21世紀のヘアカタログ

4年間にわたって、20代女性のヘアスタイルを写真に収め続けてきたタラ・ボガート。ヘアスタイルによって表現される個性について、タラ自身に話を聞いた。

by Emily Manning
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22 April 2016, 6:45am

ブロンディのコーラスをしていたティッシュとスヌーキーがManic Panicをオープンし、10代の若者たちがバスルームを汚しに汚した日から40年の月日が経った。タラ・ボガート(Tara Bogart)の写真シリーズ『A Modern Hair Study』で被写体となっている女性の多くはManic Panicの有名なネオンカラーの染料を使ってヘアカラーを変えているわけではないだろう。だが、ボガートによると、ヘアスタイルを通じての個性表現はパンクムーブメントよりもはるか昔に始まっていたようだ。

米ウィスコンシン州ミルウォーキーを拠点に創作を続けるボガートは、2011年、自身が教える美術学校の生徒たちをフランスの国立図書館へ連れていった。そこで彼女は19世紀の写真家フェリックス・ナダールが撮った写真に出会った。女性を後ろから撮った写真で、ナダールはこの写真を「Hair Study(髪の研究)」とタイトル付けしていた。「写真を見れば、被写体となった女性が当時としては先進的な若い女性であることがわかった。髪に飾られているものや髪型、うなじの後毛なんかに、時代以上のものが見えてきたの。その写真のことが忘れられなくて、"現代版を作ってみよう"と思いついて。21世紀の女性は19世紀の女性よりも複雑でしょ。数枚撮ってみて、"語るべき物語を表現するには1枚のポートレートじゃ無理"と感じたの。そこから、20代の女性を片っ端から撮る日々が始まったわ」とボガートはシリーズを制作し始めた経緯を話してくれた。

4年の歳月が過ぎ、彼女がウィスコンシン州とパリで撮った女性の髪の写真は相当な数になった。それらは現代に生きる女性たちの自己表現を浮き上がらせる人類学的アーカイブともいうべき作品となっている。Elizabeth Houston Galleryで『A Modern Hair Study』展が始まる前夜、彼女の作品について、ボガート本人に話を聞いた。

被写体はどのようにして選んでいるのですか?
大学で教えているから、被写体探しには困らないの。でも、あまり選んだりはしないように心がけている。ミルウォーキーが持っている多様性を作品にも反映させたいと思っているから。プロジェクトを始めたばかりの頃は、面白そうな子に、20代で面白い被写体になりそうな友達を連れてきて、って聞いて回っていたんだけど、だんだん自薦でモデルを名乗り出る子が増えていったの。年齢の条件さえクリアしていれば、誰でも撮ったわ。ドキュメンタリー作家じゃないから、学術的なものとは捉えていないの。でもやっぱりこれは研究だと思う。

このプロジェクトを始めて、トレンドのようなものは感じられましたか?
流行りはあるわね。でも、フランスでも撮っていて、アメリカとは違うトレンドが見えるのが興味深いと思っているの。ごちゃ混ぜにすれば誰がフランス人で誰がアメリカ人か見分けがつかないかもしれないけれど、分けて展示するとその違いは歴然としている。アメリカの女の子はタトゥーを入れたり、耳たぶに大きなゲージを開けたりしているけれど、フランス人の子たちにはそういったトレンドがあまり見られないわ。よりクラシックなスタイルを好むようね。

タトゥーをテーマにしたシリーズも制作していますね。昔と比べて今の世代はより表現的だと思いますか?
わたしが20代だった頃、ミルウォーキーではタトゥーを入れることが違法だったのよ。タトゥーを入れたければ郊外へ行かなきゃならなかった。「どんな大人になるつもり?」「タトゥーを入れたらちゃんと仕事につけなくなるかも」と大人たちに口を揃えて言われて。今はタトゥーも以前より受け入れられるようになってきたし、楽しめるものにもなったと感じるわ。今の若い子はタトゥーをボディーアートとして捉えている。髪もいろんな色に染めているでしょ? 昔はなかった激しい色もたくさんあって、うらやましいわ。80年代には、真っ黒かブリーチ、赤くらいしかなかったんだから。

いまの時代において、「美」は何を意味するのでしょうか?
わたしが若かった頃より、今は選択肢が多いでしょ。昔は、黒ずくめで髪をブリーチしている若者は白い目で見られたものよ。だけど今は、ユニークで"人とは違う"ことがポジティブなものとして受け入れられている。このシリーズの面白いのは、みんな同じように見えて、少しずつ違うというところ。みんなが同じもの−−肩があって背中があって、20代の女性であれば大半が髪−−を持っているけど、そこにそれぞれの個性がにじみ出ているのが興味深いし、美しいと思うの。肩のラインも違うし、背中の形状も違う。タトゥーやピアスはまた違ったレイヤーで、個性を表現している。現代に生きる若い女性の特徴を浮き彫りにしている作品だと思うわ。

tarabogart.virb.com

Credits


Text Emily Manning
Photography Tara Bogart
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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