KOCHÉと東京: interview with クリステル・コーシェ

ストリートとクチュールのミックス感、ユールカルチャーとファインアートの融合、さまざまなバランス感が驚きに満ちているメゾンKOCHÉが東京ファッションウィーク中にショーを実施した。i-Dは来日中のデザイナー、クリステル・クリステル・コーシェにインタビューを行った。

|
28 oktober 2016, 6:50am

Emporio ArmaniからMartine_SITBONにChloeにSONIA RYKIEL、DRIES VAN NOTENに、トーマス・メイヤーのBottega Veneta、そしてメゾン・ルマリエというモードなメゾンの数々で経験を積んだ後、自身のブランドを立ち上げ、息つく暇もなく前進を続けていますね。その行動力はどこからくるのでしょうか?
多くの素晴らしいメゾンで働く機会を得ました。 その一方で、自分の"主張"を持ってパーソナルなストーリーを伝えたいとも思いました。自分の好きな工芸品やフランスの職工、クチュール、ストリートから派生するユースカルチャー、ファインアートや音楽、映画などをひとつの大きなプロジェクトで表現したいと思ったのです。そして今、新しいことへの挑戦をとても楽しく感じています。プロジェクトを通して新しい人に出会うことが私の原動力となっています。

ブランド創立の2014年がそのタイミングだったのですか?
そうですね。Bottega Venetaで5年働いた後でした。トーマス・マイヤーの下で既製服をデザインしていました。とても美しい洋服なのですが、私自身が女性に着せたいと感じるものではなく、その洋服を通して自分を表現できなかったのです。私は、フランスの伝統やクチュールを使いながら自分自身に、そして自分の世代に語りかけるものを作りたかったのです。例えば、素敵なドレスやカッコいいTシャツ、「ワオ!」と思わせるジャケットやスポーツウェアなど、カジュアルで日常的に着られるアイテムです。そのイメージしている服はほかのブランドにはないことに気づきました。カジュアルすぎたり、シックでなかったり。ストリートウェアすぎたり、ドレスアップしたときに女性的になりすぎたり、自分の趣味とは違うものばかり……。私が思い描いている世界観は需要があると思いました。例えばこのドレスは(ショーで登場した2ルック目を差しながら)、刺繍のつけ方もユニーク。ドレスとしてもTシャツとしても着られる、アーティステックなアプローチなのです。どんなシンプルな洋服でも、独自の観点を持つようにしています。人と違ってユニークでもあること。私はそれが大切だと思っています。

キャリアを積みながらも、あなたにとって変わらない信念はありますか?
私はファッションには無縁なフランスの郊外で育ちました。アーティステックなものが周りになく、ファッションといえばジョギングウェアやスウェット、スニーカーばかり。周りの子供たちは、兄や友達も含め、スポーツ三昧。それが私の幼少時代でした。でも私は夢見がちな子供で、絵を描いたり、アーティストに関する本をたくさん読んだりしていて、ファッションと出会いました。とても衝撃的で、その90年代初期頃のクリスチャン・ラクロワやカール・ラガーフェルドの活躍はキラキラと輝いていて眩しいものでした。私の祖母はクローシェニットやレースを作っていたので、その部分も影響があったのかもしれないですね。だから、私は毎日過ごす友達との世界と、夢見るクチュールの世界の2つがありました。今思い返すと、今もその2つの世界をひとつのプロジェクトで結んでいるのかもしれません。

KOCHÉといえば、職人技からなる繊細なアーティザナルですが、これもまた、目を凝らして見れば見るほど驚きに満ちていて、スパンコールやビーズの場所、素材との組み合わせ、今までのデザインや配色のルールを覆すようなアイデアがいっぱいですね。
はい、コンテンポラリーアートからインスピレーションを得ることが多いです。 例えば、クープランドというアーティストは、オリガミのように紙を3Dに折るアートを作っていますが、Tシャツにそのような技法をどのように落とし込めるかなど、ファッションではない分野のものから着想を得ます。

自分の作品をアートピースとしてとらえているのですか?
そうですね。私は○○年代風や、アーティストのオマージュは作らない主義です。自分のなかで消化して、それを再解釈することが多いです。だから常に、私がもしそのアーティストだったら何を洋服に落とし込んで伝えるかなどを、私なりの尺度で考えています。

ルサージュといったアカデミックなアーティザナルを、このようなカタチに落とし込みながら、自由にデザインする、というバランス感はどのように養われたのでしょうか。
幼少期とこれまでのキャリア、あとロンドンのセントラル・セント・マーチンズで学んだことも理由に入るかもしれません。17歳のときにファッションを学び始めましたが、日本のストリートファッション誌『FRUiTS』なども集めていました。当時スタートしたばかりの『i-D』や『Dazed and Confused』からも影響を受けました。とても自由で、クリエイティブで、若い層に向けた"主張"が強いものでした。例えば、サンローランのドレスが『i-D』で取り上げられていても、とてもリラックスしていて、カジュアル、そしてリアルさを感じました。イギリスに行って、ロンドンでファッションを学びたいと思ったのは、ファッション以外でもロックミュージックシーンやアートシーンのその全てが全盛期で勢いがあったからです。ちょうどダミアン・ハーストが人気を集め始めたのもその時期ですね。すべて自由で、フランスで生まれ育った私にとって、とても刺激的でした。

今でこそ「ユース」「リアル」「ストリート」は、ファッション界も周知しているスタイルになりましたが、あなたが表現するリアルには、ファッションの押し付けがましさがないように感じます。改めて、KOCHÉとはあなたにとってどんなブランドなのでしょうか? どんな想いが込められているのでしょうか?
伝統や工芸、カルチャーやファインアートなどのあいだに"ブリッジ"を作りたいという想いがあります。過去、現在、未来だけでなく、 違う世界や考え方、カルチャーや新しい思想を世界に向けて発信して、新しいカルチャーを作りたいと思っています。

いつからそのように考え始めましたか?
昔から、アーティストが発信するパワフルなメッセージに強く惹かれていました。私はアーティストではないですが、意味のあるものを発信していきたいと思っています。また、川久保玲に影響を受けています。彼女の限界への挑戦、身体に対しての問いだけでなく、ファッションに疑問を抱き、女性のデザイナーとして新しいファッションへの挑戦も欠かしません。私も自分で洋服ブランドを作るようになった今、パワフルなメッセージを発信していきたいと思っています。

ランウェイが行われたPassage de PradoやForum des Halles、そして今回行われた原宿のとんちゃん通り(原宿通り)という、ユースが交差する場所で、あたかもそのまま意図なく出てきたような普通の人にも見えるモデルたちがメトロを歩く競歩のような速さで駆け抜ける。人種、性別、体型、身長、ヘアメイクもまばら、モデルがそのまま自分でコーディネイトしたかのようなアンバランスさがより一層リアル感を醸し出しています。ランウェイの場所、キャスティングやスタイリングはどのような過程で選ばれるのでしょうか。そして、今回東京・原宿のその場所でランウェイをした理由は何ですか?
私の洋服から、リアリティや時代の流れを感じられると思います。そして、もちろん一番それを感じられるのがストリートであり、街だと思います。洋服へのリアリティをいつも考えているので、そのリアリティや街のスピリットを感じることができる場所を選んでいます。また、モデルばかりを起用するのではなく、リアルでパーソナリティのある人を起用したいと思っています。身体が美しい人だけではなくパーソナリティがある人。だって、本当に着る人はそんなに背が高い人や細い人ばかりではないし、どんな人にも洋服ってフィットするべきだと思うから。その人のアティチュードだったり、自分がどういう人か分かっている人だったり、洋服が分かる人に向けて発信しているので。

ストリートキャストもやっているのですか? これからもそのようなコンセプトでやっていくのですか?
そうですね。ほとんどのストリートキャスティングは私がしています。それをルールにはしたくないので、これからどうなるかはわからないけど、今後も私の"主張"を魅せる方法にしていく予定です。

日本でのキャストはどのように決めたのですか?
シトウレイさんにパリであったのですが、彼女からたくさんの人を紹介してもらいました。私のPR会社がAMBUSH®のYOONさんと知り合いだったので、彼女にも参加してもらいました。 あとは原宿のショップ店員で、直接声をかけて参加してもらった子もいます。Instagramからリサーチしてメッセージを送ったり、私の友達が鈴木えみさんのマネージングをしてるから彼女にもオファーしたり。ラッキーな繋がりが今回のショーの成功の秘訣です。

東京でのショーは前から考えていたのですか?
そう! 夢が叶ったんです。UNITED ARROWSの栗野さんや日本のファッションカウンセル関係者、フランス大使館のお陰です。大きな文化交流でありコラボレーションでした。今回のプロジェクトは私にとって、とても特別なものになりました。先ほどお伝えした通り、日本のファッションは昔から私にとって特別な存在です。川久保玲がパリでショーをスタートした時期にKENZOやIssey Miyake、Yohji Yamamotoも次々とパリに進出していて、私に大きなインパクトを与えてくれたんです。私もいつか日本で自分のファッションを伝えたい、日本にいる若い人たちに自由に表現するパワーを与えたい、と思っていました。だから、昨日はとてもエモーショナルになりました。提灯を使ったフィナーレもとてもドラマチックで、感動しました。本当に美しい瞬間でした!

東京で一番好きな場所は?
色々な場所には行けていないのですが、ホテルの部屋から渋谷の交差点を眺めるのが好きです。劇のようで、みんながダンスしているようで、本当に面白い! あとは、原宿も楽しいですね。昨日はトランプルームでアフターパーティをしました。マジカルだったわ! みんなで遅くまで大騒ぎして、カラオケにも行きました。あとパリから来たモデルの友達たちもDJしたり、YOONさんも来てくれたり。そのあとはみんなで代々木公園に行きました。大きな公園で、本当に和やかな場所ね。

最後に、ファッションを通してあなたが思うことを教えてください。
自分のパーソナリティを表現する、ということを伝えたいと思っています。洋服を通して、自分が信じていることが表現できると思います。毎日の洋服を選ぶのは自分です。その人がTシャツとデニムしか着ない人でも、それを見てその人の人となりがわかると思います。だから、自分を世界に向けて表現している人や、自分のスタイルに自信を持っている人に向けて、洋服を作っていきたい。洋服には、その人と話さなくてもどのような人かを伝える力やメッセージがあります。若い世代にも、自分の信じている"主張"を表現していく大切さを伝えたいし、他の人のコピーではなく自分らしくいることの大切さを伝えていきたいですね。

Credits


Text Minako Shimatani
Photography Takao Iwasawa