Blossom The Project 中川愛が語る メンタルヘルスの大切さ

メンタルヘルスと社会問題の関わりを問うインディペンデント・メディア〈Blossom The Project〉。インスタグラムをプラットフォームに、日・英バイリンガルで発信している。代表の中川・ホフマン・愛にインタビューを行なった。

by MAKOTO KIKUCHI
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05 April 2021, 8:08am

Blossom The Project〉は「メンタルヘルス×社会問題」をテーマに発信するインスタグラムアカウントだ。現在5万人のフォロワーを持ち、心を健康に保つためのちょっとした秘訣から国際的時事問題まで、幅広いトピックを取り扱う。あらゆる情報をわかりやすくまとめたスライドには、オリジナルのイラストも添えてあり、堅苦しさや敷居の高さを一切感じさせない。今年1月からはオンラインマガジン〈Blossom The Media〉も立ち上がり、さらなる進化を見せているBlossomシリーズ。今回i-Dは代表の中川・ホフマン・愛に話を聞いた。

──メンタルヘルスについて興味を持つようになったきっかけは?

15~16歳くらいの頃かな。日々に漠然とした不安を抱えていて、たまパニックを起こしたりしていたのですが、当時は「ただのストレスかな」と軽く捉えていました。ところが17歳になったある朝突然、ベットから起き上がれないくらいのパニック発作を経験して。毎日真面目に通学していたのに、そのときは学校にも行けないような状態でした。母は厳しい人で「学校は休んじゃいけない。それは鬱病じゃない」と言っていて、私も「ちょっと考え過ぎかもな……」と思っていたのですが、その状態が一週間くらい続いて、そのうちご飯もろくに食べられないようになってしまったんです。そこではじめて母と一緒に精神科に行ってみて、鬱病と診断されました。そのときに私がいちばん感じたのは孤独感。通院先の先生もカウンセラーではなくて精神科医なので、優しく寄り添ってくれるわけでもないし、偏見を持たれるのが嫌で周りの友達にも言えなかったから「なんで自分はこんなに弱いんだろう」とすごく自分を責めるようになりました。そこから脱しようと、メンタルヘルスについて関心を持ち始めて、今に至ります。

──高校卒業後、アメリカのニューヨーク大学に進学されていますね。日本とアメリカでのメンタルヘルスに対する意識の違いとしては、どんなものがあると思いますか?

入学直後にあったオリエンテーションの日に、まず最初に説明されたのが、学校が設けているメンタルヘルスのホットラインでした。心の緊急事態のときにいつでも電話をかけられるというサービスで、それも24時間対応。実際に使ってみたらすごく対応が丁寧で、その後も「調子はどうですか? カウンセリングに行ってますか?」とフォローアップの連絡をくれて。また、学生間でもお互いのメンタルヘルスのサポートをし合うためのサークルがあり、そこに所属してカウンセリングのトレーニングを受けました。私が高校生だったときにこれぐらいのサポートがあったら、自分を責めなくて済んだなとすごく衝撃的でしたね。

──確かに日本では鬱病やパニック障害など、誰にでも起こりうる心の病気が未だに汚名を着させられていますよね。

日本に一時帰国して母とメンタルヘルスについて話してもまだちょっと偏見があったり、周りの友達に打ち明けても「敏感になってるだけだよ」と言われたり。ニュースでは日本の自殺率の高さなどが度々と取り上げられていますが、では実際に日本社会がそれに対して何か対策をしているかというと、何もしていないのが現状です。私も家族をひとり自殺で亡くしています。それは単に統計で見た数字じゃなくて、ひとりひとりの命なのに「日本の社会だから仕方ないよ」という声を聞くのがすごく悲しいし、怒りを感じますね。

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──そこからBlossom The Projectを始めるに至った経緯を教えてください。

ちょうど去年の今頃でしょうか。私はNYにいたのですが、コロナの影響で大学の寮から出なきゃいけなくなって、カリフォルニアに住んでいる父のところに来たんです。サポートシステムが充実していた大学から離れたことで「みんなはメンタルヘルスどうしてるのかな」と疑問に思うようになりました。予定していたインターンシップが全てキャンセルになって、空いた時間で何ができるんだろうと考えていたところに、たまたま父がiPadをプレゼントしてくれて。私は絵を描くのがすごく好きだから、メンタルヘルスについての情報をiPadで描いた絵と一緒に発信できたらいいな、と思って何気なくインスタグラムのアカウントを作って投稿し始めたんです。


──Blossom The Projectのインスタグラムのプロフィール欄には現在「『メンタルヘルス×社会問題』について考えよう!』とあります。そのふたつのトピックを繋げようと思ったのはいつからでしたか?

インスタグラムのアカウントを立ち上げた当初は、ちょっとした言葉の引用とイラストを組み合わせたものを主に投稿していました。自分でもどの方向性で進むか悩んでいたんですよね。その矢先、アメリカでジョージ・フロイドさんが殺害されてる事件が起きて。日本でそのことについて取りあげている人があまりいなかったのを不思議に思い、自分で発信しようと思いました。日本にも人種差別はものすごく存在するし、社会問題は人々のメンタルヘルスと深く関わっていると思ったんです。そこからは、以前よりも情報量の多い社会問題にまつわる投稿を増やしました。

──中川さんが過去に日本で経験された人種差別も「社会問題がメンタルヘルスと深く関わっている」という姿勢に繋がりますよね。

私は南アフリカ人の父と日本人の母のもと大阪で生まれたのですが、生後半年でカリフォルニアに移り住んで、10歳までそこで生活していました。親の離婚で大阪に帰って、初めて日本の公立の小学校に通うことになったときに「英語しゃべって」とか「これ地毛?」とか急にいろいろ言われるようになって。周りの子達は単純に興味があって言っていたのだと思うんですが、それまで自分の国籍や人種について考えたことがなかっただけにすごくショックでした。中学校に上がったときは日本語がまだそこまで得意ではなかったので授業についていくのが大変で、「バカ外人」や「バカハーフ」などの言葉で他のミックスの子達とまとめて馬鹿にされました。「そんなに日本が嫌いなんだったらアメリカに帰ったら?」と言われたこともあります。すごく辛かったけれど、母も兄弟もみんな日本にいるからと頑張って耐えてましたね。私は「バカハーフ」じゃない、それ以上の存在なんだということを証明するために、ものすごく勉強しました。それで自分を追い込みすぎて、燃え尽きちゃったのが17歳のあの頃。私が学生のときに息苦しいと感じた日本の社会を変えたいっていうのがいまの私の目標です。

──個人で社会問題について発信するメディアを運営するのは、決して簡単ではないと思います。一年間アカウントを運営してみて、いかがでしたか?

私自身、まさか始めて一年でこんなにフォロワーが増えるとは思っていなかったので、すごくプレッシャーを感じていました。最初の数ヶ月間は一人で運営していたのですが、だんだんチームメンバーを増やす必要を感じるようになって。私は頑固なので、当初は人の手を借りることを渋っていたのですが、そもそもこのプロジェクトを始めた理由を思い出したときに、その頑固さは自己中心的だと気付いたんです。私はこのプロジェクトを通じて、メンタルヘルスについてもっとたくさんの人に知って欲しかったし、自分を大切にすることに焦点を当てたかった。そのことを発信しておきながら、私自身を大切にしないのは偽善だと思いました。去年の10月から新しいメンバーを迎えるようになって、今は4人体制で運営しています。今年に入ってからは関連プロジェクトのBlossom The Mediaも立ち上げ、そちらは現在13名のメンバーがいます。

──SNSをプラットフォームとしたメディアならではの困難は?

一日に千人のペースでフォロワーが増え始めたばかりのころ、急に来るようになった批判的なコメントやDMに全部返信して説明しないとって思ってたんです。「こういうトピックを取りあげて欲しい」みたいなリクエストもたくさんもらうようになったのですが、全部の声を拾おうとしているうちに私もだんだん辛くなっていって。でもそんなときに同じく社会問題を取りあげているインスタメディアの〈ko_archives〉を運営している文ちゃんとご飯を食べにいく機会があって。彼女が「私達はDJじゃないんだし、みんなのリクエストを受けるためにこれやってるんじゃないんだよ」と言ってくれたことで、気持ちが楽になりました。今は批判的なことを言うだけのコメントやDMは無視するようにしています。

──中川さんは最初ずっとご自身の顔を見せずにBlossom The Projectを運営されていましたね。インスタライブなどで顔を見せて発信したことで、何か変化はありましたか?

去年東京でBLMのプロテストがあったとき「今日東京でお会いしました、話ができてよかったです」みたいなDMが届いたんです。私はそのときアメリカにいたので、誰かが私に成り済ましているんだなと気付いて。自分をプロモーションするためにやっているわけではないので、自分の顔を公開することをずっと躊躇っていたのですが、その出来事がきっかけとなって、私がどんな人なのかをフォロワーに向けて紹介する機会を設けようと思いました。ただそのとき髪の毛を真ピンクに染めていたからなのか、顔を公開するやいなや「ギャルやん」とか「チャラいね」というコメントも来ました。「髪を染めている=チャラい」と一方的に決めつけるような風潮にも息苦しさを感じます。日本の就活事情についても同じことが言えますね。みんな同じ格好をして、同じ髪型をして、マツエクも外して、ネイルも取って……アイデンティティを消していって、みんなが箱にいれられてる状態。そうである必要はないんだってことを、みんなに知ってもらいたいです。

──ご自身やチームのメンバーのメンタルヘルスについて、何か気を付けていることはありますか?

私達のチームはみんなバラバラの場所に住んでいるのですが、いつもミーティングを始める前に「最近どう? 」とひとりひとりに声かけするようにしています。ミーティングが1時間だとすると最初の30分をお話に使うことも。個人的な話を打ち明けてくれる人もいます。もちろん話したくなかったら話さなくてもいい。ただ安全な場所を提供しているだけなんです。ストレス感じてるときに私が個人的に実践しているのは、手帳にやるべきことをリストアップすること。「呼吸をする」とか「散歩をする」とか本当に単純なことでいいんです。鏡のなかにいる自分に励ましの言葉をかけることもあります。頑張りすぎないように、自分のなかで制限を設けるのも大事です。「今日はもう重い話題の記事をいっぱい読んできたから、夜はなにか面白い映画を見よう」とか「今日はもう画面を見ないようにしよう」とか。とにかく自分の感情を赤ちゃんのように大切にしていますね。

──「自分の気持ちを大切にする」というのは、忙しなく毎日を過ごしているとついつい忘れてしまいがちですよね。

セルフケアって簡単にできると思われがちだけど、実は結構エクササイズみたいなもの。例えば、私は瞑想がすごく苦手で。すぐ頭がブワーってなって、いろんなことを考えちゃう。でも最初は一分間、それができたら今度は三分間っていう感じでトレーニングを積んでいけば、だんだんできるようになってくる。あとよく聞くのは「セルフケアしたいけれど時間がない」という言葉。もちろん家族を支えるために働いてる方は本当に難しいと思うし、私はまだ学生だからその人達に比べて時間的な余裕があるけれど、「セルフケアのための時間」は自分からスケジュールに書いていかないとすぐに忘れてしまうと思うんです。散歩をしたり、ヨガをしたり、お風呂に入ったり……自分でその時間を積極的に作るのが大事だと思います。

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