オンラインでコレクションを発表したJW Anderson。製作へかける想いを語った

「ファッションの萌芽期というものはすでに終わりを迎えた。新たな方式を導き出す試みをしないといけない。」ジョナサンは、2021を新しいスレッドを始めたようだ。自身の原点に立ち戻りクリエイティブに臨んだ今回のJW Anderson AW21 コレクション。発表前に彼の心情を聞いてみた。

by Kazumi Asamura Hayashi
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28 January 2021, 8:10am

デジタルプレゼンテーションを、自ら行ったジョナサン。実はバイヤーやプレスが、実際に洋服を見たり触れたりできない現状を嘆かわしく思っており、デジタルでのショーのアプローチはあまり好きではないようだ。しかしながらファッションウィークがこのような展開をし始めてから3シーズン目。今回は自身のガイドでプレゼンテーションを行った。普段はPRとのコミュニケーションを通じて各ルックの説明を聞いている私たち。本人から直接説明を聞けるのはファッション業界に身を置くものだけではなく、消費者にとってもクリエーターの服に対する想いを身近に感じることのできる良いチャンスではないだろうか?ジョナサンには今回のルックブックの撮影についての想い、また日本の伝統工芸に対する想いなどを聞いてみた。

パンデミック以来、このような状況のなかで、どのようにお仕事されていますか?

まだロックダウンが続いているので、状況はあまり変わっていません。徐々に日常に戻りつつはありますが。英国はまだロックダウン中で、フランスでも夜間外出禁止令が出ているので大変な状況です。でも、何とかやっていますよ。今はパリにいます。

あなたも、スタッフも全員在宅勤務ですか?

そうです。みんな在宅勤務で、必要なときだけオフィスに行きます。これから数週間はパリにいて、それからまた外出自粛期間で、その後JWの仕事を始める予定です。まだまだ大変な状況ですね。しばらくはこのままでしょう。でも、結局はファッションとは未来に向けて提示するものなので僕は楽観的です。前向きに考えるべきだと思います。変化を待ち望んでいれば、必ず状況は変わるはずですから。

以前にくらべて制作プロセスに変化はありましたか?

はい。やるべきことが増えましたね。特に服作りに関しては、かなり仕事量が増えました。フィッティングもキャンペーンもオンラインで進めないといけないので、コミュニケーションは難しくなりました。責任を持って、情報をわかりやすく伝える必要があります。

ファッションは模範を示すべきだと思っています。社会におけるファッションの意味はますます大きくなっていることを実感しているので。ファッションは模範となるべき存在なんです。大変な状況ですが、JWのチームは奇跡のようにあらゆることを実現してくれています。

最新のコレクションについてお聞きしたいのですが、今回もっとも重要な要素は何ですか?

今回もっとも重要だったのは、自分の美的感覚に挑戦することです。2021年はまっさらな状態でスタートを切りたかったので。イメージを一新し、ユルゲン・テラーとも仕事をしました。ユルゲンは私のポートレートを撮影したこともあり、以前より知り合いでした。

今回は服に対して絵画的かつ嘘偽りのない誠実なアプローチをとりたい。ヘアもメイクも最小限で、キャラクター、ファッションのアイデアに重点を置きたいと彼には伝えました。

ファッションの萌芽期というものはすでに終わりを迎えたと思うので、新たな方式を導き出す試みをしなければいけません。今回のコレクションで私にとり新鮮だった点は、ある章の終わりではなく、始まりをテーマにしたこと。昨年は、自分のなかでひとつの章の終わりを迎えたような気がしていて。なので今年は不要なものは取り除き、原始的なクリエイティビティ立ち返りたいと思います。つまり、いろんなものを〈手放す〉デザインです。

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これまでにユルゲン・テラーとお仕事されたことはないとおっしゃいましたが、長年の知り合いだそうですね。彼との制作プロセスについて教えてください。

私は彼とは知り合いで、大ファンでした。そしてずっと一緒に仕事がしたいと思っていました。彼のとても柔軟なところが好きだったんです。ユルゲンは既存の枠にとらわれない自由なひとで、イメージ制作の過程で〈手放す〉ことを恐れない。それに彼の写真は、ひと目で彼の作品だとわかります。彼の作品には楽観的なエネルギーがある。彼は被写体の個性を捉えたり、最高の状態を移し出すことに長けています。写真に彼なりの物語を加えることも得意です。

今はこんな時代だからこそ、情報には信ぴょう性が必須です。現代において、信ぴょう性は失われつつある。だからデザインにおいても、100%の信ぴょう性を示すことが大切だと思います。

次は日本についての質問です。以前は頻繁に来日されていたそうですね。今は難しい状況ですが。日本の陶芸家とも仕事をされていると聞きました。将来仕事をしてみたいアーティストはいますか?

一緒に仕事をしてみたい陶芸家はたくさんいます。今思い出そうとしてるんですが……。あとで詳しい情報を送りますね。発音があまり得意ではないので。でも、若い陶芸家は何人か思い浮かびます。まずはロエベ ファンデーションクラフトプライズを受賞したゲンタ(石塚源太)というすばらしい漆職人。日本を代表する若い職人だと思います。

日本の陶芸や工芸の世界では今、興味深いことが起こっています。若者が中心となって、新たな復興期を迎えているんです。僕がずっと前からファンだった、桑田卓郎というひとがいます。一緒に仕事をしたこともあります。普段なら年に何回も日本に行くんです。パンデミックが終わったら、真っ先に訪れたいと思っています。日本の美学を心から尊敬しているので。日本には、工芸やその制作過程を守ろうという動きがある。国宝という概念が根付いているんです。

日本ほど伝統工芸を守ることに長けている国はありません。僕が好きな伝統工芸のひとつが樂茶碗です。京都にある樂家の美術館は、お気に入りの場所のひとつです。シンプルでありながら非常に複雑で、16世紀にわたって受け継がれるなかで、ずっと繰り返されたきたものが少しも色褪せず、賞賛と尊敬を集め続けている。僕自身、すごく大きなインスピレーションをもらいました。時にはファッションにもそういうものがあってもいいのではないかと思うので。

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