や助言を提示している団体はたくさんあります。例えばエレン・マッカーサー財団は、英国を拠点とする慈善団体で、循環型経済を促進しているすばらしい財団です。また、国連は持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)によって貧困をなくし、不平等を是正し、地球を守るために2030年までに達成するべき世界共通の目標を掲げています。

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Photography Hollie Fernando. Image courtesy of STORY mfg.

STORY mfg共同創設者 サイード・アル・ルベイ ブライトン

 ──あなたが共に仕事をするコミュニティにおいて、サステイナビリティにまつわる対話が重要な理由は?

歯止めの利かない資本主義と植民地主義が、この地球を脅かす大きな原因になっています。こんなことを言うと呆れた表情をするひともいますが、成長と利潤の追求を最優先することが破壊をもたらし、真っ先にその代償を払うことになるのは西側諸国以外の人びとだということは明らかです。彼らは安く、目まぐるしく移り変わるトレンドを生み出すシステムを回すために有害な環境で生活、労働し、不十分な給料で労働を強制され、自分たちの土地を汚染しています。

───ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

実用主義と言葉のニュアンスです。こうやって英国で自分の椅子に座って〈西側諸国〉のことをあれこれ言いたくはありませんが、あらゆる議論の主導権を握っているのは、欧米ででっち上げられた大規模で世界的な解決策について話す、いわゆる〈業界〉のリーダーたちです。小規模で、地域に密着した、自然で、熱意に満ちた解決策を耳にすることはめったにありません。

インドとタイで一緒に仕事をしている人びとは、再生式の方法を考案し、死に絶えた土地を復活させ、古代の知恵によって自然を回復させています。彼らには、気候変動による問題を解決するための、地域的な解決策がある。他の場所では活用できない方法ですが、それでいいんです。例えば英国で僕たちが消費者としてできるもっとも有効な取り組みは、動物性食品をやめ、飛行機に乗らないことです。でも、この取り組みは、タイの農村部で僕たちが使う布を織っている女性たちにとってはなんの意味もありません。

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

 サステイナビリティ実現のための法案や、企業がもっと環境に配慮した製品をつくり、気候変動と闘うた目の報奨金をつくるべきだと思います。ほとんどの人は知りませんが、英国政府は特定の活動をしている企業の税金を免除しています。そのひとつが研究開発費用関連の控除です(政府は英国企業が最先端技術の分野を牽引していくことを目指しています)。

その結果、企業は本来なら払うべき税金を免除してもらえるため、新しいことに挑戦しやすく、すばらしい技術が生まれやすい環境が生まれています。社会に有意義な変化をもたらしている企業についても、それと同じような制度がつくられるべきです。知識の豊富なひとが権力の座につき、人権と同じように何が〈サステイナブルな取り組み〉かを法律で成文化するように政府に働きかけ、チェンジメーカーへの報奨金だけでなく違反者を告訴する制度も必要だと思います。

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Image courtesy of Patou

Patouクリエイティブディレクター ギョーム・アンリ パリ

 ──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

 誰もPatouが戻ってくるとは予想していなかったけれど、もし復活するなら、大切にするべきはテイストやスタイルだけではないと思いました。フランスらしさに根ざしているだとか、パリのクチュールから着想を得た、なんていうよくあるブランドにしたくはなかった。今日的な意義のある、この社会や世界とつながっているブランドにしたかったんです。

 ──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

 僕たちは当初から〈より少なく、しかしより良く〉ということを念頭に置き、タイトで推敲されたコレクションに重点的に取り組んできました。前のシーズンでやったことを無駄にはしません。毎シーズン新しいアイテムもつくりますが、完璧なシャツ、制作過程で一切水を使わない完璧なジーンズ、完璧なピーコート、完璧なトレンチコートといった必須アイテムもあります。Patouでは今後2年で、リサクルやオーガニックの繊維を使ったアイテムが75%を超える予定です。また、すべてのアイテムのリサイクル繊維のタグに付いているQRコードをスキャンすることで、僕たちの工場を〈訪問〉でき、服をつくっている人びとのインタビューを見ることもできます。ファッションとはまず第一にクリエイティビティであり、だからこそ、それをつくる人が大切です。重要なのはファッションの話ではなく、服の話をすることなんです。

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

ファッションとは対話です。ただ自分が世界に話して終わりではありません。ファッションとは世界がどこへ向かっているのか、そして人びとの需要を見極めること。みんなサステイナビリティに魅力的なアクセサリーのようなものを期待しているわけではない。サステイナビリティとは、もっと現実的でなければなりません。それは僕たちの仕事の一部であるべきです。

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Photography Grace Difford. Image courtesy of Chopova Lowena

Chopova Lowena共同創設者 エマ・チョポヴァ&ローラ・ロウェナ ロンドン

 ──あなたが共に仕事をするコミュニティにおいて、サステイナビリティにまつわる対話が重要な理由は?

 私たちは多くの民族やヴィンテージの織物をアップサイクルしています。イングランドもありますが、ほとんどはブルガリアのものです。とても特別で深い歴史がある織物なのに、捨てられてしまうのが普通なんです。

 ───ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

 服作りに携わる人びとについて話される機会はほとんどありません。私たちはずっと、家族として接している職人やメーカーの信頼できるネットワークをつくることを目指してきました。ブルガリアではすばらしいコミュニティ、全国の女性たちの制作ネットワークに出会いました。私たちのアトリエヘッドがリーダーになり、家で働く女性たちや、私たちがプリーツ加工や鋳造、革細工を任せている小さなアトリエに仕事を外注しています。

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

サステイナブルとは、必ずしも好都合なことばかりとは限りません。時間もお金もかかるし、制作過程でたくさんの壁にぶつかります。でも、この業界が生み出す信じられない量のゴミを少しでも減らせるなら、それだけの価値はあります。大手のブランドは、問題の大きな原因となっているゴミやデッドストックをもっと活用し、責任を持って調達された布地を使うべきです。同時に、ブランドや小売店に限らず、顧客も、ファストファッションに加担するのではなく責任ある購買をするなど、あらゆる場所で変化を起こしていく必要があります。

Lecavalier AW21
Image courtesy of Lecavalier

Lecavalier創設者 マリー=イヴ・ルカヴァリエ モントリオール

 ──ファッションの世界で使われる〈サステイナビリティ〉という言葉は、非常に曖昧です。この言葉をどのように定義しますか?

 私にとって、サステイナビリティとは創作と製造プロセスを新たに考案する方法のひとつ。本当の意味でのサステイナブルとは、製造の環境への影響を減らすことに関しても、ファッション業界の伝統的な運営メカニズムに挑むことに関しても、とにかく熟考することです。メインストリームに取って代わるものを積極的に創り出そうとする、より小規模で前向きなエコシステムを後押しすることが大切です。

 ──ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

ファッションにおけるサステイナビリティの議論は、布地や服の素材と密接に結びついていますが、例えば製造システムや生地の最小ロットなどは話題に上りません。ファッション業界では今も流行の服や生地の大量製造が基本で、100%リサイクルのポリエステルやナイロンにしても、それを使うには信じられないほどの量を買わなければならず、結局はほとんどが処分されてしまいます。

 ──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

手に入るものを調達し、創造力を働からせること。例えば、スタジオに残った皮を編んでレザーアイテムをつくったり、もっと工業的な服については、工場と密に連携して卸売業者でデッドストックを活用する方法を探ったり。レザーに刺繍したメリノウールのドレスのために、うちの職人たちは地元の革なめし工場から端切れを調達し、新たな刺繍技術を生み出すことに成功しました。さらに複雑なレザーや織物を使ったアイテムは、地元のデッドストック業者から仕入れる素材を使い、すべてモントリオールのスタジオで制作しています。

 
Collina Strada AW21
Image courtesy of Collina Strada

Collina Strada創設者 ヒラリー・テイモア ニューヨーク

 ──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

ニューヨークはゴミが路上に置かれている、世界でも数少ない街のひとつ。毎日のように、私たちがいかに多くのゴミを出しているかを思い知らされます。これを見て、自分たちの素材の使い方を見直さずにはいられませんでした。例えばもっと布を大切に使えるようにパターンを見直したりと、できるだけ余り物に配慮するようにしています。成長を続けるファッションブランドとして、問題の一因になるのではなく、解決策を提示して役に立ちたいと願っています。

 ──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

製造への公正な賃金の支払い、荷物の配送を省くためにスタジオのすぐ近くに工場を置く、新しいファブリックをつくる前にデッドストックのファブリックを調達すること。対面式のショーでは、自然のセットを使い、ショーの後にそれを地元の公園に寄付することにしています。去年はエリザベス・ストリート・ガーデンに芝生も張りました。今もきれいに育っているみたいで嬉しいです!

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

サステイナビリティに関する主張を監査する法律や専門家が必要だと思います。大企業は全般的な規制が必要です。私がつくっているアイテムの数は、Nike、Zara、H&Mとは比べ物にならない。大手のブランドは実際に変化を起こすよりも、まずは説明責任を負うべきです。

 
Vaqar
Photography Pelin Kacar. Image courtesy of Vaqar

Vaqar共同創設者 シーヴァ・ヴァカール テヘラン

 ──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

 サステイナビリティに関する議論はイランの地元の職人のあいだでも大きな関心を集めていて、彼らの活動の拡大や、職人の技術の周知につながっています。でも、サステイナビリティに取り組むうえで私たちが直面する最大の試練は、政治的な問題によって最新の科学、技術、素材の輸入が規制されていること。そのため、デザイナーたちは国内外の素材を仕入れるさい、意識的な選択をするのが難しくなっています。

 ──ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

 イランのファッション業界におけるサステイナビリティについて話すとき、私たちは社会的な側面を強調しがちです。それでも、西側諸国での意識的な仕入れや運用技術についての議論も増えてきています。さらに、サステイナビリティへの関心があらゆる場所で高まっているいっぽうで、こういう対話がなされるのはファッションコミュニティばかりです。この対話により広いオーディエンスに加わってもらい、ファッションの内部構造に関心がない消費者に届けるにはどうしたらいいか、ということが見過ごされてしまっています。

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

ファッション業界の最大の問題のひとつは、スピードの速さです。デザイナーが腰を据えて考え、適切な判断を下す時間がありません。もし私たちがペースを落とせば、残酷なまでに競争の激しい業界の風土のせいで、オーディエンスや買い手の目に留まらないリスクもある。自分たちのペースで働く方法を探りながら、オーディエンスとつながり、自分たちの価値観の透明性を向上させる新たな方法を探ることで、私たちはこの欠陥のあるサイクルを抜け出し、新しいシステムの構築を始めることができました。 

Arnar Mar Jonsson AW21
Image courtesy of Arnar Mār Jōnsson

Arnar Mār Jōnsson共同創設者 ルーク・スティーブンス&アルナル・マール・ヨンソン ロンドン/レイキャビク

 ──ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

 着る人と服の関係が時とともに変化していくということ。僕たちはプロダクトの寿命を伸ばすことに関心があります。これは耐久性、パフォーマンス、機能性、用途という概念に関係しています。しかし、これらの概念は、その服の用途を限定しすぎることで、かえってその服の寿命を縮めてしまうこともある。例えばひとつのアイテムにさまざまな用途を提案するなど、可逆性や適応性というアイデアを通して、できるだけオープンにアプローチするようにしています。

 ──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

 僕たちにとってのサステイナビリティは、素材の調達やサプライチェーンだけでなく、卸売業者との協働や自然との関わり方なども含め、コレクションのデザインから仕事上の関係すべてに関わるものです。

 僕たちのチームは非常に多くの場所を拠点にしていますが、ここ最近のブレグジットによる移動規制や配送の遅れなどによって、各国とより効率よく連携する方法を探し、移動や過剰な配送を控えるためにデザインプロセスの多くをデジタル化する必要がありました。さらに、染色の工程では自分たちで収穫する地元の植物を使い、コレクションを発展させるべく、特別な技術に特化した熟練の製造業者と密に連携するなど、地域に根ざして働くことを心がけています。

 ──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

 ひとつのアイデアを練り上げるには何シーズンもかかかることもあるので、長期的な視野が必要です。僕たちは今のやり方に真っ向から反対するというよりは、業界のパートナーと密に連携して新たなコラボレーションの方法を探っていくことに興味があります。真のイノベーションとは、単独行動よりも、対話と意見交換から生まれるものです。

Carl Jan Cruz
Image courtesy of Carl Jan Cruz

Carl Jan Cruz創設者 カール・ジャン・クルーズ マニラ

──ファッションの世界で使われる〈サステイナビリティ〉という言葉は、非常に曖昧です。この言葉をどのように定義しますか?

 大切なのは僕たちが何を守り、育て、受け継いでいきたいのかを大局的に捉えること。それは技術なのか、方法論なのか、それともファッション業界の一部の繁栄なのか。

 ──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

 この国におけるサステイナビリティの意味は、まだ限定的だと思います。多くのリソースが必要な考え方ですから。フィリピンにいる僕たちがサステイナブルな働き方に追いつくには、たくさんの対話や根本的な変化が必要です。

──ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

創造と労働の根元です。サステイナビリティはマーケティングやセールスの分野で使われることの多い言葉ですが、創作の段階で使われることは少ない。サステイナビリティの議論はオーガニックコットンや天然染料、アップサイクルしたファブリックだけに限定するべきではありません。そもそも、誰もがそういうものを使える余裕があるわけではありません。どうすれば創作への情熱と人びとの生活を同時に後押しできるような、より健全な労働システムを築けるのかを考えるべきです。

WED AW21
Image courtesy of WED

WED共同創設者 エイミー・トリン&エヴァン・フィリップス ロンドン

──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

私たちのブランドはブライダルやオケージョンウェアから始まったので、これはずっと重要な議題です。〈特別な日のドレス〉の市場はずっと存在していて、とても手の込んでいるものが多い。このレベルの技術を存続させることも大切です。重要なのは、代替案を提示すること。サステイナビリティの観点からも、本当に短い時間しか着ないものにそんなにお金をかけるのは意味がないし、私たちの知り合いもみんな同じ意見でした。私たちは、特別だけど日常的に着られるものをつくることを大切にしています。

──ファッション業界のサステイナビリティをめぐる議論において、もっとも見過ごされていることとは?

サステイナブルな解決策は実行に移すのが難しいとか、単にファブリックに関することだと思っているひとも多いです。でも、これは制作やアウトプットのあらゆる側面や、環境への影響を減らすために私たちが起こせる小さな変化について考えることです。

みんなに考えてほしいのは、買ったものをどれだけ大切にしているかということ。私たちはウェディングドレスの購入にかける情熱を、あらゆる買い物で参照するべき基準として考えています。これは投資するべき大切なアイテムの完璧な例ですが、私たちはそこからさらに発展させ、それをいつでも身につけられるアイテムにも当てはめたいと考えています。だから私たちは「WEDはガウン、ジーンズ、Tシャツの間に位置するブランド」と説明しているんです。

──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

プロセスのあらゆる段階を見て、デザインを損なうことなく、どんな小さな変化を起こせるかを考えることです。自分の心と向き合い、その変化に伴う困難を受け入れ、何もかもがすべてのブランドに適用できるわけではないと知っておくこと。私たちは加速する購買習慣をスローダウンさせることを目標にタイムレスなデザインを目指し、買う前によく考え、買ったものを大切に持ち続けるよう人びとに呼びかけています。 

Phoebe English
Photography Asia Werbel. Image courtesy of Phoebe English

Phoebe English創設者 フィービー・イングリッシュ ロンドン

──今あなたがいる場所でサステイナビリティが重要な議題である理由は?

私たちの拠点はロンドンで、ファストファッション中毒の国に住んでいます。英国の服の消費量はヨーロッパ第1位です。だからこそ、私たちには服をデザインし、制作する有益な方法に取り組んでいく義務と責任がある。私たちはこれを〈損害の少ないファッションの実践〉と呼んでいます。

──あなたのブランドが実践しているサステイナビリティとは?

私たちのソーシングは、自分たちが好きなものを選ぶというよりは、織物工業で廃棄物の出る場所を探すところから始まります。そこで手に入れた余った布地をもとにデザインし、端切れを使うのか、それとも大量に使うのかを考えます。さらに、私たちはスタジオの活動を、ファッション業界の後片付けをする手段と捉えています。

例えばスタジオ周辺の土壌に良い影響を与えられるように、自分たちの布地からスタジオの土をつくるなど、服の生分解性などにも挑戦しています。環境に配慮した農業の実践にも携わり、スタジオの活動によって彼らを支援する方法を模索しています。〈損害の少ないファッションの実践〉は今、私たちがスタジオで下すあらゆる決断の基盤となっています。

──ファッション業界がもっとサステイナブルになるには、どんな取り組みが必要だと思いますか?

私たちと服の関係が改善し、人びとが服の見た目や手触り、着心地だけでなく、服がどのように作られ、どこから来たのかということに喜びや楽しみを見出せるように企業が働きかけることができれば、きっと前向きな変化が起こるはずです。

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