左からカブリーナ・アダムズ、ジュールス・ロレンゾ、ブレン・ロレンゾ、アジャニ・ラッセル

スケート集団〈スケート・キッチン〉が語る、プリンセス・ノキア、乳首の解放、『ミーン・ガールズ』

NYのスケートシーンとガールズスケーターたちの絆を描く映画『スケート・キッチン』。そのモデルとなり、出演も果たしたスケートクルー〈スケート・キッチン〉が来日し、本作がなぜドキュメンタリーでなかったのか、その理由を語った。

by Takuya Tsunekawa
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24 May 2019, 10:46am

左からカブリーナ・アダムズ、ジュールス・ロレンゾ、ブレン・ロレンゾ、アジャニ・ラッセル

「好きだからやってるだけ。プロかどうかの肩書きなんていらない」と、マンハッタンのフェミニスト・スケート集団〈スケート・キッチン〉のカブリーナ・アダムズ、アジャニ・ラッセル、双子のブレン・ロレンゾとジュールス・ロレンゾの4人は口を揃える。

〈スケート・キッチン〉という名前は、「女はパークではなくキッチンにいろ」という男子からの中傷に対抗して、クルーを立ち上げたレイチェル・ヴィンベルクが名づけた。「中傷的なコメントを逆手に取りつつ、〈Skate〉と〈Kitchen〉のKを重ねたリズミカルな響きがキャッチー」だとジュールスは述べ、ボードを持っているだけで女は自動的に注目を集め、ただのアクセサリーに違いないと絶えずテストされていることに肯首する。「それで何すんの? お前にできんの? って聞かれることはしょっちゅう」

スケート・キッチン
『スケート・キッチン』

彼女たち自身が出演する映画『スケート・キッチン』の冒頭の場面は、男性中心の世界で女性がスケートすることを象徴的に表している。レイチェル演じる主人公カミーユは「クレジット・カード」と呼ばれる股を切る怪我を負うが、周囲の少年たちは生理じゃないかと嘲笑する。「そのシーンは男の子がどれだけ女の子の身体に対して無知なのかを浮き彫りにしてると思うし、それでも私たちは自分でどうにかしなきゃいけない。男子も知らないとは言えないように、そういう問題を認識させ、共感できるように描いてると思う」とジュールス。

「名前は違うけど、キャラクターは私たちをベースに作られてるから、普段と変わりなく演じられた」とカブリーナが明かすとおり、本作はドキュメンタリーではなく、劇映画として作られている。「ドキュメンタリーなんじゃないかと間違えるぐらいリアリティに溢れてる」とアジャニは言う。

ジュールスは「2017年の夏に37日間で撮りました。当時はまだ私たちの多くが10代後半だったけど、ドキュメンタリーで撮るともっと時間が長くかかってしまう。ティーンエイジャーの純粋さをそのまま詰め込むために意図的にフィクションにしたんです。自分たちに実際に起きたことじゃないけど、起こり得たことや周囲から聞いた話を盛り込んで少し大げさにやることで、水面下にある問題を前面に出したかったんです」と説明する。

スケート・キッチン
『スケート・キッチン』

彼女たちは、カジュアルな性差別や身体の変化、タンポン、ガスライティングなどの話題をくだけた自然体のままに繰り広げる。「みんなで話し合ってこれを入れようと決めたというよりも、クリスタル・モーゼル監督が私たちと一緒に時間を過ごしているあいだに映画に入れられそうな要素をノートにメモしていて、そこからピックアップしてる。自分たちの日常の話のなかで出てきたことを取り込んでいます」

「彼女は超クールで最高。女の子ということに対して媚びてないし、それを前面に出してるから、親近感がある」とジュールスが力説するプリンセス・ノキアの「Kitana」からジェイ・クリッチの「Did It Again」を爆音で流して大騒ぎするパーティ場面も「本当にあの音を流してただみんなで遊んでただけ」というから彼女たちの日常そのままだ。ほかにもカリードの「Young Dumb & Broke」はレイチェルが希望した曲で、ジュニア・シニアの「Move Your Feet」は撮影中にカブリーナが実際に流していた曲だという。

スケート・キッチン
『スケート・キッチン』

ラリー・クラークの『KIDS/キッズ』など、一昔前のユース映画なら、犯罪や悲劇的な要素が含まれていたかもしれない。しかし、本作は違う。物語をノスタルジーでまとめず、極めてシンプルに愛情を持ってそのまま差し出している。「NYでは常に色々なことが起きていて、そこにこれだけ多様なバックグラウンドを持つ女の子を映画に組み込むだけで、多くの要素が入ってくる。それ以上にドラマを作ってしまうと、ごちゃごちゃになるから、あえてシンプルにした方がキャラクターが活きると感じました」とジュールス。「映画で白人だけじゃなく、黒人やヒスパニック系の子たちもメインで登場させたかったし、別に男だけがいつも何かすることで優位に立つわけじゃないことも描きたかったんです」

映画を通して示されるのは、孤独なカミーユを温かく歓迎するクルーの姿だ。女性の友情と包括性を描き出している。ブレンはそのことに同意して、「これまでは、女の子が出てる映画にはいじわるな子がいて、女の子同士の対立が描かれることが多かった。実際に女の子同士がサポートし合えるということをクルーを通して映画で表現したかったんです。お互いを蹴り落とすのではなく、若い女の子たちがつながってサポートし合うポジティブな空間ができるようになったらいい」。カブリーナも付け加える。「『ミーン・ガールズ』はすばらしい映画だけど、でもいまはあれみたいに女の子の物語を二転三転させてる暇がない。最初からみんなでサポートし合う。そういう切り口がよかったと思う」

カブリーナ
カブリーナ・アダムズ

カブリーナは不平等の改善を、ニップレスだけを装着するファッション・ムーブメント「Free My Boobs」としても実践している。「ムーブメントにしようと思って始めたわけじゃないけど、ある夏にフェスに行ったときにすごくオープンな人を見かけて、私も次から何かしようと思って、翌年行ったときにシャツを脱いでニップレスだけ付けました。みんなそういうことをしていいか悪いか、したらどう思われるかを心配するけど、私の場合はとりあえずやってみる。そのままそれを続けてたら勝手にムーブメントになっていきました。男はシャツを脱いでも何も言われないのに、女が脱ぐとエロいとか性的な意味になってしまう。そうじゃないことを示したい。もともと自分たちが信じていることを信念を持ってやり続けてきただけだから」

ジュールスは語る。「パークで順番を守るとかスケーター同士の暗黙のルールはあるけど、基本的にルールはない。街中で滑ったり、やっちゃいけないことをやろうとするのがスケートボードだと思うから。モールグラブやモンゴプッシュをやったらダサいとか、かっこいいかどうかがルールなんです」

映画『スケート・キッチン
渋谷シネクイントほかにて公開中。

監督:クリスタル・モーゼル
出演:スケート・キッチン(カブリーナ・アダムズ/ニーナ・モラン/ジュールス・ロレンゾ/アーディーリア・ラブレス/レイチェル・ヴィンベルク/アジャニ・ラッセル/ブレン・ロレンゾ)、ジェイデン・スミス、エリザベス・ロドリゲス
配給:パルコ
2018/アメリカ/106分/R15+/原題:Skate Kitchen
(c)2017 Skate Girl Film LLC.
公式サイト:skatekitchen.jp