Photography Carlotta Guerrero

「思い描いたものがすべて現実に」スペインのアーティスト、シータ・アベランが魅せる2021年のヴィジョン

アーティストとミューズが、チャリティカレンダー〈Planet Indigo〉の制作秘話と、全ての始まりとなった〈トリップ〉について明かす。

by Beatrice Hazlehurst; translated by Nozomi Otaki
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23 December 2020, 8:11am

Photography Carlotta Guerrero

「私たちはハードな業界をぶち壊すためにここにいる」。フォトグラファーのカルロッタ・ゲレロと、彼女のミューズであり、モデル、スタイリスト、DJ、デザイナーとして幅広く活動するシータ・アベランにインタビュー。

「ベアトリス、は見える? ちゃんと見えてる?」多様なジャンルで活躍するアーティスト、カルロッタ・ゲレロが、バルセロナからのビデオ通話で問いかける。

私の目には、ロンドン滞在中のシータ・アベランがはっきりと映っている。彼女のトレードマークである背中を流れる真っ青な巻き毛も、ヘッドホンにぶつかってコツコツと音を立てるこぶし大のイヤリングも。「テクニカラーをまとった彼女を想像してみて」とカルロッタは恍惚とした声で続ける。「彼女にぴったりな色はどれだと思う?」

スペイン出身のふたりは、バルセロナでの共通の友人のニューイヤーズ・イブ・パーティーでのキュートな出会いを明かしてくれた。ふたりの出会いは(そこから恋愛に発展したわけではないものの)まさにロマンチックコメディそのものだ。

カルロッタは、会場の反対側にいたシータの引力のように引き寄せられた。色鮮やかなファッションに、大量のジュエリーを身に付けたシータは、重力に逆らうようなハイヒールでよろよろと歩いていた。その姿は「エイリアンみたいだった」とカルロッタは笑う。念のため付け加えておくが、このときはカルロッタもLSDでトリップ状態だった。

故郷の小さな町でいつも自分をエイリアンのように感じていたというシータが、現世を超越したような人間に取り憑かれているともいうべきファッション業界に自らの居場所を見出したのは当然だろう。

彼女はリアーナの「Bitch Better Have My Money」のMV出演をきっかけに、一夜にして業界全体にその名を知らしめる。スタイリング(J. バルヴィンと独占契約)からクリエイティブディレクション、写真(しばしば組むのはキム・カーダシアン)、デザイン(自身のジュエリーラインLilith by Sitaをローンチ)まで幅広く活躍する彼女だが、本当の意味で「見られている」と感じるのは、カルロッタのレンズを通してだけだという。いっぽうカルロッタは、ジェンダーというテーマを中心に、〈不完全なダイヤ〉という女性の身体イメージをもとに被写体をとらえた写真(このポートレートを見れば一目瞭然だ)で、長年業界で活躍してきた。確かにシータ・アベランはエイリアンかもしれないが、カルロッタはしっかりと地に足のついたアーティストだ。

パーティーで出会ったふたりはすぐにコラボレーションを決意し、その後の数週間で〈Planet Indigo〉という特別なプロジェクトの準備を進めていく。カルロッタがバルセロナでシータを撮影したカレンダーだ。

 本作はバルセロナ市内で1日かけて撮影され、売り上げはスペインのLGBTQ+権利擁護団体〈Federacion Estatal de Lesbianas, Gais, Trans y Bisexuales(FELGBT)〉に寄付される。カルロッタの社会的な主張と、シータの誰もが憧れる現実離れした雰囲気の中間にあるこのカレンダーは、ふたりのアーティストとしてのアイデンティティが見事に融合した作品だ。2020年には間に合わなかったが、シータとカルロッタが魅せる2021年はずっと輝かしく、極彩色に彩られている。

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今回のインタビューでは、このカレンダーの中身を先行公開。ふたりのアーティストが、パンデミック下の制作、大スターとのコラボレーション、互いに与える刺激について、心ゆくまで語ってくれた。

──お互いのどんなところが創作の刺激になっていますか?

カルロッタ(以下C):シータはすごくおしゃれだけど、他の誰とも違う。私が刺激を受けるのは、彼女のすごく自由で、限界を知らないところ。ユニークっていう言葉では表せないくらい、稀少な存在。何にも臆することなくありのままの自分を表現してる。まさにアイコン。

シータ(以下S):私もまったく同じ。彼女に限界は存在しないと思う。作品も大好きだけど、ふたりともスペイン人だっていうことも大きいかな。

C:スペイン人であるということが、私たちふたりを強くしてくれる気がする。そのおかげで、活動の規模がどんどん大きくなっていって、訳がわからなくなっても、自分の原点を思い出すことができるの。もっとシンプルな生き方もあるということが、私を勇気づけてくれる。

S:私もそう。21歳で初めてムルシアを出た。故郷ではずっと自分がエイリアンのように感じてたんだけど、今でもそれは変わらない。私はすごく異質だから、誰かとコラボレーションをするのはすごく難しいの。でも、カルロッタとはすぐに意気投合した。

C:出会った直後から、すごい勢いで駆け抜けてきたよね。カレンダーも1日で撮影したし。

S:うん、バルセロナを駆け回って、着替えも街なかでしたの。

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──パンデミックによって、創作活動やプライベートにどんな影響がありましたか?

S:こんなに旅行をしなかったのは初めてかも。前は1日おきにあちこちを飛び回ってたから。1週間で2ヶ所で撮影してから長時間のフライトで米国に飛ぶ、なんてこともよくあった。最近は悲しいニュースも多いけど、私には立ち止まる時間も必要だった。

C:私もまったく同じ。ずっと仕事漬けで、毎週のように外国に行ってた。今はつらい時代だけど、私の人生には必要な時間だったのかも。ようやくひと息ついて、いろんな物事を見つめ直す時間ができた。自分の仕事のこともね。やっと全体を見つめ直すことができた。精神的にきついこともあったけど、楽しいこともあった。

S:今では撮影も再開しているし、直接会ってできないこともビデオ通話で進められる。でも、今はとにかくまた旅行がしたい。こんなに長くロンドンにいるなんて耐えられない! 天気が最悪なの。

C:この状況は数年は続くにしても、いつかは終わると思っておけば、心の平和を保つことができると思う。私たちはきっと乗り越えられる、この経験から学びを得られる、って。私自身も多くのことを学んだ。今は自分を見つめ直すときなの。私はずっと自分に厳しくしてきたけど、これまでの活動を振り返れば、自分はよくやったてきたな、って思ってる。ときには自分を褒めてあげるのも良いよ。

 S:そうだね、私もあちこちを飛び回ってたから、ずっと現実に生きてる感じがしなかったし、自分が何をしているのか考える時間すらもなかった。でも、今は駆け出し時代からの活動を振り返る時間ができた。イタリア版『Vogue』の撮影でサウジアラビアに行ったり、Fendiとのコラボレーションをしたなんて、今でも信じられない。当時は深く考えることもなく、ただ仕事をこなすだけだったから。

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──自分の尊敬する相手から称賛されたことは? 自分がファンだった相手からファンだといわれたことはありますか?

S:私は特に誰のファンというわけでもないから…。マリリン・マンソンやデヴィッド・リンチだったらうれしいかも。好きな作品はあるけど、その創り手のファンというわけじゃないから。もちろん、私のところに来て、作品が好きだといってくれるひとには感謝してる。誰かに気に入ってもらおうと思って作品をつくってるわけじゃないから、好きっていってもらえるとより一層励みになる。誰かが作品を認めてくれるのは素晴らしいことだと思う。

C:誰かが自分の作品に共感してくれると、いつもびっくりする。本物の創作とは、誰かを感動させるためじゃなくて、ただ自分が必要だからやっていることだから。だから相手がビヨンセでも近所のひとでも同じ。そんなことは重要じゃないってすぐに気づくはず。誰だって誰かの天使になれるし、クソ野郎になる可能性だってある。だから誰かを偶像化して崇めるのはやめたほうがいい。

S:今の自分がこんな風になるなんて、想像もしてなかった。若い頃はずっと不安で、モデルを始めたばかりの頃は、背が低すぎるとかあれこれ言われた。今やっていることはずっと目指してきたことだけど、実現できるとは思っていなかった。周りから浮いていたから十代の頃は苦労したけど、そのおかげで強くなれたんだと思う。

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──そこがすべての始まりで、これほど大きな愛や、あなたをクールだと褒めたたえる人びとに囲まれるのは、確かに不思議な感じがするかもしれませんね。

S:ほんとバカみたい! 「君ってすごく魅力的だね!」って。バカバカしい。ありがたいけど、そのために仕事をしてるわけじゃない。私がドレスアップするのは自分のためだから。モデルやスタイリングの仕事をするなかで、もうモデルはやりたくないって気づいたの。批判されたりジャッジされるばかりで、私なんでこんなことしてるの?って、虚しくなった。あんなことを続けてたら自分がめちゃくちゃになっちゃう。

C:確かにハードな業界だけど、私たちはそれをぶち壊すためにここにいるんだよね。シータ、あなたは自分が子どもの頃に思い描いたような女性になれたと思う?

S:子どもの頃は自分がどうなるかまったくわからなかった。とにかく気にかかっていたのは、今抱えてる不安は大人になってもずっと続くんじゃないか、っていうこと。その予感は当たってた。私は今も変わり者の子どものまま。あなたが写真という道を選んだきっかけは?

C:友だちがカメラをくれて、そこからのめり込んでいったの。身の回りのあらゆるものを撮影してた。昨日のことみたいに覚えてる。そこから、これこそが私の表現だ、っていう自分の強みになっていった。

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S:あなたのインスピレーション源は?

C:人生そのもの。あらゆるものがインスピレーションを与えてくれる。SFみたいだけど、頭からアンテナが突き出していて、宇宙からアイデアが漂ってくるような感じ。ひとつのことについて突き詰めていくと、自分の心からアイデアが浮かび上がってくるから、このプロセスを頼りにしてる。

S:私も同じ。何かが頭に浮かんできて、これをやらなくちゃって思うの。直感はすごく重要。自分が何をしたいのか、誰としたいのか、何をしたらダメなのか、直感が導いてくれる。でも同時に、そこからもっと先に進みたい、もっとやらなきゃいけないことがある、という思いもある。まだまだやるべきことがたくさんある、って。

C:思い浮かべたものがすべて現実になるの。それが想像の力。

S:私もそう!

C:私たちはスペインの魔女だね。

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